4K UHD BD『ファイト・クラブ』、監督のビジョンが存分に味わえる4K盤。ダークな画作りと破壊的なサウンドが見事
4K Ultra HD Blu-rayの注目タイトルをプロの評論家が画質と音質の評価チャート付きで紹介する連載企画。今回のタイトルは現在発売中の『ファイト・クラブ』。画質と音質の見どころを、大橋伸太郎氏が自宅のホームシアターで徹底的にチェックした。
『ファイト・クラブ』
(C)2026 20th Century Studios
STORY
自動車会社に勤務する独身男ジャックは、北欧家具を通信販売で買い集めることと、重症患者会をひやかして不眠症を紛らわすことが生き甲斐の孤独な青年。出張帰りの飛行機でタイラーという変わった男と知り合い帰宅すると、住まいのマンションが火災でロックアウトされているではないか。仕方なくタイラーのすみかに転がり込むと、彼は「住まわせてやるから、俺を殴ってみろ」と挑発する。いつしか殴り合いの快感に取り憑かれるジャック。一人また一人と彼らのもとに仲間が集まってくる…。
HDRで暗部階調が充実。 作り込まれたサウンドデザインも存分に味わえる
「すぐに観たほうがいいよ」故・今野雄二さんが熱心に推されたことを懐かしく思い出す。主人公のモノローグで始まる一人称視点の映画には用心したほうがいい。エイリアンの主観撮影でアッといわせたデヴィッド・フィンチャーである。映画中盤でトリックがばれるが、この頃の彼の映画には観客をたばかるあざとい面白さがあった。ブラックユーモアを滲ませた怖いスラップスティックコメディ性も、前作『ゲーム』と本作に共通する。
本作の公開は1999年。SNSなどない時代に、どうやって秘密クラブ員が増えたのか謎。ドナルド・トランプ氏が政界に出馬するのは翌年、同時多発テロは2年後のこと。本作にたちこめる閉塞感、脱出不能の階層社会、破壊集団の暴走は黙示録的である。
ブリーチバイパスした『セブン』ほどエキセントリックでないが、映像は寒々しい灰青(緑)色、鈍色で構成されている。HDRで暗部階調が充実、CH27自動車のクラッシュ、CH29公園のオブジェの暴走など随所のナイトシーンはコントラストが美しく、死と消滅の本能が闇に蠢く。所々にサブリミナル風映像の断片が埋め込まれているのにも注意。
音声はDTS-HD Master Audio。フィンチャーらしく巧妙かつ入念に作り込まれたサウンドデザインだ。CH9飛行機の爆発、CH15/19/26ファイトの骨がきしみ肉が潰れる音、CH24家電販売店の破壊、CH34タイラーとジャックの最後の対決など効果音の作る密室に閉じ込められる脳内トリップ感覚が面白い。クライマックスCH35の爆発と高層ビル倒壊が試聴室を震わす。
SPEC
●製作:1999年/米 ●ジャンル:洋画サスペンス ●監督:デヴィッド・フィンチャー ●出演:ブラッド・ピット、エドワード・ノートン ●本編ディスク:約139分、スコープ、HDR10 ●本編音声:英語DTS-HD Master Audio5.1ch、日本語DTS 5.1ch ●字幕:英語、日本語、日本語吹替用 ●特典:デヴィッド・フィンチャー監督による音声解説(英語、フランス語字幕のみ)、デヴィッド・フィンチャー監督&ブラッド・ピット&エドワード・ノートン&ヘレナ・ボナム・カーターによる音声解説、チャック・パラニューク(原作)&ジム・ウールス(脚本)による音声解説(英語、フランス語字幕のみ)、アレックス・マクダウェル&ジェフ・クローネンウェス&マイケル・カプラン&ケビン・ハウグによる音声解説(英語、フランス語字幕のみ)●同梱のBD特典:ゲーム:サウンドを自作せよ~ 聴覚への刺激「ファイト・クラブ」の音響デザイン、「オトコが選ぶ金字塔映画」受賞式とその舞台裏、メイキング映像集ほか

