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【特別企画】『攻殻機動隊』『スカイクロラ』などの音楽で知られる作曲家

川井憲次さんが語る、オーディオテクニカの“世界標準”モニターヘッドホン「ATH-M50x」の魅力

公開日 2017/11/01 11:14 聞き手:岩井喬 構成:編集部 小澤貴信
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ーー “リバーブが見える”ということを決定づけているのは、スピーカーやヘッドホンのどのような要素だと思いますか?

川井さん 空間が見えやすいということであり、あるいは奥行き感と言ってもいいかもしれません。先ほども話した不自然なピーク感がないことが、それを可能にしているのだと思います。このリバーブ感の秘密を探るべく、先ほど話したスピーカーを分解してみたこともありました。「なんでこんな安いネットワークを使っているのに、こんな良い音がするのだ」と(笑)。

ーー ATH-M50xも、構造や素材において特別な点があるわけではないと思います。ただ、このヘッドホンのベースモデルを手がけた方は、スピーカー設計でもスペシャリストでもあるベテランの方だそうです。つまりATH-M50xは、オーディオテクニカのアコースティックなノウハウや工夫が集約されたモデルとのことです。

AHT-M50xを手に、実際に使用しての印象を語っていただけた

川井さん それは面白いですね。録音の話にしても、昔のエンジニアが使う機材はナローだったかもしれないけれど、その中で音の本質を見極めていたのだと思います。現代はよりハイとローを重視しているのかもしれません。

ーー ATH-M50xについても、そのような卓越した音作りがあってこそ、川井さんのおっしゃる“地味な音”や“リバーブが見える”という要素を実現できているのかもしれません。

川井さん ハイレゾも話題ですが、結局良い音かどうかという要素は、中音部に集中していると思います。若い頃はドンシャリな音が好きでしたが、ある時期から中音域の大切さがわかったのです。

ケーブルの着脱や耐入力の高さも重要なポイント

ーー ATH-M50xの、モニターヘッドホンとしての使い勝手はいかがでしょうか。

川井さん まず耐入力が大きいのが良いです。音楽制作で使うにあたって、耐入力の大きさは深刻な問題ですからね。持った感じの手に馴染む感じもよくて、側圧もほどよいと思いました。

それから、ケーブルが着脱できるというのが良いですね。ケーブルの接続部はやはり弱いところですし、ミュージシャンやスタジオ関係者にはヘッドホンの扱いが乱暴な方もいますからね(笑)。交換できると、使い勝手はとてもいいです。質問なのですが、カールケーブルとストレートケーブルに合わせて、短いストレートケーブルも同梱されているのはどういう意図なのでしょうか。

ーー EDMなどのDJの中には、世界中を飛び回る合間に、飛行機やホテルなどでラップトップを使って作曲やミックスを行う方も多いそうで、そういった用途に配慮しているそうです。

川井さん なるほど。そういうことなのですね。

ーー ATH-M50xを、ふだん使いの音楽リスニング用途として使ったらいかがでしょうか。

川井氏はヘッドホンでのモニタリングのポイントのひとつとして「低域が見えるかどうか」を挙げた

川井さん 使いやすいと思います。他のモニターヘッドホンに比べて、私自身、使ってみたいと思える音です。音量を上げても耳が痛くならないヘッドホンですからね。キツい音というのがありますが、それが耳障りにならない良さがあります。音の空間性が出るのもリスニング用途向きだと思います。

「スピーカーで想定した音」通りの印象で鳴ってくれる

ーー実際に過去の作品をATH-M50xで聴いていただいたとのことでしたが、いかがでしたか?

川井さん 私がミックスにヘッドホンを使わないのは、大方のヘッドホンで聴くと、自分が意図していた音より派手に聴こえてしまうからです。具体的には、こんなにハイを上げてたかなと思うくらい高音がキツく聴こえてしまったりということがあります。しかし、ATH-M50xで聴くと、先ほど“地味”と言いましたが、「スピーカーでこういう感じで鳴るだろう」と自分が意図した通りの音で鳴ってくれました。ですから、このATH-M50xであれば、ヘッドホンを使った音作りもできると思いました。

ーー 普段はスピーカーで音作りをされているけれど、これならヘッドホンで音作りもできそうだと。

まずはギターの録音でATH-M50xを使ってみたいと川井氏

川井さん はい。やはり音作りに使うとなると、色付けのない音質というのは非常に大事です。それから、空間の見え方の良さについてもお話しましたが、もうひとつ、このATH-M50xは低域がきちんと見えるということも大きいです。

ーー それは低域のアタックや余韻、密度感といった部分でしょうか。

川井さん そうですね。それに低域の音量バランスも加えたいところです。低域というのは、スピーカーで聴いても聴感でどれくらいの音量が出ているのか判別しづらいもので、足りないと思って上げていると、ある段階でイメージ以上に低域が出過ぎているということがあります。そういった低域の音量バランスが、このヘッドホンだとモニターしやすいのです。

もちろんヘッドホンという特性上、本当のローエンドは確認できないと思うのですが、ベースの音というのは、その出ない音よりもう少し上の帯域が大事と言えます。150Hzくらいの帯域が固まってしまうと全てが濁ってしまいますし、ベースをより聴こえるようにしたいなら200Hzくらいを調整します。このように重要な低域を聴き分けられるからこそ、ATH-M50xで音作りができると感じたのです。

ーー 特に北米のスタジオではATH-M50xが標準的なモニターとして使われているということが非常に多いそうなのですが、川井さんのおっしゃる“低音が見える”ということが、海外で受け入れられる理由にも繋がるかもしれませんね。ATH-M50xで音作りを行った川井さんの音楽がどのようなものになるのか、ぜひ聴いてみたいです。

川井さん まずはギターの録音に使ってみたいですね、入力もしっかり入れて。トラックダウンした音のチェックなど、スタジオでも実際の作業で試してみようと思います。

ーー 本日はありがとうございました。



特別企画 協力:オーディオテクニカ

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