公開日 2015/01/10 13:24

【CES】オーディシー、音声だけを抽出して明瞭にする新技術「Vocal Boost」

デモを体験。音声部分だけ明瞭度が向上
AV REVIEW編集部:阿部邦弘
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オーディシーラボラトリーズ(以下、オーディシー)は、音声の明瞭度を向上させる新技術「Vocal Boost」を開発。LVCC会場北に位置するWestgate Las Vegasのプライベートブースにてデモを行った。

オーディシーラボラトリーズのプライベートブース

オーディシーは、音場補正技術「MultEQ」をコア技術とする企業で、そのノウハウと技術はデノンやマランツなどといったAVアンプはもちろん、一部の高級車やスマートフォン、そして近年国内でも数を増やしているIMAXデジタルシアターの音場補正としても使われている。

さて、今回発表された「Vocal Boost」は、音声だけを抽出し、人間の耳に聞こえやすいように補正する技術である。主に2つのステップ (1)ボーカル領域の解析と(2)イコライジングから構成されている。前段では、周波数領域処理、時間領域処理、そして音声パターン分析を行う。音声か否かを判断した後、明瞭度を高めるため、特定部分のブーストとカットをリアルタイムで行う仕組みだ。

今回発表された新技術「Vocal Boost」

デモでは、一般的なテレビ(アンダースピーカータイプ)を使い、音楽と映画コンテンツでVocal Boostをオン・オフしてもらった。オフの状態でコンテンツを再生すると、薄型テレビにありがちな、非常にこもった、聞き取りづらい台詞が流れてくる。お世辞にもこの音で音楽や映画を聞きたいとは思わない。

続いて、まず音楽コンテンツでVocal Boostをオンにする。女性歌手のボーカルが明瞭になっただけでなく、テレビのスピーカーの位置が変わったのかと感じるほど音場が上方向に広がって聞こえる。

Vocal Boostのデモの様子。音楽コンテンツの再生では、セリフの明瞭度が向上。テレビのスピーカーの位置も変わったように感じた

次に映画コンテンツは、あえて台詞とスコアが混在するシークエンスを再生。音声か否かがきちんと判別されてるかを見るため、Vocal Boostの効き具合を可視化したウィンドウを映画コンテンツの脇に置いてもらう。すると、確かに台詞が入る箇所は音声がブーストされ、スコアのみの箇所はブーストが抑えられていることが分かった。しかもそのブーストは急激にオン・オフするものではなく、あくまで自然に聞こえるよう、徐々に効果を強弱する仕組みになっているという。

Vocal Boostを可視化したのが右側のウィンドウ。セリフを検知し、ブーストが上がり始めているのが分かる

一方、セリフが無くスコア(背景音楽)だけの状態では、ブーストが徐々に弱まっていく


Vocal Boostの開発用デモアプリ。現在、同技術は実装を含めテレビやスマートフォンメーカーなどと協議中という
またVocal Boostの他に、現在iOSで展開されているアプリ「Audyssey Music Player」で使われている「ExpertFit」の技術デモも行われた。Audyssey Music Playerは、その名の通り音楽再生ソフト(無料・アプリ内課金有)なのだが、他のソフトとの違いは、ただ音楽を再生するだけでなく、試聴に使うイヤホン/ヘッドホン、Bluetoothスピーカーの各モデルに最適な補正プロファイルを組み合わせることができる点だ。ユーザーはアプリの立ち上げと共に、自分の使用するイヤホンのブランド・型番をクラウドデータベースから選択。あとはプロファイルがダウンロードされ各モデルに合わせて補正されたサウンドを楽しむことができる(各モデルのプロファイルは有料)。現在用意されているイヤホン/ヘッドホンのプロファイル数は80ブランド350アイテム、Bluetoothスピーカーは25アイテムを揃えるという。

iOSアプリ・Audyssey Music Playerで使われている「ExpertFit」

Audyssey Music Playerのアプリ画面。プロファイルが用意されているイヤホン・ヘッドホンが写真付きで表示される

さてこのアプリを支える「ExpertFit」。基準となるリファレンスを聞いたところ、マスタリングエンジニアが実際に作業する音楽スタジオでキャリブレーションしたデータが使われているのだという。それを元に、モデルごとに測定した特性とリファレンスの差分を補正し、1モデルずつプロファイル化してクラウドデータベースに蓄積している。

ヘッドホン、そしてBluetoothスピーカーでその効果を試してみると、音の違いに驚く。特に今回試聴したBluetoothスピーカーでは、本アプリを使うことによる音質向上の効果が大きいように感じた。なお、350アイテムといえど、イヤホン/ヘッドホンの総数には遠く及ばない。所有するモデルのプロファイルが無かった、という場合にはアプリで直接リクエストを送ることもできるので、一度試してみるといいだろう。

取材に協力頂いたオーディシーラボラトリーズ設立者及びCEO/CTOを務めるクリス・キリアカキス氏(写真右)と同日本代表の山中幹大氏(写真左)

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