公開日 2025/04/15 22:01

NHKのネット配信、「必須業務化」でどう変わる? ネット受信料徴収対象になるケースとは?

NHKが説明会を開催
編集部 : 伴 修二郎
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NHKは、ネット配信サービス「NHKプラス」について改めてのサービス概要と今後の注目コンテンツの紹介、および2025年10月から適用される「ネット必須業務化」の概要について解説するメディア説明会を開催した。本稿ではその模様をレポートする。

NHKメディア説明会のようす

サービス開始約5年経過のNHKプラス。ID登録数は591.6万まで推移

NHKプラスは、総合テレビとEテレの番組を地上波放送と同時にインターネットでも視聴でき、加えて本放送から1週間までは見逃し配信視聴もできる配信サービス。受信契約のある世帯の方であれば別途の契約や支払いを必要とせず、スマートフォンやPC、一部のテレビで視聴できる。

メディア総局デジタルセンター副部長( NHKプラス編集長)の鈴木章雄氏は、「プラスという名称からお金がかかるサービスと思われて問い合わせも受けるが、そもそも受信契約のある世帯の方は追加負担の必要はない」と強調する。

メディア総局デジタルセンター副部長( NHKプラス編集長)の鈴木 章雄氏

NHKプラスの利用方法は、専用ページからメールアドレスを入力し、その後に届く「ご利用手続きメール」のリンクをクリックしてIDとパスワードを設定。そして受信契約者の氏名・住所を入力(お客様番号は不要)を入力すると、入力した住所と受信契約の照合が取れ次第、登録完了を知らせるはがきが届くという流れとなっている。

なお、受信契約の照合中であってもサービス自体の利用は可能。また、現在のNHKプラスは1つのIDで5台まで見ることができることに加え、自身の家族で共有することもでき、再生速度は0.75倍から2倍まで設定できる。

NHKは2024年度第3四半期末(12月末)の時点で、受信契約総数が4,077万件、そのうちNHKプラスのID登録数は591.6万にまで登っており、およそ14〜15%の受信契約者がNHKプラスを利用していると説明。なお、この登録数は受信契約照合中のものはカウントしておらず、照合の紐づけまで完了した数であるという。

NHKプラスのID登録の概況

具体的なID登録の概況として、2020年の3月に試行的な配信をスタートし、同年4月から本格的な配信を開始。2021年度末で約243万登録、22年度末で約373万回登録、そして一昨年度末で約504万登録を推移し、現在は既に600万登録を超えている状況ではあると明かした。

続いてNHKプラスの機能面の概要として、総合テレビとEテレの放送同時視聴に加えて、放送中に少し巻き戻して視聴できる「追いかけ再生」にも対応する。

2021年3月からは地方向け放送番組の「見逃し配信」を実施し、順次放送地域も拡大。ブロックごとに地方向け番組をまとめる「ご当地プラス」も用意し、住まいの地域以外の他の地域の番組も視聴できる。

さらに全国放送の番組を含め見逃し配信では、「#人気の番組」「#朝ドラあんぱん」などプレイリストという形で番組をリストにまとめたサービスを展開。世間の話題などに応じて種類や並び順を、日毎にNHKプラス編集部員が編成しているという。

また、毎朝7時台に放送している「#おはよう日本 特集」や、大谷翔平選手をはじめとする日本人のMLB選手の活躍をチェックできる「#厳選! MLB 日本選手 活躍」など、番組の特定の部分のみ抽出した部分をまとめて視聴が可能。鈴木氏は、「各テーマごとに(番組を)並べて観てもらうことで、色んな番組に出会っていただくということを狙いとしている」と語った。

各テーマごとに番組の一部をピックアップ

そのほかコンテンツの面では、3月31日(月)より放送スタートした連続テレビ小説「あんぱん」が、これまでNHKプラスで配信した歴代連続テレビ小説・大河ドラマ含む全ドラマの中で最多視聴数となる76.1万UB(ユニーク・ブラウザ)を記録したことをアピール。同ドラマの演者がNHKプラスでの視聴を訴求するオリジナルPR動画も公開している。

3月31日(月)より放送スタートした連続テレビ小説「あんぱん」が好調

また、GW期間の大型連休中の配信・音楽番組のおすすめとして、Mrs.GREEN APPLEやBE:FIRSTの特集番組、タモリとノーベル賞科学者・山中伸弥氏のW司会で届けられるNHKスペシャル「人体」の最新シリーズ、新プロジェクトXの特別編「H3ロケット 宇宙への激闘 〜革命エンジンに挑んだ技術者たち〜」などをアピールした。

NHKプラスの今後の課題について鈴木氏は、「(視聴)デバイスを増やすことであったり、テレビ向けアプリでの同時視聴の実現(現時点でテレビ向けアプリは見逃し配信のみ対応)などは前向きに検討はしているが、(具体的に)いつリリースできるかというのはまだこれから」とコメントした。

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大型連休中のおすすめ配信・音楽番組も紹介

ネット受信料の徴収対象になるケースは?「誤受信防止」方法は?

