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公開日 2023/02/09 06:30

ハイエンドヘッドホンの頂を超えた。フォーカル「UTOPIA SG」が聴かせる普遍的サウンド

【特別企画】クラシックからアニソンまで上質なサウンドで聴かせる
岩井 喬
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ハイエンドヘッドホンの先鞭をつけたフランス・フォーカルの先見性



この数年でハイエンドヘッドホンの主力モデルにおけるプライスレンジが上昇している印象を受ける。昨今の社会情勢からくる円安要因での価格上昇も無視できないものの、各社を代表する核となり得る製品の価格は50万円前後に推移しているのではないか。10年ほど前であれば、ゼンハイザー「HD800」やベイヤーダイナミック「T1」など、各社のフラグシップは20万円前後であったことを考えると、そのレンジ拡大のさまに圧倒される。

ハイエンド・ヘッドホンを一段上のステージに引き上げる流れに先鞭をつけたのは、フランスを代表する世界のスピーカーブランド、フォーカルが満を持して2016年に発売したフラグシップヘッドホン「UTOPIA」にあったと考える。この当時、前述したゼンハイザーやベイヤーダイナミックはHD800やT2の第二世代となる「HD800 S」「T1 2nd Generation」を発売していたが、いずれも前世代からの進化点としてトレンドでもあった低域を重視したサウンド変遷がみられた。

FOCAL 開放型ヘッドホンのフラグシップ機「UTOPIA SG」(660,000円/税込)

そうした情勢下、50万円を超えるプライスで発表されたUTOPIAには誰しもが驚き、そのサウンドを聴いて納得せざるを得なかっただろう。フォーカルはスピーカーにおいてもフラグシップシリーズにUTOPIAの名を用いるが、ヘッドホンの世界でもそれまでの常識を超える究極を目指したものであることがその命名から伝わってくるかのようだった。

UTOPIAはその時代ならではの解像度の高さ、きめ細やかで艶ハリの良い上質なサウンドを聴かせてくれる完成度の高い製品であり、この成功があったからこそ、「STELLIA」や「CLEAR MG」「CELESTEE」などの今日におけるフォーカルヘッドホン・ハイエンドラインの充実に繋がっている。

しかしその一方で、UTOPIAは5年以上後継モデルの発表はなく(バランス駆動用ケーブルを追加同梱した「UTOPIA NP」もヘッドホン本体は変化なし)、他社の動向を踏まえ、そろそろ代替わりの時期ではないかと思われていた。そして2022年秋、待望の第2世代「UTOPIA SG」が発表されたのである。

ボイスコイルは銅とアルミ合金に進化。伸びやかさや低歪化に貢献



これまで後継モデルが登場しなかったのは、それだけUTOPIAの完成度が高かった証拠ともいえよう。ゆえにその高い頂を超えることは容易ではなかったはずだ。SGは第二世代を意味するSecond Generationの略であるが、基本的なフォルムや心臓部である40mmドライバーに用いるピュアベリリウム振動板はそのまま継承している。

2016年に発売された「UTOPIA」をベースに、細部をブラッシュアップさせた「UTOPIA SG」

一方で変更点として挙げられるのは、ドライバーユニットのボイスコイルと、機能美を兼ね備えたハウジングデザインの進化だ。まずドライバーユニットのボイスコイルについてだが、従来はアルミ素材であったが、第2世代となり、より高い信頼性と軽量化が図られた銅とアルミの合金に置き換えられた。これにより高域の伸びやかさや低歪化に効果を発揮しているそうだ。

独自のM字型フルレンジドライバーユニット。ボイスコイルは銅とアルミニウムの合金が採用されている

UTOPIAの代からの特徴であるM字型の振動板形状は、スピーカーのコーンと同様、フリーエッジ構造を取り入れ、高域から低域までスムーズなピストン動作を実現している。さらにフォーカルではスピーカーユニットと同様にハイエンドヘッドホン用のドライバーユニットそのものも自社で生産。振動板に用いるピュアベリリウムは延べ板をプレスし、M字型に加工しているそうだ。

