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「ハイレゾロゴ」認定にも変化か

各社バラバラに計測「ヘッドホンのハイレゾ測定法」がついに統一? JEITAの新規格を聞く

公開日 2016/06/10 10:00 山本敦
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ヘッドホンやイヤホンは、装着した状態ではじめて正しい音が出るように作られているため、耳穴の中や耳殻の形状が人それぞれ異なっていることをふまえた上で、実際の耳や頭部に近い測定機器を使い、しかもスピーカーとは異なる手法で特性を測る必要がある。

そこでこれまでは、耳の環境と同じインピーダンスを持つ「疑似耳(カプラー)」や、あるいは肩から上の部分を頭部、耳まで再現した「ダミーヘッド」を使い、耳の部分に配置したマイクを使って、鼓膜相当位置での周波数特性を測定していた。

ヘッドホンの周波数特性測定にはカプラと呼ばれる疑似耳とHATS(ダミーヘッド)が用いられる

ちなみに疑似耳やダミーヘッドは、IEC(国際電気標準会議)規格が存在する。メーカーの開発現場ではこれに準拠したものが使われていることが多い。

ところがこれらの疑似耳やダミーヘッドは、20kHzを超える帯域の周波数特性を測定できない。後述するようにダミーヘッドに仕込まれたマイクがハイレゾ対応でなかったりなど、そのままでは使えないのだ。

また、鼓膜相当位置で測定したヘッドホン・イヤホンの周波数特性は、耳の内部など様々な影響を受けるため、スピーカーの自由音場特性と同じように扱えないといった課題もある。

今回JEITAが規格化した新たな測定方法では、このような様々な課題を解決した。

ハイレゾ対応のダミーヘッドを製作

では、その新しい測定方法がどのようなものなのか見ていこう。

JEITAではまず「20kHz超帯域を測定できるダミーヘッド」の開発に注力した。既存のダミーヘッドに内蔵されたマイクがハイレゾ帯域をカバーしていなかったため、「6.5Hz〜140kHz」まで測定できる1/8インチの測定用マイクを組み込んで試作した。

「既存の1/2マイクより感度は劣るものの、マイクが測定周波数範囲として140kHzの高域まで保証しており、上限200kHzまでなら十分なS/Nで測定できることが確認できた」と原氏は語る。

ダミーヘッドのプロトタイプを開発するにあたり、人間の頭部のどの部位が特性に影響を及ぼすか調べるため、実在の人物の頭・耳殻・外耳道などを3Dスキャンによって正確に再現したダミーヘッドを象り、細かな部分まで徹底的に要素を洗い出した。

その結果、顔や頭のかたちは高域特性に及ぼす影響がほとんどなく、やはり「耳型」を解析することが重要ということがわかった。そこで改めて耳の形を3Dスキャニングによってモデリングし、さらに深いところまで知見を集めていったと原氏は振り返る。

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