4K UHD BD『八つ墓村』、主演ショーケン、金田一は渥美清。昭和の名優が並び立つ傑作が4Kで復活
映像ソフトがVHSからDVD、Blu-rayへと進化するなか、過去の名作映画もそれぞれのパッケージで発売されてきた。そんな旧作ソフトの中から、米谷紳之介氏が特におすすめする作品をご紹介。今回お届けするのは現在発売中の『八つ墓村』(4K UHD BD)。何年経っても色褪せない名作の魅力をホームシアターで再発見しよう。
『八つ墓村 4Kデジタル修復版 4K ULTRA HD Blu-ray』
●製作:1977年/日 ●ジャンル:邦画サスペンス ●監督:野村芳太郎 ●原作:横溝正史 ●出演:萩原健一、小川眞由美、渥美清 ●本編ディスク:約151分、スコープ ●本編音声:日本語DTS-HD Master Audio 5.1ch、日本語DTS-HD Master Audio 4.0h、日本語DTS-HD Master Audio 2.0ch ●字幕:バリアフリー日本語 ●特典:オリジナル予告篇5種、ドキュメンタリー〈シネマ紀行〉、1977年劇場パンフレット縮刷版 (一部編集有り)、フォトカード(4種)
“恐怖”にフォーカスして翻案した、邦画史に残る傑作が4Kで復活
萩原健一には『ショーケン 最終章』をはじめ自伝が複数あるが、どの本でもあまり触れられてないのが1977年の主演作『八つ墓村』だ。彼が『八つ墓村』の撮影現場で共演者やスタッフと揉めたのは有名な話である。
彼にインタビューをした際もこんな話をしてくれた。
「俺がゴネているとき、渥美清大先輩が言ったんだ。『健ちゃん、その気持ちわかるよ。でも映画はみんなでつくるものだから』って。何も言えなかったね。俺も渥美先輩くらいの年になったとき、こうやって若い人に言える役者でいたいと思った」
映画公開当時、渥美清が49歳、萩原健一は27歳である。
現場ではいろいろあっても、映画は大ヒットした。ヒットの要因の一つは脚本・橋本忍、監督・野村芳太郎の『砂の器』コンビがこの映画を単なる謎解きミステリーではなく、オカルト色の濃い映画に仕上げたことだ。1970年代は『エクソシスト』や『オーメン』といったオカルト映画がブームになった時代でもある。
恐怖場面は随所に用意されている。さらし首になっても大きく目を見開く落ち武者(夏八木勲)、流行語にもなった「祟りじゃ〜」の言葉を毒づく老婆、極めつけは山�蕪wが頭に懐中電灯を巻きつけ、刀と猟銃で村人32人を惨殺するシーンだ。着物の裾を乱して猛スピードで走る姿は観終わったあとも、強烈なビジュアルイメージとして記憶に残る。
終盤、妖女の顔に変身し、鍾乳洞の中をすすり泣くような声をもらしながら、萩原健一を追う小川眞由美もホラー映画のノリである。
渥美清の説得力、ショーケンの色気…。名優たちの魅力を堪能
しかし、ぼくはこの映画の魅力も、ヒットした最大の要因も、渥美清と萩原健一を起用したキャスティングにあると思っている。
まず渥美清である。名探偵・金田一耕助といえば、石坂浩二を筆頭に、古谷一行、豊川悦司ら二枚目俳優の役どころだ。今秋公開された清水崇版『八つ墓村』の尾上松也もこの系譜にある。
しかし、原作者の横溝正史は「探偵とは狂言回しである」と語っているし、金田一耕助役も刑事コロンボを演じたピーター・フォークのような人間臭い役者が頭にあったらしい。だとすれば、渥美清はぴったりだ。
そもそも『八つ墓村』は金田一耕助シリーズの中でも毛色の変わった作品で、原作小説は事件に巻き込まれる青年(映画では萩原健一が演じた)の視点で綴られていて、映画では金田一の出番も少ない。それでも名探偵らしさをさらっと演じたのが渥美清だった。
とりわけ映画の終盤、村人たちの前で、そして弁護士事務所に場所を移して語る謎解きのくだりが素晴らしい。彼が解き明かすのは犯人とその動機だけではない。犯人と関係者の家系を遡ることで分かった、理屈を超えた戦慄の事実である。だから最後にこう言う。
「調べるのをやめました」
調査すればするほど犯人の思惑を超えた祟りや怨念の存在を認めざるを得なくなり、調査をやめたというのである。これは怖い。
映画でありながら映像ではなく、セリフで観客に情景を想像させ、感情を呼び覚ますという点では、渥美清に勝る役者はいないだろう。メリハリの効いた巧みな語り口や口跡の良さは『男はつらいよ』でおなじみだ。この静かで説得力のある言葉の力が『八つ墓村』には欠かせなかったのである。
萩原健一が演じた青年は自分の意志に反して、忌まわしい悲劇に放り込まれた被害者でもある。因習に囚われた山間の閉鎖社会では警戒され、忌避されるよそ者。つまりストレンジャーである。その孤独感は、この映画に参加した俳優・萩原健一の抱えた感情に重なって見えなくもない。もちろん、それはあくまでぼくの受け止め方であり、萩原健一の計算したうえでの演技だったかもしれない。
インタビューで、ぼくが萩原健一に『八つ墓村』が好きな作品であることを伝えると、
「ありがとう。俺も渥美大先輩のような方と仕事できたんだから、幸せだったよ。興行的には俺の映画で一番当たったし……」
そう言って照れ臭そうに笑った。
人気絶頂期のショーケンは本当にカッコよかった。危険極まりない男の色気があった。そんな時代のショーケン主演の『八つ墓村』が4Kデジタル修復版(4K Ultra HD Blu-ray)で観られるのだから、なんともめでたい。