振動板にピュアベリリウムを採用するのはハイエンドスピーカー譲りの技術

そして今回のSGへの第二の変更点、ハウジングデザインについても細かく見ていこう。UTOPIAではイヤーカップは太めの針金を編んだメッシュ素材であったが、SGとなり、開口面積を広く取りつつ強度面も両立できるハニカム形状のグリルと、より細やかなメッシュ素材との組み合わせを採用した。これはフォーカルのハイエンドオープン型モデルと共通の意匠であるが、音波の透過性が高いこともメリットとなっている。

さらに振動板表面に配置されたイヤーカップ内のグリルも、強度と開口率の高さを兼ね備えたハニカム素材に置き換えるとともに、振動板と同じM字型に成形された。この変更によってさらに強度を高めるとともに、余分な音の反響を抑え、高域の再現性や透明度の高さにも役立てている。またデザインの刷新という点では、フォーカルロゴが配されたイヤーカップ中央部のネットにも注目したい。ネットの奥にドライバーユニット背面側にある、赤く縁取られたネオジムリングマグネットが見えるのだが、このネットの内側を赤く配色することで、上質なアクセントを与えている。

イヤーカップ内のグリルもハニカム構造・M字型を採用しさらに強度を増している

加えてフレームとなるカーボンファイバー製アークも従来のものとは趣を変え、環境に配慮したリサイクル素材による鍛造カーボンを採用。そしてヘッドバンドや、高さ20mmのメモリーフォームクッションを取り入れたメッシュ加工のイヤーパッドにはラムスキンレザーを用いている。

また取り回しの上で重要となる着脱式ケーブルには引き続きバヨネット式のセルフロック型Lemoコネクターを継承。3.5mmステレオミニプラグ仕様のシングルエンド用と、4ピンXLRプラグ仕様のバランス駆動用の2本を同梱するとともに、キャリングケースも付属する。

ケーブルは左右着脱式。3.5mmシングルエンドと4pinXLRバランスの2種類のケーブルを同梱する

ケーブルごとコンパクトに収納するキャリングケースも付属

落ち着き良く流麗なサウンド。透明度が高く、S/Nの良さも実感



試聴は自宅のリスニングルームで行ったが、音源再生にはAKM製セパレートDAC「AK4499EX」と「AK4191」を積むAstell&Kernの最新DAP「SP3000」を用い、バランス・ライン出力を取り出して、ヘッドホンアンプのラックスマン「P-750u Limited」へ接続した。

ソース機器にはAstell&Kern「SP3000」を組み合わせ

UTOPIA SGはUTOPIAに比べ、非常に歪みが少なく、どの帯域においても強調感のない、落ち着き良く流麗なサウンドが特徴である。UTOPIAは高域にかけゴージャスな華やかさが加わり、倍音の煌びやかさが際立っていたが、SGでは強調感に繋がる歪みっぽさが抑えられており、S/Nの点でも優位性が高い。

バランス出力にも対応するラックスマンのヘッドホンアンプ「P-750u Limited」を活用

飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ コンサート2013『プロコフィエフ:交響曲第1番 古典交響曲』では管弦楽器の旋律を丁寧に拾い上げ、ハリ感もしなやかに表現。立ち上がりも素早く、個々のパートはボディの厚みを持たせており、非常に滑らかなタッチで重心も低くまとめている。ホールトーンの温かみのある響きも緻密に再現し、余韻も階調細かく豊潤なサウンドが展開。ローエンドのふくよかさもナチュラルな制動感で引き締め、解像度も高い。潤い良く流麗なハーモニーは透明度が高く、S/Nの良さも実感できた。

11.2MHz音源のSuara『キミガタメ』はピアノのハーモニクスが深く、ローエンドも重厚に響く。ウェットで肉付きの良いボーカルは、口元の動きもしなやかに追随し、息継ぎもリアルに捉える。しっとりとした清涼な響きを載せるリヴァーブも実にリッチだ。そしてアコースティックギターの弦は太さを持たせつつ、ピッキングのアタックをカリッと明瞭に浮かびがらせている。一方で輪郭のエッジ感は誇張がなく丁寧で、ナチュラルに音像がフッと立ち上がる生々しい空気感をダイレクトに引き出してくれた。

