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筑波大学、重低音を“身体で聴く”携帯型静音サブウーファー開発。電気刺激と低周波で筋肉に響く
編集部:岡本 雄筑波大学は、身体で重低音を“聴く”ことができる静音型ウェアラブル音響「EMS静音サブウーファー」システムを開発したことを明らかにした。
本システムは、筋肉に微弱な電気を流すことで収縮を引き起こす筋電気刺激(EMS)と低周波振動を組み合わせることで、身体に直接重低音の感覚を伝達することができる「静音型ウェアラブル音響システム」。
まず音楽信号から低周波成分を抽出し、タイミングと振幅情報を持つ信号を生成。それをEMS信号に変換し、腹筋に貼り付けたパッドを通して筋肉に伝えることで、深い低音の “響き” や “打撃感” が筋肉への刺激として明瞭に感じられるという。なお、EMS刺激の知覚は音の刺激に比べてわずかに遅れるため、コンテンツを視聴する際は映像/音声を約40ミリ秒遅延させることで、視聴覚と触覚の感覚同期を実現したとのこと。
本研究の背景として研究チームは、近年VRやオンラインライブの普及により、自宅でも臨場感ある音楽体験が求められるようになっていると説明。その際、没入感を向上させるにあたっては重低音による「身体で感じる音」が鍵となるが、サブウーファーを家庭環境へ導入するには大きさや音漏れの問題などが障壁になっていたと分析する。
そこで今回、身体で低音を感じることができる携帯型で静音性に優れたサブウーファーシステムを開発することにより、VRや日常の音楽体験における音響没入体験の新たな可能性を提案したとしている。
本システムの評価実験においては24人の参加者を対象としてVRライブ映像を用いた効果確認を実施。その結果、従来のスピーカーやサブウーファーと同等のリズム・音の厚みを伝えながらも、周囲への騒音を大幅に抑制できることが確認できたという。また、参加者がEMSに慣れてくるにつれ、 より自然に、より高い没入感が得られることも明らかになったとしている。
今後の展開として、EMS信号と音響信号の知覚タイミング差を補正するキャリブレーション機能の強化や、複数の周波数帯域を個別に制御できるマルチバンドEMSの導入を検討しているという。また、ユーザーの体格や皮膚感度、音楽ジャンルに応じてEMS刺激の強さやタイミングを最適化する調整機構を開発できれば、より高精度で快適な刺激提示の実現が期待できるとしている。
将来的には、 映画やゲーム、舞台芸術などの分野への応用のほか、自宅での音楽鑑賞に対応したウェアラブル音響デバイスとしての製品展開も視野に入れているとのこと。
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