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【第194回】ミヤザキタケルの気軽にホームシネマ

たった1館から100館越えの公開へ! ゲイカップルとダウン症の少年が結んだ絆と愛、そして…

公開日 2025/11/21 06:30 ミヤザキタケル
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サブスクで映画を観ることが当たり前となりつつある昨今、その豊富な作品数故に、一体何を観たら良いのか分からない。そんな風に感じたことが、あなたにもありませんか。本コラムでは、映画アドバイザーとして活躍するミヤザキタケルが水先案内人となり、選りすぐりの一本をあなたにお届け。今回は2012年公開の『チョコレートドーナツ』をご紹介します!

                   ◇

 

『チョコレートドーナツ』(2012年・アメリカ)
(配信:Amazon Prime Video / U-NEXT

『チョコレートドーナツ』Blu-ray:2,750円(税込)/DVD:1,980円(税込)
発売・販売元: ポニーキャニオン

全米の各映画祭で観客賞を多数受賞し、日本では東山紀之主演で舞台化もされた感動作。1970年代、アメリカ。シンガーになる夢を抱きながらショーダンサーとして日銭を稼ぐルディ(アラン・カミング)は、ゲイであることを隠して生きる弁護士のポール(ギャレット・ディラハント)と恋に落ちる。

その矢先、ルディのアパートの隣室に暮らすダウン症の少年マルコ(アイザック・レイヴァ)の母親が薬物所持で逮捕され、マルコは施設へ送られることに。親の愛情を受けずに育ったマルコを見捨てられないルディは、ポールと共にマルコを引き取ることにするのだが……

C2012 FAMLEEFILM,LLC

物語の舞台は1970年代。育児放棄された障がいを持った少年を、ゲイが育てたという当時の実話に着想を得て生み出された本作は、大きな感動と同時に、無知や偏見でまみれたこの世の中の現実を映し出す。

ルディとポールとマルコ。3人の生活は幸せに満ちていた。が、それを周囲が、マジョリティ側の一方的な価値観や思想が邪魔をして、台無しにしてしまう。劇中の出来事に限らず、たとえ当事者間で成立していることであっても、第三者が関与することでぶち壊しにされてしまうことがざらにある。

C2012 FAMLEEFILM,LLC

本来人を救うためにある法の恩恵にあずかることができず、見過ごされこぼれ落ちていく人が確かにいる。劇中の1970年代も、公開当時の2012年(日本公開は2014年)も、2025年の現在であっても、その道理は大きく変わっていないはず。だからこそ、作品が持つ魅力も色褪せることなく、目にする者の心を強く揺さぶり続けているのではないだろうか。

原題は『Any Day Now』。いつか訪れるであろうその日を夢見て懸命に抗った者たちの苦悩と怒りと僅かばかり得た一時の幸福が、今この時代を生きる私たちの心に大きな感動と勇気を与えてくれることでしょう。

 

C2012 FAMLEEFILM,LLC

※本稿記載の配信サービスは執筆時点のものになります。

ミヤザキタケル
1986年生まれ、長野県出身。2015年より「映画アドバイザー」として活動を始める。 宝島社sweetでの連載をはじめ、WEB、雑誌、ラジオなどで、心から推すことのできる映画を紹介。そのほか、イベント登壇、MC、映画祭審査員、BRUTUS「30 人のシネマコンシェルジュ」など、幅広く活動中。

 

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