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公開日 2017/03/22 10:00
新Contour最上位の3ウェイ・スピーカー

【レビュー】ディナウディオ「Contour 60」 ー 生音のような低域を再現する“新たな金字塔”

井上千岳

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前にContour20/30のレビューをお伝えしたときには、まだContour60は届いていなかった。それがようやく到着して試聴できたのが10日ほど前のこと。その間にディナウディオ・ジャパンで発表会も行われたので、そこで新たにわかった事柄なども含めて本機の全容を紹介することにしたい。

左から「Contour20」「Contour30」「Contour60」

最初にお断りしておきたいのは、前回のレビューでContour30のダブルウーファーはパラレルだと記したが、これは誤りで片方を低い周波数で減衰させるスタガー構成であることがわかった。つまり2ウェイではなく、2.5ウェイということである。お詫びして訂正させていただく。

■“生え抜き”エンジニアに、“移籍組”と“新人”が合流して結成されたContour開発チーム

これは発表会のときに質問して初めて知ったことだが、そのほかにも色々と興味深い話を聞くことができた。例えば細かいことだが、このシリーズでディナウディオでは初めて2次(-12dB/oct)のクロスオーバーを採用している。これまでは位相回転を嫌ってずっと1次としてきたが、たぶんこの変更には理由がある。

発表会で説明をしてくれたのは、ロナルド・ホフマンというまだ若い人物で、ディナウディオ・アカデミーという部署に所属している。聞き慣れないが、そういう部署があるのだろう。


ロナルド・ホフマン氏
そのホフマン氏によると、今回の新Contour開発に当たって組まれたプロジェクト・チームには、3種類の人間がいるという。ひとつは元からディナウディオに在籍していた言わば生え抜きのエンジニアである。2番目は大学出たての新人エンジニア。そして3番目が他社から移籍してきたエンジニアだ。こういう新しい才能(タレント)を組み合わせることによって、いままでにない方向性を開拓しようというのがContour・プロジェクトの狙いだったというのである。

先に触れてクロスオーバーの件も、おそらくこういう経緯から採用されたものではないかと推測される。1次よりもちろん2次の方が急峻だ。しかし位相回転などの副作用もある。伝統的なディナウディオのエンジニアだけでは、たぶんこういう変更はしなかっただろう。この点だけを取り上げても、今回のContourがいかに破格で斬新なものか想像がつく。

■ユニットコーンや磁気回路のエアフローの最適化に有限要素法を用いた

新しいという意味では、今回の設計に多用された“FEM”という手法がある。これは有限要素法といって、元は数学の解析のひとつ。複雑な微分方程式を近似的に解くための方法として用いられる。工学でもこれと同様に複雑な対象を小さな部分に分割して、それぞれの解析から全体の動きを予測しようという手法である。多くの企業で採用されているものでそれ自体が珍しいわけではないが、ディナウディオでそれを採用したことに意味がある。これも新しいタレントの流入によるものと言っていいのかもしれない。

Dynaudio Japanのショールームに設置された「Contour 60」と「Contour 25C」

このFEMは様々な部分、例えばコーンのエッジやサスペンション、磁気回路のエアフローなどに適用されて、形状や素材の最適化を実現してきたようだ。最も興味深い例として、MSPコーンの形状が挙げられる。

MSPはディナウディオが長く使用してきたコーン素材である。ケイ酸マグネシウム・ポリマーという。他のメーカーから来たエンジニアの中にはなぜそれを使い続けるのかということに疑問を持つ人もいたらしい。が、色々と測定やシミュレーションをしてみて、確かにそれが最もいいということが改めて実証された。

同時にそこでFEMを用いて解析を行った結果、コーンの厚みを中心部と周辺部でわずかに変えることでさらによい性能が得られることがわかったという。具体的には周辺部の方を0.1mmほど厚くするものだが、これなども従来のディナウディオではやらなかったことに違いない。Vari-MSP振動板と名付けられ、いっそうハイスピードで強靭な特性を備えているという。

Contoru 60を聴く ー ディナウディオの中でも最も進んだ低域再現

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