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「地域DXで地域を豊かに、人々を笑顔に」。存在感をさらに高める“あなたの街のケーブルテレビ”
編集部:竹内 純地域DXへチャレンジする先駆者の成果を反映
一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟は、「地域DXで地域を豊かに、人々を笑顔に」をミッションに掲げ、業界の取り組み指針を示した「2030ケーブルビジョン」の2度目のアップデートを行った。
2021年6月に策定された「2030ケーブルビジョン」は、少子高齢化や人口減少の進展、生活のあらゆる場面でのデジタル化の加速など、我が国が直面する状況を背景に、ケーブルテレビの持続成長とさらなる発展への在り方を示したもの。刻々と変化する事業環境を反映し、2023年6月に「第2版」、そしてこの度「第3版」へとアップデートが行われた。
説明会冒頭に挨拶のため登壇した今林顯一理事長は、「ケーブルテレビは地域の生活者が従業員、経営者であり、基盤とする地域が競争力の原点であり、拠りどころとなっています。これまで築き上げてきた情報/通信のインフラ、各地域の経験を資産とし、地域DXを担うことを宣言しました」と同ビジョンの趣旨を述べた。
また、策定から4年が経ち、「各地で地域課題の解決に貢献しようと、先駆者たちがケーブルでもテレビでも電話でもない事業に、5G、IoT、生成AIなどの最新技術を取り込んでチャレンジし、成果を収めてきました。こうした取り組みをもとにアップデートを行いました。ケーブルテレビ事業者は実績を積み重ねていくことが大切。各地域が取り組んできた息吹、地域の皆様と築き上げてきた実績をご覧いただきたい」と説明した。
今林理事長は、政府が6月13日に発表した「地方創成2.0基本構想」を取り上げ、10年後に目指す姿として、「若者や女性にも選ばれる地方をつくる」「地域資源を活用した高付加価値型の地方経済をつくる」「安心して暮らせる地方をつくる」「都市と地方が互いに支え合い、一人一人が活躍できる社会をつくる」「AI・デジタルなどの新技術が活用される地方をつくる」というビジョンが示されていることを紹介。
これに対し、「ケーブルテレビ事業者は4年前からすでに、同様なビジョンを掲げて取り組みを開始し、成果を上げつつあります。地域の都市、生活者と経済を結ぶ担い手として、フロントランナーとしてのケーブルテレビを実感いただけると確信しています」と同ビジョンの意義を強調した。
事業環境は刻々と変化するが、目指すビジョン・ミッションは不変
続いて「2030ケーブルビジョン(第3版)」のアップデートのポイントについて、企画推進部長 浅沼哲雄氏が説明を行った。「事業環境は刻々と変化していますが、当初掲げたミッション・ビジョン、そして目指すべき姿は揺らぐことはなく、むしろその重要性は一層高まっています。業界内には引き続き指針として、また、業界外にはケーブルテレビ事業者の取り組みをご認知いただきたい」と訴えた。
3章テクノロジーロードマップでは、急速な進展を見せる生成AIによる影響を随所に反映。生成AIや大規模言語モデル(LLM)関連の記載が大幅に追記され、セキュリティ面においても、AIへの攻撃対策やAIセ−フティについて新たに触れている。
4章「2030年に向けた事業環境の見通し」では、何もしなければケーブルテレビの競争力は低下し、自然減も相俟って顧客契約数は大幅に減少するとの見通しを示していたが、現時点での進捗について浅沼氏は「放送(多チャンネル)と固定電話が純減するトレンドは想定通りだが、インターネットサービスは競争環境が激変するなかでも微増と善戦している」とここまでの実績を紹介した。
6章「2030年に向けたアクションプラン」では、「放送が変わる」「コンテンツが変わる」「ネットワークが変わる」「ワイヤレスが変わる」「IDで変わる」「サービス・ビジネスが変わる」の6つのテーマそれぞれに、「最近の動き」の項目は全面的にアップデートされた。また、それに対するアクションプランも大幅に追記が行われている。
8章「2030年の飛翔」では、そのシナリオにおいて、既存サービスの「放送」「通信(有線)」、さらに「その他」の3つのカテゴリーのなかから、「その他」を約30%にまで引き上げることを目標としているが、こちらも現時点において、BtoB/BtoG事業への取り組み強化、BtoC事業では電力/ガス/新サービスを拡大するなど、「順調に進捗している」とのこと。
地域ビジネス推進へ向けた2年間の活動を総括
説明会では併せて「地域ビジネス戦略2025」と題し、各地域の事業者が課題意識を持ち進める地域ビジネスの取り組みについて、常務理事 二瓶浩一氏が説明した。「2030ケーブルビジョン」のテーマのひとつ「サービス・ビジネスが変わる」で発足した「地域推進ビジネスタスクフォース」の2年間にわたる活動をまとめたものとなる。
ケーブルテレビ事業者が地域DXではたして何を実現することができるのか。目指す姿として定めたのは「地域DXで『街と人の健康』の担い手になる」ことだとし、「ひとつとして共通の答えはありません。それがこの業界の難しさです」と語る二瓶氏。さらに多くの事業者が、自社で着手可能な地域ビジネスを実践するための糸口を見つけ、取り組みを開始していくことに大きな期待を寄せた。
「私たちの事業はこれまでも、そしてこれからも、地域の顧客基盤があってこそ成立するもの。“街と人の健康” を育むことは、地域全体の豊かさを高め、私たちの存在基盤を固めることに直結します」と目指す姿を強調した。
地域ビジネスへアプローチする戦略は様々だが、これまでのユースケースから次の6つに大別されるとした。「ビジネス基盤となるステークホルダーとの関係強化」「地域メディアとしての情報発信」「BtoC領域へのアプローチ戦略」「法人事業(BtoB/BtoG)領域へのアプローチ戦略」「特にBtoG領域に対するアプローチ戦略」「新規事業領域へのアプローチ戦略」。
このうち、「新規事業領域へのアプローチ戦略」のユースケースのひとつとして香川テレビ放送網による日本初の生成AIを活用した買い物サービス「こんにち商店」を紹介した。チャットGPTを活用し、“おしゃべり” で簡単にアプリ注文ができるサービス。サブスクで配送料は無料。ケーブルテレビ事業者等が通信環境やタブレットを提供し、代金の回収を代行する。
過疎化、高齢化が進む地方の買い物弱者に対し、簡単で楽しい買い物サービスを提供するだけでなく、高齢者にとってはAIが会話を楽しむ相手となり、健康予防に対する効果も期待されるという。また、現役世代に対しても、“タイパ” を満たす買い物サービスとしてストレスを軽減し、働きやすい街づくりにも貢献する。2025年3月〜8月の実証実験/実装実験を経て、2025年8月11日より本サービス開始が予定されている。
今林理事長は「政府において地方創成に関係する方々、地域で課題解決に取り組まれている行政の方々、産業界の方々、地域でビジネスを展開されている方々など、多くの方にこうした取り組みを知ってほしい。地域のケーブルテレビ事業者と連携し、未来を切り開くお手伝いをさせていただきたい」と力を込めた。さらに多くのケーブルテレビ事業者の地域ビジネス参画を実現、業界全体の大きなうねりとしていく構えだ。
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