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公開日 2025/09/17 06:30
フラグシップヘッドホンで培ってきたノウハウを細部にまで投入

Hi-Fiと楽器メーカーの強みで圧倒的な完成度を誇るハイエンドヘッドホン「YH-4000」「YH-C3000」を徹底レビュー

土方久明

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2022年、日本のオーディオ/楽器メーカーであるヤマハは、独自開発の平面磁界型「オルソダイナミックドライバー」を搭載したフラグシップモデル「YH-5000SE」を発売し、ハイエンド・ヘッドホン市場に存在感を示した。そんなヤマハから新たに、開放型モデル「YH-4000」と密閉型モデル「YH-C3000」という注目のヘッドホン2機種が登場する。





「YH-4000」の新製品ニュース


フラグシップモデルに搭載された「オルソダイナミックドライバー」を踏襲しながらも、新たなサウンドにチャレンジしたハイエンド・開放型ヘッドホン


2025/09/10







「YH-C3000」の新製品ニュース


新開発ダイナミック型ドライバーと楽器メーカーとしてノウハウを細部まで施し、最上位モデルのサウンド傾向を追求したハイエンド・密閉型ヘッドホン


2025/09/10




両モデルを同時期に投入してきたことに、「ヤマハは攻めて来たな」と筆者は思った。Hi-Fiオーディオブランドとして名高い同社は、楽器メーカーという顔も大きい。この規模でオーディオと楽器の両方を手がけるメーカーは、少なくとも自分の知る限り存在しない。しかし、今回レビューするYH-4000とYH-C3000には楽器メーカーならではの強みが色濃く表れていたのだ。


ここからは両モデルの特徴に触れつつ、音質レビューを中心にお届けしていこう。







YH-4000とYH-C3000を、据え置き型ヘッドホンアンプ「HA-L7A」と組み合わせて試聴。システムは、再生ソフト「roon」をインストールした MacBook Pro をトランスポートとし、ストリーミングサービス 「Qobuz」で音源を再生


YH-4000 〜 平面磁界型「オルソダイナミックドライバー」を踏襲し、新たな音質/音調に挑戦



開放型ヘッドホン「YH-4000」 426,800円(税込)


まずは開放型ヘッドホンのYH-4000から。コンセプトは「TRUE SOUND」というヤマハの基本理念を受け継ぎつつ、音楽が持つ熱量やパッションをより強調し、躍動感を高めたサウンドにあるという。


ハウジングは マグネシウムを採用したYH-5000SE と同一品だが、ハウジングのネジやヘッドバンドなど、細部の色味は異なる。ドライバーはYH-5000SEに採用した、平面磁界型「オルソダイナミックドライバー」ほぼそのものを投入。ヘッドバンドや無段階スライダーなどの構造も共通としている。



平面磁界型「オルソダイナミックドライバー」をYH-5000SEから踏襲




YH-4000のハウジング内部に日本製PETメッシュフィルタ―が投入されている



イヤーパッドの正面部に人工スエード素材、外周部には合成レザー素材を採用



構造面での違いは、ハウジング内部に配置されたフィルターに新設計のPET素材を採用した点だ。付属品には、キャリングケース/イヤーパッド/アンバランスケーブルが付属している。組み立ては、静岡県掛川市にあるヤマハ自社工場で行われている。


ここで注目すべきは、YH-4000が価格的にはYH-5000SEの下に位置しながらも、“音質/音調” というサウンドキャラクターを変化させたハイグレードモデルであるという点だ。上位機から培ったハウジングやドライバーの開発コストと生産のための設備コストのことも背景にあると推測されるが、そう考えるとこれはまさにバーゲンプライスと言える。




YH-4000のヘッドバンド部分。モデル名が記載されている



YH-4000のスライダー部分はブラック/シルバー/ホワイトを基調としたデザインが施されている



YH-4000音質レビュー 〜 現代的な帯域バランスで迫力が増大、高い分解能で描き出す


同社の据え置きヘッドホンアンプ「HA-L7A」にYH-4000をシングルエンドのケーブルで接続して試聴を開始した。耳に触れる正面部には人工スエード素材のイヤーパッドを採用し、重量もわずか320gと軽量。さらにYH-5000SEと同じ2層構造のヘッドバンドと無段階スライダーを備えており、装着感は最上級といえる。


驚かされるのは、サウンドキャラクターを明確に変えてきた点だ。全体的に中低音域の量感が増し、どの楽曲でも迫力が増大しており、音のディテールはより鮮明になり、アーティストとの距離感が近くなっている。



YH-4000を試聴。付属のシングルエンドケーブルで音質をチェック


星街すいせい『夜に咲く』では、キックドラムが力強く、より現代的な帯域バランス。エレクトリックシンセサイザーは音色が良く、ボーカルは距離感が近い。


リンキン・パーク『The Emptiness Machine』からTr2「From Zero」は、音調的に熱気を強く感じられる。イントロで響くブラッド・デルソンのギターリフが力強く、ドラムのエネルギー感も高い。楽曲全体を高い分解能で描き出せるため、エミリー・アームストロングのボーカルの声の出し方や歌い回しのニュアンスがリアルだ。



イヤーパッドの人口スエード素材の部分が耳周りに当たるが、とても装着感が良い


リアルさが際立つ表現力、バランス接続で分解能とサウンドステージ表現が格段に向上


藤井風『花』でも表現力の高さが際立っており、イントロのベースの重量感が高くリアルな表現。広い声域と豊かな表情を持つ藤井風が、リスナーと近い距離感で歌い上げる。シティポップ調のメロディを高いパッションで表現し、その熱量が鮮やかに伝わってくるのだ。


余談となるが本製品のサウンドデザインを決めた設計者の伊藤氏は、有能な技術を持ちながら年齢が若く、現代のロックやポップスをこよなく愛す人だというが、そのセンスが実際の音に表れていた。



据え置き型ヘッドホンアンプのHA-L7AがYH-4000をしっかり鳴らしきってくれる


ここまではシングルエンド接続での音質だったが、ヤマハのオプション品である「HXC-SC020」を使用すると、すべての楽曲で分解能とサウンドステージの表現が一段階向上する。ボーカルとバックミュージックの境界がより明確になり、左右の奥行き表現も大きく広がる。ドライバーの性能が高いため、バランス接続とアンバランス接続の差がダイレクトに伝わってくるのだと考えられる。試聴や購入を検討する際には、必ずバランス接続も試してほしい。



バランスケーブルを使用した場合の音質もチェック。分解能が飛躍的に向上した



密閉型モデル「YH-C3000」の音質に迫る

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