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【第191回】ミヤザキタケルの気軽にホームシネマ

犬を飼ったら人生変わった! ジャック・ニコルソン演じるアウトな小説家に訪れる人生の転機

公開日 2025/10/31 06:30 ミヤザキタケル
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サブスクで映画を観ることが当たり前となりつつある昨今、その豊富な作品数故に、一体何を観たら良いのか分からない。そんな風に感じたことが、あなたにもありませんか。本コラムでは、映画アドバイザーとして活躍するミヤザキタケルが水先案内人となり、選りすぐりの一本をあなたにお届け。今回は1997年製作の『恋愛小説家』をご紹介します!

                   ◇

 

『恋愛小説家』(1997年・アメリカ)
(配信:Netflix / U-NEXT

『恋愛小説家』デジタル配信中/Blu-ray発売中:2,619円(税込)
権利元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/発売・販売元:ハピネット・メディアマーケティング

70回アカデミー賞にて主演男優賞と主演女優賞を受賞したヒューマン・ドラマ。多くの人の心を動かす売れっ子恋愛小説家でありながらも、実生活では潔癖症で暴言や差別発言が絶えないメルビン(ジャック・ニコルソン)。

強盗に遭ったゲイの隣人・サイモン(グレッグ・キニア)が飼う犬を仕方なく預かることになるのだが、犬と過ごす時間の中に安らぎを見出していく。そして、行きつけのレストランでウェイトレスとして働くシングルマザーのキャロル(ヘレン・ハント)に対する思いに自覚的になっていくのだが……

(C)1997 TRISTAR PICTURES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

口を開けば罵詈雑言。現代の感覚や価値観で捉えたのなら確実にアウトな人間であるが、そんな男の心が変化していく過程を目の当たりにできることに醍醐味を感じられる本作。原題は『As Good As It Gets』であり、「これ以上はない最善」もしくは「これ以上良くならない」といった意味を持つ。

金も地位もあるが、他者との色濃いつながりを一切持たないメルビン。愛する息子はいるものの、忙しない日常に疲弊気味のキャロル。アーティストとしての才覚はあるものの、災難続きで金もイマジネーションも枯渇しているサイモン。それぞれがぞれぞれに今ある現実の中で足踏みをしており、最善を尽くしてきた結果の今を、自分一人ではこれ以上良くならない今を生きていた。

が、そんな3人が関わりを持ち、他者の存在を通して自らの欠けた部分を補い合っていく。1人ではなく2人だからこそ、2人ではなく3人だからこそ切り拓くことのできる道を歩み出していく。

(C)1997 TRISTAR PICTURES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

つまりは、他者とのつながりの大切さを、人間一人にできることなどたかが知れているということを、この作品は示してくれる。邦題などからもたらされる引力によって、ラブ・ロマンスとして捉えていると大なり小なり物足りなさを感じるかもしれないが、原題において示されている要素を指針にヒューマン・ドラマとして捉えると、とても色濃い人間模様が垣間見られるに違いない。久しく見返していないという方も、これが初見だという方も、この機会に是非ご覧ください。

 

(C)1997 TRISTAR PICTURES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

※本稿記載の配信サービスは執筆時点のものになります。

ミヤザキタケル
1986年生まれ、長野県出身。2015年より「映画アドバイザー」として活動を始める。 宝島社sweetでの連載をはじめ、WEB、雑誌、ラジオなどで、心から推すことのできる映画を紹介。そのほか、イベント登壇、MC、映画祭審査員、BRUTUS「30 人のシネマコンシェルジュ」など、幅広く活動中。

 

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