2025年10月から適用される「ネット必須業務化」の概要について、インターネット必須業務化事務局 事務局長の山崎英一氏が登壇し、説明。

NHKの番組のインターネット配信については、2024年5月に改正放送法が成立。現在は “任意業務” であるNHKのインターネット活用業務が2025年10月から “必須業務化” され、テレビを持っていない人でもスマートフォンやPCのみで受信契約を結べるようになる。

インターネット必須業務化事務局 事務局長の山崎 英一氏

ネットでの必須業務としてNHKが挙げるのは、「放送番組の同時配信」「放送番組の見逃し(聴き逃し)配信」「番組関連情報の配信」の3点。なお、見逃し配信期間は1週間で、その期間を超えるものは任意的配信として実施するのこと。

番組関連情報については、主に6分野(報道・防災/大型スポーツ大会/教育/医療・健康/福祉/ラジオ)の国内放送番組関連情報、および国際放送番組関連情報を予定している。

ネット必須業務化の概要

そして、ネット活用業務の必須業務化については「放送経由でも、ネット経由でも、同等の、変わらない、同一の価値、同一の受益をもたらすこと」「ネット経由でのみ受信している場合にも、放送経由で受信している場合と同様に、相応の費用負担をお願いすること」がNHKの基本的な考えであると説明した。

配信はアプリとブラウザでの提供を予定。それぞれ最適化してサービス提供を行うことで、デバイスに関わらず放送と同一の情報内容・価値が担保されることを目指すとのこと。PC向けのWEBブラウザとスマートフォン(タブレット)向けアプリに加えて、コネクテッドテレビ(スマートテレビ)については専用のアプリを提供することで視聴できるようにする。

デバイスやブラウザ・アプリごとに最適化を図る

NHKのネット業務は現在、国内向けに5つ(NHKプラス/NHKニュース・防災/NHK for School/NHKラジオらじる★らじる/NHKゴガク語学講座)と、国際向けに1つ(NHK WORLDJAPAN)のアプリを提供中。必須業務化される10月以降に向けてそれぞれの後継アプリを開発中で、当面の間は現行アプリと同じ構成で提供する予定だとのこと。

この、10月以降のアプリについては、フルサービス(番組全編)の番組同時・見逃し配信を行う「『番組配信』主軸スマホアプリ」、正確な日々の報道や詳しい気象・災害情報などを提供する「『報道・防災』主軸スマホアプリ」などを用意する予定。

また、現行の「NHK for School」の後継となる「『教育』主軸スマホアプリ」、ラジオ番組の同時・聴き逃し配信を提供する「『ラジオ』主軸スマホアプリ」、ラジオの語学番組関連の情報を提供する「『語学』スマホアプリ」、そして国際放送の同時・見逃し配信を提供する「『国際』スマホアプリ」も用意する予定。なお、受信料については前3種が対象、後3種が対象外となる。

現在のNHKプラスについては、「『番組配信』主軸スマホアプリ」が現時点で後継アプリにあたるとのことで、加えて「報道・防災」主軸スマホアプリがフラグシップアプリの位置づけになるとのこと。また、コネクテットテレビについては、10月以降は現在未対応の同時配信についても専用アプリで実現すべく、現在開発を進めている段階とした。

必須業務化以降のアプリ構成の想定

山崎氏は、すでにNHKプラスに登録、使用しているユーザーに向けては、「10月以降の新しいサービスについてもよりスムーズにお使いいただけるよう、丁寧にご案内する」と説明。ただし、新アプリのダウンロードが必要となるか、または現行アプリのアップロード対応となるかなどの詳細は現時点では検討中の段階であると言葉を続けた。

加えて、提供内容については基本現行の6つのアプリを引き継いだものになる予定としながら、上述のテレビ向けアプリのような機能強化を図る可能性もあるとコメント。NHKプラスという名称変更の有無についても現在検討中の段階であると留めた。

またNHKは昨年10月、「スマホやPCを持っているだけで受信料を徴収されるようになるのではないか?」という心配の声に対し、ウェブブラウザやアプリで最初に「ご利用動向の確認」メッセージが表示され、案内項目をチェックした後に「同意して利用する」をクリック/タップした人を受信契約の対象にする「誤受信防止措置」を用意することを発表している。

この誤受信防止措置については、「番組配信」主軸スマホアプリ、「報道・防災」主軸スマホアプリ、「教育」主軸スマホアプリの3種のアプリが適用対象となり、最初にアプリを立ち上げた際に上記の同意を促す仕組みになる予定とのこと。そのためアプリのダウンロードのみで受信料徴収の対象となるようなことにはならないと説明した。

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