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【特別企画】“部屋をつくる"オーディオルーム・プロジェクト

オーディオを楽しむ“部屋”の重要性とは? “プロの音響設計集団”アコースティックラボにノウハウを聞く

鈴木 裕

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2017年06月19日

■壁に最適な素材とは? 記憶に伝承されたもの

――音が反射する要素が大事ということは、壁などの材質も重要になってきますか?

壁の表面材は反射音のクオリティや、響きのニュアンスに影響があります。建築の材料は50〜60年ぐらい前までは、千年以上も前から変わっていませんでした。石やレンガや木材で構造体をつくり、それが同時に表面仕上げであったり、または漆喰材で表面の凹凸をなくすようにしていたりしたのです。厚く重い単層構造なので共振のタイコ現象も発生しません。

ところが、現代の住宅は欧米も含めて下記【図1】のような、構造体とは別に内装下地材(軽い新建材)をつくって中空構造になっています(おかげで、構造・防火・断熱性などの飛躍的向上によって居住性が良くなっている)。その結果共振しやすい構造になってしまいました。

【図1】マンションはもちろん一戸建て住宅でもほとんどの下地構造が背後に空気層を持つ中空二重構造に なっており、下地材が共振しやすくなり反射音を濁らせる原因となっている

このような変化は住宅に限らず現代のコンサートホールの設計もその流れにあります。ウィーンの楽友協会をはじめとして、二十世紀初頭までにつくられたホールは伝統的工法の延長にあります。単層構造と中空構造の違いが、響きの違いなのだ、というのは今のところ独断の域を出ないところですが、本質的に響きが違うのです。

――部屋の響きというのは長い間に馴染んできた、ある種の文化的なものなんですね。

そういう風にまとめると言い過ぎですけど(笑)。普段の生活においては響きの質なんてまったく意識しませんけれど、音の大きい音楽空間ではその欠点が少しずつ顕在化してくるのです。

現在の日本の住宅の壁は、薄い石膏ボードの表面にビニールが貼ってあるものが多いのですが、さらにそれが中に空間を持たせた二重構造になっています。こういった壁ですと、反射音に雑音が混じってきます。オーディオで言う雑味です。これが反射音の質を悪くしています。

ですからおおげさに言えば現代人は中空層をもった新建材の響きという新しい響きの中で生活しているのです。

■中空構造の壁は音に悪い − 厚みある無垢のものが最適

下記【写真1】の中空構造の壁は100Hzあたりで共振します。【図2】のように100Hzの共振を中心として、低次高次の振動が歪音として発生してるのがわかります。出来の悪いサブウーファーの音を思い出してください。オーケストラの低音も何かの爆発音も同じような音色感の低音です。

【写真1】日本の住宅の壁に多く採用されている中空二重構造の壁。100Hz付近で共振して、低音を中心とした反射音が悪くなってしまう


【図2】防音工事をすると低域の残響時間が長くなり、充実した低音感が得られる他、振動しづらくなることで響きの質も改善される

壁などの材質としては、もし木材であれば厚みがあった方がいいし、中身の詰まった無垢のものは適しています。漆喰や石の壁にはそうした共振が出る余地がそもそもないから、スッキリとしたタイトな音になります。

――ウィーンフィルの楽友会協会ホールなど、その良い例なのでしょうね。

そう。あの重みのある、厚い響きはホールの形や素材から生まれているといっても間違いないです。

■デザイン的にも気持ちいい − 部屋には視覚的要素も重要

西洋で言えばコンサートホールや教会など。日本でもお寺の本堂はよく響くし、それが心地いいものとして感じられる。逆に長唄と三味線など、日本家屋の響きのない部屋のイメージだが、響きのある部屋で聴いてもデメリットには感じないのも興味深い。

オーディオの本質は何かとはいろいろ考えるところだが、最終的には鳴らしているオーナーが幸せになれるのが一番じゃないだろうか。その中で部屋の問題は大きい。

こうやって取材しているとついつい音の問題ばかりになってしまうが、アコースティックラボが施工した部屋は視覚的な要素というか、デザインとしての気持ちよさも特筆しておきたい。

小久保邸の天井は数値からすると低めのようにも思えるが、実際にリスニングポイントに座って音楽を楽しんでいる状況では、天井は低く感じない。そうデザインしてあるからだ。総合的な満足感の高さという意味でさすがプロ集団なのだ。

防音、部屋のレゾナンス、インテリアの3つの総合的なバランスという意味で外さない人たちである。



<試聴会『Acoustic Audio Forum』開催情報>

アコースティックラボが主催する試聴イベント『Acoustic Audio Forum』が今週末6月23日(金)・24日(土)に、そしてその番外編的イベント『オーディオライブin蔵前Village』が翌週末6月30日(金)・7月1日(土)に開催される。会場はどちらも同社蔵前ショールームで、各イベントの詳細は下記の通り。

■第42回 Acoustic Audio Forum
「防音工事をすると音がよくなる!(第4回) 〜定在波のコントロールについて〜」

・6月23日(金)18時〜20時
・6月24日(土)14時〜16時
イベント詳細情報
参加申し込みメールフォーム

同社では、低音域の響きの違和感につながるブーミングの原因は、部屋の形から決まる定在波の重なりにあると説明。基本的に低音の定在波は吸音や反射によって無くすことは実用的にはできないとし、それではどうしたらよいのか、を今回のテーマに据えたという。

23日、24日どちらの回も内容は同一。また、“第4回”と銘打っているが、もちろん前回までに参加していなくとも理解できる内容になっている。

■オーディオライブin蔵前Village
「デジタルオーディオの最前線」

・6月30日(金)18時〜20時
・7月1日(土)14時〜16時
イベント詳細情報
参加申し込みメールフォーム

イベント前半は6月に発売を開始したばかりのスフォルツァートの最新ネットワークプレーヤーDSP-Velaの試聴を、後半は外部クロックの違いによる比較試聴を実施。アコースティックラボがオーディオ的な音の響きに配慮して作った防音ショールームで各種デモを体験できる。

DSP-Velaは、フラグシップ機「DSP-01」と「DSP-03」の間に位置する機種。ESSの最新DACチップES9038Proを左右に1個ずつ使用、またオプション対応でUSB DACとしても機能する。また、内部にクロックを持たず外部クロックの使用を前提としていたり、電源は別筐体にするなど、最上位機DSP-01同様に音質にこだわっている。

そして上記の通りDSP-Velaは外部クロックを前提としていることを受け、クロックの違いでどこまで音が違うのかも実験。スフォルツァートのクロック「PMC-Piccolo」(DSP-Velaとのセット販売品)、「PMC-03」、「PMC-Circinus」の3機種を比較試聴する。

【問い合わせ先】
アコースティックラボ
TEL/03-5829-6035
MAIL/kusakai@acoustic-designsys.com
担当:草階(くさかい)氏

(特別企画 協力:アコースティックラボ)

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