公開日 2025/09/12 06:30

劇場版「JAZZ NOT ONLY JAZZ」、Dolby Atmos制作現場に潜入。映画館ならではの臨場感を徹底追求

角川大映スタジオにて制作
筑井真奈
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本日9月12日より、Dolby Atmos先行上映がスタートする劇場版『JAZZ NOT ONLY JAZZ』。今年3月に、角川大映スタジオにて制作されたその “映画館向け” の音作りの現場にお邪魔させてもらった。

9月12日よりDolby Atmos先行上映、19日より正式上映がスタートする劇場版「JAZZ NOT ONLY JAZZ」

昨年6月にNHKホールで開催された「JAZZ NOT ONLY JAZZ」は、若手ジャズドラマーとして今最も旬なアーティスト、石若駿Septetと豪華ゲストによる夢の共演であった。現場の熱狂もさることながら、このライブの模様はイマーシブフォーマットによって録音、Live Extremeを含む高音質フォーマットにて配信され、音質クオリティの高さでも注目を集めた。

元々この作品はAuro-3Dで作られていたが、このたび映画館上映に合わせてあらたにDolby Atmos、そして5.1ch音源も制作された。映画館向けの音を作ることを「ダビングステージ」といい、Dolby Atmos向け作品は、Dolby Atmos認定スタジオで制作しなければならない決まりがある。

今回は、Dolby Atmos認定スタジオを擁する、調布市の角川大映スタジオにて「映画館向け」の音作りが制作された。

調布市にある角川大映スタジオ。『ガメラ』や『大魔神』といった数々の名作映画を生んだスタジオでもある

角川大映スタジオのダビングルームは昨年9月、Dolby Atmos対応のスタジオとして新たにリニューアルされた場所。


角川大映スタジオのDolby Atmos対応ダビングルーム

部屋の外にはDolby Atmosのプレートも掲げられている

映画館用の音楽スタジオの取材は初めてのことで、驚きがたくさん。スピーカーは耳の高さではなく、壁の上方に取り付けられている。メインスピーカーにはJBLが用いられており、JBL Professional「9310」が左右に7基×4列の28基。さらにリアに6基。スクリーンの後ろに隠れているが、フロントには左・右・センターと3本。さらにサブウーファー4基が設けられている。映画館の環境を模して作られた、まさに映画のための音を作るスタジオである。

JBLのプロ向けスピーカー「9310」が横方向に7基、4列並んで配置されている

高さ方向の再現を行うために天井にもJBLの「9310」が並ぶ

このライブのミックスを手がけるのは、レコーディングにも関わったWOWOWの蓮尾美沙希さんと沼田彰彦さん。WOWOWのスタジオである程度作り込んできてからこちらに持ち込んだというが、「低域の出方やドラムの滲みなど、いくつかさらに追い込みたいところが出てきたので、そこを微調整して臨場感をさらに追求しました」(蓮尾さん)と映画館環境に合わせた音質のこだわりについて教えてくれた。

サウンドエンジニアリングを手掛けたWOWOWの蓮尾美沙希さんと沼田彰彦さん

この音源は、もともとチャンネルベースのAuro-3Dとして作られていた。それをオブジェクトベースのDolby Atmosとして作りなおすには、単に置き換えれば良い、というものではない。もちろんイマーシブオーディオとしての体験になる以上、アーティストの演奏はもちろん、観客の歓声や拍手などもしっかり臨場感豊かに作りたい。

数十本のマイクで収録された音をどう配置(パンニング)していくか、ProTools上で細かくセッティング。セッティングしては聴き、課題を見つけてはまた調整し、という作業を5日間繰り返し、しっかり音を追い込んでいったのだという。

仕上がったばかりのDolby Atmos音源を聴かせてもらう。なにより大画面、そして音の迫力はすさましい! やはり映画館は特別な場所だ!(ここは映画館ではないけれど)。

大画面の迫力あふれるダビングステージ。画面下に大きく経過時間が表示されているのがいかにもスタジオらしい

田島貴男のクールでファンキーでロックンロールなサウンドを、全身で浴びる愉悦。天井方向からも音が聴こえてきて、まさにホールにいるかのような一体感に心が踊る。田島が観客を煽り、手拍子を求めるシーンでは思わずこちらの身体も揺れる。アイナ・ジ・エンドの「すいか」では、楽器それぞれの質感表現も見事で、石若Septetのメンバーが彼女のパフォーマンスに吸い込まれ巻き込まれてゆくさまが生き生きと再現される。

田島貴男(Original Love)のパフォーマンスに痺れる!Photo:Maho Korogi 

強烈なのは上原ひろみとドラム・石若駿、ギター・西田修大3人によるトリオ演奏。石若のちょっと緊張した表情から始まる最高潮のひととき。シンバル、スネア、それぞれのドラムの音が上方からも聴こえてきて、まさにパフォーマンスのただなかに放り込まれたかのよう。

上原ひろみのピアノもただただ圧巻。広い空間のなかに、音の塊がドカンと押し寄せてくる、それでいて解像度高く、それぞれの楽器の分離が非常によく、パフォーマンスの真髄をたっぷり味わえるのもたまらない。

本編のトリを飾った上原ひろみ Photo:Maho Korogi 

WOWOWの音声チームとしても映画館用のDolby Atmos用制作は初とのことだが、この音の完成度の高さは敬服のひとこと。この音は、“逃げ場のない”映画館で、全身で浴びるように感じとってほしい、圧倒的な体験である。

左からアイナ・ジ・エンド、上原ひろみ、大橋トリオ、田島貴男(Original Love)、 PUNPEE、堀込泰行

 

劇場版『JAZZ NOT ONLY JAZZ』

<公開日>2025年9月19日(金)より、全国公開
※9月12日(金)から全国18館の劇場で【Dolby Atmos限定先行上映】が決定
<出演>アイナ・ジ・エンド、上原ひろみ、大橋トリオ、田島貴男(Original Love) PUNPEE、堀込泰行 ※出演者50音順
<バンドメンバー>The Shun Ishiwaka Septet(Dr.石若 駿、Gt.西田修大、Gt.細井徳太郎 Ba.マーティ・ホロベック、Sax.松丸 契、Tp.山田丈造、P.渡辺翔太)

・製作・配給:WOWOW
・チケット料金:劇場窓口3,500円(税込)/ムビチケ3,200円(税込)
※Dolby Atmosは別途追加料金あり
※109シネマズプレミアム新宿は料金体系が異なる

(c)WOWOW

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