ジャズの『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』ではホーンセクションの爽やかな旋律を緻密に描き、バックに定位するピアノのアタック感も芯のある響きを見せ、ほぐれ良くハーモニクスを聴かせてくれる。リズム隊は躍動的で、シンバルワークは落ち着き良く滑らかに表現。ウッドベースの弦は艶良くハリがあり、胴鳴りもハネ良くむっちりとしている。

さらにロック音源の『MENIKETTI』ではディストーションギターのリフを軽やかに聴かせ、わずかにかけられたリヴァーブ成分さえもマスクすることなく克明に引き出す。リズム隊は密度が高く、アタックもスムーズにまとめており、スネアドラムの響きにも厚みがある。ハスキーなボーカルは自然なボトム感を持たせており、口元の動きもきつさがなく極めて滑らかだ。コーラスも分離良く、シンバルの響きは爽やかで、余韻には上品さが漂う。

バランス駆動ではより落ち着きよく音離れの良いサウンドに進化



ここでケーブルを付け替え、バランス駆動でも確認してみる。より落ち着き良く音離れの良いサウンドに進化し、S/Nも一層高まった。11.2MHz音源の生々しさも磨きがかかり、個々のパートの分離の良さ、演者が動き出す瞬間の空気感もリアルに捉えている。音像の際立ち感も高いが、倍音の強調感は一切なく、ディテールの粗も感じられない。オーケストラはより静寂感が高まり、管弦楽器の艶や混濁感のない余韻の清々しさが一層際立ってくる。ローエンドも余裕があり、ハーモニーの流麗さに耳を奪われた。瑞々しく耳当たり良いホールトーンも素晴らしい。

『Pure2』のホーンセクションやピアノは明朗快活なタッチがより鮮明であり、演奏の機微や躍動感が一段と高まっているように感じられた。各パートの分離も良く、キックドラムとウッドベースの描き分けも明瞭である。音像定位のリアルさ、スタジオの残響感もストレートに聴き取ることができた。ロック音源でもドラムセットの細やかなニュアンス、エレキギターの歪み感、シンバルの緻密な響きを丁寧にトレース。シャープなアタックだがきつさに繋がらない点は流石である。

最後に音圧が高く飽和気味に聴こえやすいアニソン、ヴィヴィ『Sing My Pleasure』も聴いてみた。音数が多く、バックに配されたストリングスが力強いリズム隊やエレキギターにマスクされてしまいがちだが、UTOPIA SGではそうした問題も意に介せず、個々のパートを分離良く丁寧にトレースし、ボーカルにかけられたリヴァーブの余韻まで感じ取れるほど、見通しの深い上品なサウンドとして聴かせてくれた。

ストリングスの抑揚やギターのリフも心地よく、ドラムセットの響きも実に爽やかだ。スピーディーな楽曲のビートを力強く支えるベースもたっぷりと伸び良く表現するが、音の洪水に埋もれることなく芯をくっきりと描き出す。幾分細く華奢なボーカルも芯の強さ、エッジのクリアさもあり、分離良くセンターへ定位している。

ハイエンドヘッドホンの新たなリファレンスになりうる「UTOPIA SG」

冒頭、50万円台に推移したハイエンドヘッドホンのボリュームゾーンについて触れたが、UTOPIA SGはそのレンジを一つ越えた60万円台というプライスにステップアップした。フラグシップならではの優れた質感にこだわった作りもさらなる高みへと到達。長時間聴いていても疲れることのない、見かけ上の華美な音調とは決別した、普遍的でナチュラルなサウンドがUTOPIA SG最大の持ち味だ。

聴き込むほどにその良さがわかる、このサウンド性はこれからの時代を正しく照らすかのような、新たなリファレンスといえるものといえるだろう。

(提供:ラックスマン)

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