『ゴジラ周年記念作品4K リマスターBOX』徹底解剖! 収録タイトルの画質・音質をチェック!
『ゴジラVSメカゴジラ』 1993年
『ゴジラ VS メカゴジラ』 (C)1993 TOHO STUDIOS, INC. TM & (C)1993 TOHO CO., LTD.
光線の色彩と力感が見事に進化。邦画初の5.1chサラウンドはよりパワフルに
本BOXで唯一の川北紘一特技監督作品。BD版で目立っていた黒浮きや、黄色が強めだったカラーバランスなどが大幅に改善され、広色域表現も相まって、見違えるほど重厚な映像に仕上がった。マッシブなラウンドフォルムの新生MGは頭部ディテールが克明になり、コントラストの改善で機体の立体感もいっそう豊かに表現されている。
CH2など整備ドックのシーンでは、整備アームやタラップの作り込みが緻密で、MGの巨大感も大いに説得力を増している。飛行メカ・ガルーダも、機体のパネル構造が克明になった。対する新造スーツのゴジラは、瞳の黄色と赤の虹彩の力強さが印象的で、同じ瞳を持つベビーゴジラの繊細な造形も今回の新たな発見だ。
CH23以降のゴジラとラドンがMGを迎え撃つクライマックスでは、飛び交う熱線・光線の色彩と力感が見事に描出される。ゴジラとラドンの「裏スーパーメカゴジラ」が放つバーニングスパイラル熱線も、強烈なインパクトを残すだろう。
そして本作、実は日本映画初の5.1chサラウンド作品。4K UHD BDでは劇場上映用の5.1ch音声が保存用の磁気テープ素材から完全復元され、DVDやBD版とは異なり音圧も高く音像も太い、驚くほどパワフルなサウンドに。
ゴジラやMGの鋭い咆哮や熱線放射、家庭劇場を揺るがす歩行の重低音、上空を旋回するラドンやガルーダ、煌びやかに響く伊福部スコアなど、その聴きどころは枚挙に暇がない。通常上映で使用された2.0chサラウンド音声とは、CH23の音楽などの細かな違いもあるので、ぜひ聴き比べも楽しんでいただきたい。
※音声は日本語DTS-HD Master Audio 5.1ch(オリジナル)
『ゴジラVSメカゴジラ』SPEC
●製作:1993年 ●監督:大河原孝夫(本編)、川北紘一(特撮)●出演:燗政宏、佐野量子ほか ●本編ディスク:108分、ビスタ、4K SDR ●本編音声:日本語DTS-HD Master Audio 5.1ch(オリジナル)、日本語リニアPCM2.0ch(オリジナル)、日本語コメンタリーDTS-HD Master Audio(ゲスト:手塚昌明 聞き手:倉敷保雄)●字幕:バリアフリー日本語
『ゴジラファイナルウォーズ』2004年
『ゴジラ ファイナル ウォーズ』 (C)2004 TOHO STUDIOS, INC. TM & (C)2004 TOHO CO., LTD.
明暗・色彩のコントラストが大幅に改善! 6.1chサラウンドは移動感と高さ表現に優れる
せっかくの「シリーズ50年の集大成」の超大作なのだが…HDテレシネマスターを使用したDVDとBDは、解像感が不足した眠たく冴えない画質だったことは否めない。
しかし今回の4Kリマスターでは、上映プリントではなくオリジナルネガに遡ってフィルムスキャンを実施。さらに本作ならではの「銀残し」処理もデジタル上で徹底再現されている。その結果、高精細化と明暗・色彩のコントラストが大幅に改善し、これまで見づらかったディテールや質感が掘り起こされ、特撮と本編を絶妙なバランスで銀残しが馴染ませた、見事な映像に仕上がった!
さらに音声は吹替版・英語版ともに6.1ch仕様で、サラウンドバックを活用したダイナミックな移動感と高さ表現がとにかく凄い。ドルビーサラウンドやDTS Neural:Xへのアップミックス再生も効果絶大なので、ぜひお試しあれ。
CH7以降、世界各地に出現する怪獣たちの造形や質感。CH10、本編×特撮の融合が見事な対エビラ戦。CH20、キース・エマーソンの勇壮な音楽と共に新・轟天号が出撃!漆黒の機体のパネルラインが克明だ。CH21、南極に轟くゴジラ復活の咆哮!
