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オーディオ銘機賞・開発特別大賞を受賞

マランツ「SA-10」のディスクリートDACはいかにして実現したのか? 開発者2万字インタビュー【前編】

公開日 2016/12/09 10:43 聞き手:山之内 正 構成:編集部 小澤貴信
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オーバーサンプリングやΔΣ変調も独自アルゴリズムで処理

ーー オーバーサンプリングは、44.1kHz系の信号については11.2MHz DSDへ、48kHz系の信号については12.3MHz DSDに変換されるということです。2.8MHzや5.6MHzへの変換という選択肢もあると思いますが、やはり数字が大きい方が結果がよかったのでしょうか。

澤田氏 その点は音質というより、SA-10はUSB-DAC機能も備えているので、現時点で流通しているハイレゾの最大スペックに合わせていこうと考えた結果です。

ーー オーバーサンプリング処理については、当然、DSD信号が入ってきたときはパスされます。

尾形氏 DSD信号のときは、アップサンプリングを含むデジタル処理を一切行わず、前段をパスして後段のアナログFIRフィルターへ送ります。ここはマランツのポリシーが現れていると思います。データ補間など余計な処理はなるべく行わずに、DSD信号をシンプルにアナログ変換するのです。

SA-10のディスクリートDACのデジタル部について説明する尾形氏

ーー ちなみにPCMの場合は、先ほどのオーバーサンプリングの後にどういう処理が入るのでしょうか。

尾形氏 オーバーサンプリングの後に、ΔΣ変調とノイズシェービングを行います。ノイズシェービングはいわばノイズを高域に追いやる処理ですね。ちなみにΔΣ変調やノイズシェービングも、DSPとCPLDに書き込まれた独自のアルゴリズムで処理をおこなっています。

ーー CPLDというのは、いわばプログラムを独自に書き込んで使うカスタムでチップですね。

尾形氏 はい。デバイス自身は汎用品ですが、それに対してプログラムをオリジナルで書き込んで各機能を実現させています。CPLDのうち1つは、先ほどお話しした通り前段部に用いています。もうひとつはD/A変換の手前で、DSD信号をD/A変換を行う差動回路に振り分けるパートに使っています。

DACの前/後段の間にアイソレーターを配置

ーー 前段のデジタル処理の後、後段のアナログFIRフィルターに入る前に、アイソレーターが配置されています。SA-10ではUSB入力へのアイソレーターと合わせて、コンプリート・アイソレーション・システム・デュオと呼ばれています。

尾形氏 DACの前/後段の間にデジタルアイソレーターを配置できたことは、DACをディスクリート構成とした大きなメリットの1つです。

マランツは以前から、アイソレーターによってノイズをなるべくアナログ回路に伝えないという手法を採ってきました。SA-10では、D/A変換部の直前にアイソレーターを配置できたことがポイントです。ワンパッケージの半導体である汎用DACでは、どうやってもそのDACの外側にしかアイソレーターは置けないですから。

オーバーサンプリングやΔΣ変調の処理が行われた後、アイソレーターを介して電気的に是正されたDSD信号が、後段の入り口であるCPLDに入力されるという流れです。

SA-10は、ディスクリートDAC内と、USB入力部の2ヶ所にノイズアイソレーションシステムを配置している

ーー アイソレーターの性能については、特筆すべきものはありますか?

尾形氏 部品そのものは従来の11シリーズと同様です。しかし、アイソレーターを初めて搭載したSA-7のそれからは、デバイスは大きく進化しています。当時よりも信号ラインや回路の規模が大きくなり、よりコンパクトで高性能なものが求められますので、SA-10では磁気結合タイプのアイソレーターを採用しています。

ーー このアイソレーターを通った信号が後段のアナログFIRフィルターに入っているということですね。

尾形氏 後段のCPLDはいわばスイッチの役割を持っています。というのは、後段のアナログFIRフィルター回路は、ディファレンシャルの差動回路になっていて、いわば4チャンネル分の回路になっているのです。この差動回路にL+/L-/R+/R-/とDSD信号を振り分ける作業をCPLDが行います。振り分けを行った後、移動平均フィルターを構成する4つに並んだロジック回路があり、そこからの出力を合成して出力抵抗に入れるという流れになります。

ちなみに、通常の汎用品DACでは、この出力抵抗のあたりまでが1チップのパッケージの中に入っています。

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