HOME > インタビュー > オーディオを楽しむ“部屋”の重要性とは? “プロの音響設計集団”アコースティックラボにノウハウを聞く

【特別企画】“部屋をつくる"オーディオルーム・プロジェクト

オーディオを楽しむ“部屋”の重要性とは? “プロの音響設計集団”アコースティックラボにノウハウを聞く

2017/06/19 鈴木 裕
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

――ところで、アコースティックラボで施工するとして、1階と2階とどちらがオーディオルームには適しているのでしょうか。1階は床を下げることで天井を高くすることが出来るし、2階は天井方向に広げられるようにも思ったのですが。

これはどちらかというと1階が有利です。というのは、まず大事なのが防音の問題だからです。防音の施工をするためには下地材で、二重構造にしますが、基本的に重い材料にしなければなりません。2階は1階ほど重量をもちこめません。コンクリート床などは無理です。

鈴木 裕氏は本誌の取材で2件のユーザーを訪ねてきた。今回はその事例を基に、部屋の重要性に関して率直な質問を行ってみた

■防音するだけで音が良くなるというのは本当のことなのか?

――昔からオーディオは最後は床と電気、という言い方がありますが、やはり床の対策は重要でしょうか?

1階であれば、コンクリートを10〜15cm程度打てます。そしてその上に30〜40mmの床を形成して、振動しないようにします。ただし、2階がダメということではなく、ボード類を重ねて従来の床と比べて2〜3倍の重さの防振床をつくります。

――たしかに2階に施工した小久保邸でもしっかりとした低音が鳴っていました。あの場合は無垢の硬い木材、たしかカリン材が使われていましたね。ところで、御社は防音するだけで音が良くなると仰っていますが?

その通りです。防音工事をするということは重い材料で床・壁・天井をつくりますので結果的に振動しにくい下地構造になります。振動しやすい床や壁がよごれた反射音をつくります。普通の下地材は軽いのと、背後に空気層をもっているので共振しやすく叩くとボンボンと響いてしまうのはご存知の通りです。

以前に紹介した小久保 弘さんのリスニングルーム。住宅の2階で、しかもリフォーム工事によって手掛けられた部屋。天井高が限られているなかでも十分な防音性能が得られ、音響的に優れた部屋の設計は可能であるという事例

■部屋における窓の存在 − 設置場所や最適な形状は?

――再生音も良くなるのはわかりましたが、そもそも音楽を鳴らさなくてもほっとしますね。居心地がいいのが実に印象的でした。それとも関係するのですが、吉田邸の部屋には窓がありました。窓の存在というのは音にとってはマイナスにならないのですか?

これも大きな窓でなければ音質上の問題はありませんが、防音上は、どうしても壁よりは防音性は低くなってしまいます。しかし、開きタイプのサッシュにしたりハメ殺しのサッシュを二重にしたりしますと、壁の性能に近い窓ができますので、よほどお隣さんとの関係が悪くない限りお薦めしています。

普通の引き違いサッシュの二重でもいくらか性能は上がりますが、お薦めしません。三重サッシュにしても前記のものより性能は低いです。

――窓の位置というのは左右対称のほうがいいのでしょうか?

これも大きな窓でない限り、こだわる必要はありません。当社の設計例は吉田、小久保邸に限らずリスニングスウィートスポットは広いので、左右対称の位置で聴いているとは限りません。

少しでも防音性をよくしたいのでしたら、サッシュ追加の二重サッシュはそれなりに効果があります。防音ドアも有効です。部屋が静かになって、再生音もちがって聴こえます。

次ページデザイン的にも気持ちいい − 部屋には視覚的要素も重要

前へ 1 2 3 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE