ガジェット 公開日 2025/08/28 11:18

Google「Pixel 10」シリーズ3機種レビュー。スタンダードモデルの進化で機種選びが難しく?

【連載】佐野正弘のITインサイト 第174回
Gadget Gate
佐野正弘
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Googleが2025年8月21日に発表したスマートフォン新機種の「Pixel 10」シリーズは、今回もスタンダードモデルの「Pixel 10」と、より性能が強化された「Pro」モデルの3機種が用意される。このうち先行して8月28日より発売されるのがPixel 10と、「Pixel 10 Pro」「Pixel 10 Pro XL」の計3機種だ。

「Pixel 10」シリーズのうち先行して発売される3機種。左から「Pixel 10」「Pixel 10 Pro」「Pixel 10 Pro XL」

そして今回は、これら3機種をお借りすることができたので、各モデルの共通点と違い、誰がどの機種を選ぶべきか?などについて、実機から検証していきたいと思う。なお発売前の短い期間で確認している関係上、利用できる機能に制約もあり、全ての機能を確認できているわけではないことはあらかじめご留意頂きたい。

■ “Pixelシリーズ” 最新機種を一斉レビュー!スタンダードモデルとProモデルの違いは?



まずはハードと外観について確認すると、基本的には3機種ともに前機種の「Pixel 9」シリーズと共通している部分が多い。とりわけデザインに関して言えば、丸みのあるカメラバーや背面のデザインなどに至るまでかなりの部分で共通しており、唯一底面から上部へと位置が変わったSIMスロットを除けば、見た目では違いを見出しにくい。

それゆえ外観の違いはPixel 9シリーズと同じで、Pixel 10は背面が光沢のあるガラス素材、Proシリーズ2機種はマット調のガラス素材を用いている。またPixel 10とPixel 10 Proは共に6.3インチのディスプレイを搭載しているためサイズ感が近しい一方、Pixel 10 XLは大画面モデルということもあって6.8インチのディスプレイを搭載しており、サイズ感が明確に違っている。

Pixel 10(左)とPixel 10 Pro(右)の背面。デザインとサイズ感はほぼ共通しているが、「Pixel 9」シリーズ同様背面加工には違いがある

それゆえ大画面モデルが必要という人は、必然的にPixel 10 Pro XLを選ぶことになるのだが、コンパクトなモデルの選択肢は2つある。ではスタンダードモデルとProモデル2機種との違いはどこにあるのかというと、1つはカメラだ。

Pixel 10 Pro(左)とPixel 10 Pro XL(右)のディスプレイ比較。前者は6.3インチ、後者は6.8インチと、サイズには明確な違いがあることが分かる

3機種はともに広角・超広角・光学5倍ズーム相当の望遠カメラという3眼構成で、「Pixel 9」では2眼だったスタンダードモデルも、Pixel 10では3眼に進化しているのだが、その性能には大きな違いがある。

実際、Pixel 10は広角カメラが4800万画素/F値1.70、超広角カメラが1300万画素/F値2.2、望遠カメラが1080万画素/F値3.1であるのに対し、Proモデルの2機種は広角カメラが5000万画素/F値1.68、超広角カメラが4800万画素/F値1.7、望遠カメラが4800万画素/F値2.8。いずれのカメラもProシリーズの方が性能が高い。

Pixel 10(左)とPixel 10 Pro(右)のカメラ。性能に違いはあるが、Pixel 10にも望遠カメラが搭載され、全モデルが3眼構成となっている

とりわけ性能の違いが大きく出ているのが望遠カメラで、デジタルズームも含めればPixel 10は最大で20倍だが、Pixel 10 Pro/Pro XLは最大で100倍までのズームが可能だ。無論、性能が高いとはいえ100倍ものデジタルズームでは撮影した写真が粗くなってしまうのだが、それをカバーする機能としてPixel 10 Pro/Pro XLには「超解像ズームPro」という新機能が用意されている。

これは生成AIの技術、より具体的に言えば画像にノイズを付加する過程を学習させることで、元の画像を作り出せるようにする「拡散モデル」を採用し、高倍率ズームの粗い写真を鮮明にしてくれるもの。被写体によっては100倍ズームであっても、かなり綺麗で鮮明な写真に仕上げてくれるのだが、生成AIを活用した仕組みなので人物には適用されないほか、被写体によっては再現度が低い場合がある点に注意が必要だろう。

そもそも、超解像ズームProを用いて生成AIを用いた写真が写真なのか?という議論もあるだろう。それだけに超解像ズームProは、正確性のため人物には適用されないようになっているほか、Pixel 10シリーズはC2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity)に対応し、写真の出所や来歴を示し、AIによる生成がなされているかどうかなども確認できるようになっている。

一方で生成AI技術を用いながらも、よりよい写真を自ら撮影できる新機能も用意されており、それが「カメラコーチ」となる。これは、被写体にカメラをかざして右上のカメラボタンを押すと呼び出せるもので、被写体をよりよく撮影できる複数の方法を提案してくれる。

その中から1つを選ぶと、被写体やカメラの位置などを調整する指示が現れ、それら指示に従って撮影するとベストショットが撮影できる。提案の中には特定の被写体をアップで撮影するなど、撮影する側が想像しない提案をしてくる場合もあるのだが、それらも試してみればさまざまなバリエーションの撮影ができるだけに、楽しい機能といえる。

スタンダードモデルとProモデルの大きな違いとして、RAMの容量も挙げられる。Pixel 10は12GBで、Pixel 10 Pro/Pro XLはいずれも16GB。Pixelシリーズが力を入れるAI関連の機能をデバイス上で処理するにはRAMの容量を多く消費するので、RAM容量が多いProモデルの2機種の方がAI関連機能では有利に働くわけだ。

とはいえ、Pixel 10シリーズで提供されるAI関連の新機能の中で、Proモデルのみで利用できる機能は超解像ズームProなど、一部に限られている。Pixel 10シリーズは共にGoogleが開発した最新のチップセット「Tensor G5」を搭載しており、多くのAI関連新機能は全ての機種で利用できるようだ。

実際、デバイス上のAI処理を活用した新機能の中で、借用中に使用できた「マジックサジェスト」は、Pixel 10 Pro/Pro XLだけでなくPixel 10でも利用できることを確認している。「マイボイス通訳」などオンデバイスAIを利用した他の機能も、全てのPixel 10シリーズに対応するとされており、少なくとも現時点でRAMの違いがAI関連機能の利用に大きな影響を与えるわけではないようだ。

加えて、「Gemini Live」など従来Pixelシリーズで提供されていたAI関連機能の多くも、Pixel 10シリーズで共通して利用可能となっているし、「NotebookLM」など新たに追加されたAI関連の機能やアプリケーションも、クラウドを用いるため機種を問わずに利用できる。そうしたことから少なくとも現時点では、RAMの容量がAI関連機能の決定的な違いとなっていない感がある。

また、「Qi2」規格に対応した「Pixelsnap」も、Pixel 10シリーズ全機種に対応していることから、Pixel 10とPixel 10 Proの機能差は意外に小さいと感じてしまう。それが製品価格にも少なからず影響を与えており、というのも日本で販売されるPixel 10とPixel 10 Proは、価格やストレージで大きく差が付けられているのだ。

実際、Pixel 10はストレージが128GBから256GBで、価格は12万8,900円から14万3,900円。一方でPixel 10 Proはストレージが256GBから512GBで、価格は17万4,900円から19万4,900円。Pixel 10 Pro XLもストレージが256GBと512GBで、価格は19万2,900円から21万2,900円となっており、スタンダードモデルとProシリーズの価格差がかなり大きくなっている。

これをPixel 9シリーズと比べた場合、同じストレージ容量のモデルでいえば価格は変わっていないのだが、日本ではProモデル2機種で128GBモデルが投入されなくなったことで、Pixel 10 Pro/Pro XLの最低価格が上がっているのだ。このことは、リーズナブルな下位モデルのPixel 10と、性能が高い上位モデルのPixel 10 Pro/Pro XLの差を価格で明確にしたいというGoogleの意図を示しているだろう。

ただ裏を返すと、望遠カメラの搭載で機能面での差がより少なくなったことで、Pixel 9シリーズ以上にPixel 10 Proを選ぶ動機付けが弱くなってしまった感もある。ただ、ハイエンドモデルでは6.5インチ超の大画面モデルが一般的となる中にあって、日本ではニーズが根強い比較的コンパクトなサイズ感のハイエンドモデルとなるPixel 10 Proは貴重な存在でもある。それだけに存在感の低下が、今後のラインアップに影響を与える可能性が気がかりだ。

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