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【特別企画】『攻殻機動隊』『スカイクロラ』などの音楽で知られる作曲家

川井憲次さんが語る、オーディオテクニカの“世界標準”モニターヘッドホン「ATH-M50x」の魅力

2017/11/01 聞き手:岩井喬 構成:編集部 小澤貴信
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オーディオテクニカ「ATH-M50x」は、世界の録音スタジオで定番モデルとなっているモニターヘッドホンであり、日本よりむしろ海外で高い人気を誇っている。このATH-M50xのサウンド、そしてなぜ世界でこれだけ支持されているのかを、日本を代表する作曲家やエンジニアに実際に使っていただき分析してもらう連続企画。今回は、アニメ・実写問わず数々の著名作品で音楽を担当してきた川井憲次氏にATH-M50xを実際に使っていただき、自身の音楽感を踏まえてそのサウンドの魅力を語っていただいた。

ATH-M50xを手にする川井憲次氏。取材は同氏のスタジオにて行った

インタビューに入るにあたり、川井憲次さんのこれまでの仕事を改めて紹介しておきたい。オーディオ&ビジュアルを楽しんでいるファイルウェブの読者の方々とっては、『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』などの押井守監督作品における川井さんの音楽がやはりお馴染みだろう。一方で氏が手がける作品はテレビアニメ、実写映画、テレビドラマと非常に幅広い。例えば直近では、テレビ朝日で放送中の人気ドラマ『科捜研の女 シーズン17』の音楽を担当している。

川井氏が音楽担当として携わった作品を上記以外にも列挙してみると、その功績と影響力の大きさが改めてわかる。アニメ映画なら『機動警察パトレイバー the Movie』『イノセンス』、テレビアニメなら『めぞん一刻』『らんま1/2』『機動戦士ガンダム00』『エデンの東』、実写映画では『リング』『デスノート』『さまよう刃』『GANTZ』…。これらは同氏が手がけたほんの一部で、他にもテレビドラマや特撮作品、NHKのドキュメンタリーまで、数多くの映像作品を、その“川井節”とも言える音楽で彩ってきた。

オーディオテクニカ「ATH-M50x」。¥OPEN(予想実売価格18,000円前後)

数々の映像作品において、見る者・聴く者をその世界へと深く誘う音楽を作りあげてきた川井氏に、ATH-50Mxを実際に使っていただき、そのサウンドをどう聴いたかを尋ねた。


主役はあくまで映像。映像のための音楽に徹する

ーー 本日はオーディオテクニカのモニターヘッドホン「ATH-M50x」についてお話を伺いたいのですが、その前に、川井さんの音楽についてもいろいろ質問をさせていただきたいと思います。数多くの著名な映像作品で音楽を手がけてきた川井さんですが、作曲や編曲を行う上で、まずここから音作りを始めるというポイントというのはあるのでしょうか。

川井さん それは作品によりますね。ピアノに重点を置いてほしいという指定があればピアノから作っていきますし、リズム中心の楽曲ならリズムから考えていくことになります。このあたりは映像次第でありオーダー次第で、映画やドラマのサウンドトラックであればその場面の尺や画に合わせて作るという感じです。

川井さんはまず、自身の作曲家としてのスタンスや、サウンドトラックを作曲する上でのアプローチについて語ってくれた

ーー オーディオ&ビジュアルの愛好家が多いファイルウェブの読者からすると、川井さんというとやはり、『攻殻機動隊』『イノセンス』『スカイクロラ』といった押井守作品をイメージする方が多いと思います。これらの作品では、低域に重心がある劇伴が印象的です。また、特に『攻殻機動隊』や『イノセンス』では合唱という声の要素が斬新なアプローチで加えられています。こういった発想は、押井さんとのやり取りの中で生まれてきたのでしょうか。

川井さん 基本的には押井さんとの話し合いで決まっていくので、自分が勝手に何かをやってしまうということはないです。ただ、これはいろいろなところで出ている話ですが、『攻殻機動隊』でのコーラスは私が提案したものですね。

ーー 押井さんとの付き合いは長いと思いますが、映像作家とのやり取りの中で、意思が伝えやすかったり、求めているものがわかりやすい相手というのはあるのでしょうか。

『機動警察パトレイバー』『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』『イノセンス』『スカイ・クロラ』など、川井さんが音楽を手がけた押井作品は日本のアニメ/映画史上における金字塔となっている

川井さん 快感ポイント、つまりは「カッコ良いかどうか」を共有できるかだと思います。押井さんの場合もそうですが、そこが共有できていると仕事はやりやすいです。

ーー 押井さんとのやり取りで「こんなふうにしてほしい」というような例が出たりすることはありましたか。

川井さん それはなかったですね。そういう例が見当たらないという(笑)。だからこそ、一緒に仕事をするのは楽しかったですね。

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