公開日 2025/09/12 16:20

これだけ進化の余地があったのか。アップル「AirPods Pro 3」ファーストインプレッション

音質、ANC、外部音取り込みなどをチェック

アップルが、アクティブノイズキャンセリング機能を搭載する最新のワイヤレスイヤホン「AirPods Pro 3」を発表した。筆者はApple Parkで開催された新製品発表会で実機を体験した。前世代比で2倍になったANCの効果や、サウンドのファーストインプレッションをお届けしよう。

アップルの発表会で新しい「AirPods Pro 3」を体験した

ブラッシュアップされたデザインとフィット感

AirPods Proシリーズが約2年ぶりのアップデートを迎えた。デザインは前世代のモデルに対して見た目には大きく変わっていないが、イヤホンを装着するとハウジングがコンパクトになり、ステムが少しスリムになったように感じる。

フィット感はAirPods Pro 2から少し変わった。筆者はAirPods Proのイヤーチップにこれまで「M」を使ってきたが、AirPods Pro 3では「S」が最も心地よく収まった。ノズルを耳の奥深くまで挿入できる。パッシブな消音効果が高まり、サウンドの洩れも解消される感覚がある。

外観の違いとして、ハウジングの前方側に黒い帯状の模様が1つ増えている。ワークアウト中に機能する心拍数センサーがここに搭載されている。

イヤホンの前方側に新しい心拍数センサーが内蔵されている

充電ケースはサイズが縦方向に少しだけ大きくなった。背面に設けられていたペアリングボタンも省かれている。AirPods 4と同様、ケースをダブルタップするとペアリングモードに入る。

AirPods Pro 3のイヤホン。アイコニックなデザイン、ホワイトのカラーを継承する

下は筆者が会場に持参したAirPods Pro 2(USB-C)のケース。上のAirPods Pro 3のケースがわずかに大きくなった 

ANCと外部音取り込みに、まだ進化する余地があった

発表会が開催されたスティーブ・ジョブズ・シアターの喧噪の中で、AirPods Proのアクティブノイズキャンセリング機能を体験した。

新しいiPhoneと一緒にAirPods Pro 3を体験した

アップルは、前世代機に対してANC性能が2倍に向上した背景について、アルゴリズム(ソフトウェア)のブラッシュアップと新しい高性能マイク、そしてフォーム素材を先端に注入した新しいイヤーチップの組み合わせによるものと説明している。

消音効果は確かに高い。ANCをオンにすると身近に話している人の声がほぼ聞こえなくなり、音楽を再生すると深く没入できる。同じApple ParkでAirPods Pro 2(USB-C)を体験した時にもANC機能の高い消音効果を実感したが、最新モデルはより広い帯域に、まんべんなく消音効果がかかる印象を受けた。

新しく開発されたイヤーチップ。先端にフォーム素材を加えている。AirPods Pro 2のイヤーチップとノズルの形状等が異なることから互換性はなさそうだ

ステムのタッチセンサーリモコンを押し込んで、外部音取り込みモードに切り替えてみる。AirPods ProとAirPods Maxのクリアな外部音取り込みは多くの方々が日々体験していると思うが、AirPods Pro 3で同じ機能を体験すると、本体のマイクに由来するノイズに解消されるべき余地があったことに気がつく。対面しながら話す人の声が、一段と雑味なく滑らかに聞こえる。

立体的で生々しいサウンドを聴かせるAirPods Pro 3

AirPods Pro 3では、フル充電状態からANCをオンにした状態で、最大8時間の連続リスニングが行える。再生時間が2時間ぶん伸びた格好だ。かわりに充電ケースのバッテリー容量が少し減ったようで、イヤホンを充電しながら使える最大再生時間は6時間減っている。

短い時間だが、会場で、Apple Musicでロスレス配信されている音源を数曲聴いた。

新しいAirPods Pro 3は立体的な音場の再現力がまた一段と向上していた。音色がとても鮮やかになり、アコースティック楽器による演奏の躍動感がさらに増している。楽器やボーカルのハイトーンがよく伸びる。低音はレスポンスが鋭く、余韻がスムーズに感じられた。また機会をあらため、様々な環境でAirPods Pro 2と比較試聴してみたい。

イヤホンの防塵・防水性能はIP54等級からIP57等級になり、防水対応を実現した。アップルによる独自のテストにより、高い耐汗性能を持つことも確認されている。ワークアウトにAirPods Proシリーズを活用するユーザーは多いはず。イヤホンが汗に濡れた時にも軽く水洗いができることがメリットとして感じられるだろう。なおイヤホン本体だけでなく、ケースもIP57等級の防塵・防水性能を備えている。

心拍数センサーを搭載。耳で心拍を計るメリットとは

AirPods Pro 3には2つの新機能がある。ひとつは心拍数センサーが加わったことだ。

アップル傘下のブランドであるBeatsは、本機に先行する形で心拍数センサーを搭載する「Powerbeats Pro 2」を発売している。アップルはAirPods Pro 3のため、専用に極小サイズの心拍数センサーを開発し、搭載した。

加速度センサー、ジャイロスコープ、GPSからの情報を統合して、iPhone上の新しいAIモデルによって、50種類のワークアウトを行っている際、心拍数と消費カロリーをAirPods Pro 3から記録できる。

AirPods Pro 3を装着して心拍数センサーの精度を確かめる機会も得た。ワークアウトの実践中、iPhoneのフィットネスアプリの画面上でアクティブに変わる心拍数、消費カロリーの数値を確認できる。

ワークアウトを実践中、AirPods Pro 3で計測している心拍数、消費カロリーの数値をフィットネスアプリ等から計測できる

周知の通り、Apple Watchにも高性能な光学式心拍数センサーが内蔵されている。AirPods Pro 3と両方を身に着けてワークアウトを実践した場合、より精度の高い測定結果が得られる場合がある。

というのも、ワークアウトを実践している間に、Apple Watchは手もとでセンサーの位置がずれることが考えられる。イヤホンもその可能性はゼロではないが、イヤーチップによるフィット感が向上したAirPods Pro 3では測定環境のブレを抑えられる期待がある。

また、海外では特に多いが、手首の周囲にタトゥーを入れているユーザーは、Apple WatchよりもAirPods Pro 3の方が、精度が高い生体データの読み取りができるはずだ。

心拍数センサーから得られるデータは、iPhoneのヘルスケアやフィットネスのアプリに記録される。アップルが外部のデベロッパにも提供するHealthKitのフレームワークから、心拍数のデータも安全に管理しながらアプリによるサービスの機能構築にデータを活用することもできる。

ただし心拍数の計測はワークアウトの実践中に限って行われる。例えばソファに座り、静かに音楽を聴いているユーザーの心拍数データを取得するなどして、瞑想やストレス計測等の用途にも役立てられるようなアップデートが加われば、新しい心拍数センサーがより多くのユーザーに貢献しそうだ。

もうひとつの新機能は、iPhoneの「翻訳」アプリと、Apple Intelligenceの新しいAIモデルが、AirPods Pro 3の高性能マイクと連携して実現する「ライブ翻訳」だ。

ライブ翻訳にバッテリーの持続時間向上など、新しいAirPods Pro 3は確かな進化の手応えが感じられるワイヤレスイヤホンだ

この機能については発表会で試すことができなかった。日本語への対応が今年の後半以降を予定しているため、最も多く使う機会がありそうな日英の言語間でのライブ翻訳もまた、AirPods Pro 3が9月19日に発売される直後には、まだ試せない。然るべきタイミングが訪れた時にまた報告する。

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