CH33、ラスボス「モンスターX」の黒と金の威圧感がマシマシに。CH34、ゴジラは猛烈に赤く眩いバーニングスパイラル熱線で、モンスターXを粉砕。勝利の雄叫びが音場を揺るがす…!
※音声は日本語吹替DTS-HD Master Audio 6.1ch(オリジナル)
『ゴジラファイナルウォーズ』SPEC
●製作:2004年 ●監督:北村龍平(本編)、浅田英一(特撮)●出演:松岡昌宏、菊川怜ほか ●本編ディスク:125分、スコープ、4K SDR ●本編音声:日本語吹替DTS-HD Master Audio 6.1ch(オリジナル)、英語リニアDTS-HD Master Audio 6.1ch(オリジナル)、日本語コメンタリーDTS-HD Master Audio(ゲスト:浅田英一 聞き手:増富竜也)●字幕:バリアフリー日本語
特典ディスク「いまだかつてない最高のクオリティで楽しめる!」
最後に、特典映像についても触れておきたい。
今回のBOXには、各作品にまつわる特典映像がそれぞれのディスクに収録されている。新規収録作品はもちろん、これまでのDVDやBDに収められていた特典映像もほぼ網羅されているのがうれしい。ポスターやチラシ、パンフレットなどを丁寧にキャプチャした静止画特典も膨大なボリュームで、作品ごとの歴史を振り返る資料としても大変に貴重だ。
個人的にうれしかったのは、『VSメカゴジラ』盤に収録された「レコーディングライブ」。伊福部昭本人が指揮するサウンドトラック録音風景を収めたドキュメンタリーで、当時はビデオやLDで発売され、後にDVD-BOX『GODZILLA FINAL BOX』の特典ディスクにも収録されていた。それが今回はHDアップコンバート&リニアPCM音声で、これまでで最高のクオリティで楽しめるのだ。
さらに開封レポートでも触れたが、『ファイナルウォーズ』盤の静止画特典には、筆者がかつて執筆した宣材「ゴジラファイナルニュース」が丸ごと収録されており、21年ぶりの“再会”に思わず快哉を叫んでしまった。
また、特典BD「秘蔵映像集」にも180分を超える貴重な映像が多数収められている。スーツアクターの中島春雄氏や薩摩剣八郎氏、平成ゴジラシリーズを支えた川北紘一監督ほか、すでに鬼籍に入られた方々の元気な姿が収められているのも感慨深い。今回が初収録の『ゴジラVSビオランテ』のプロモーション映像には、未使用カットが満載というサプライズも!さらに1979年の夏休み三本立て上映イベント「ゴジラ大全集」の予告編には、筆者が子どもの頃に祖母と旧日劇で観た思い出が甦り、目頭が熱くなったりも…。
映像も音声も、フィルムに収録された情報が余すことなく4K UHD BDに刻まれている
というわけで一気呵成にお届けしてきた「ゴジラ周年記念作品4KリマスターBOX」全6作品レビュー、お楽しみいただけただろうか。どの作品も、HDテレシネマスターから制作されたDVDやBDとは別物と言えるほどに画質が向上し、フィルムに刻まれた情報が余すところなく掘り起こされたと言って良い。
音声も、音ネガや磁気テープ素材から新たに高音質マスターが制作されているのがうれしい。特に『ゴジラ』『VSメカゴジラ』『ファイナルウォーズ』は、4ch Dolby Stereo(=2.0chサラウンド)→5.1ch Dolby SR-D→6.1ch Dolby Surround EXへと音声チャンネルが追加され、映画音響の進化も実感できる。現代のAVアンプやサウンドバーで「Dolby Surround」や「DTS Neural:X」にアップミックス再生すれば、当時の映画館を凌ぐ迫力すら味わえるだろう。
「最後のパッケージメディア」と言われるUHD BDに、映画本編はもちろん、このシリーズのために作られた膨大な映像・静止画史料までも、可能な限りのハイクオリティでアーカイブしよう…そんなディスクの作り手たちの気概が、熱く熱く伝わってきた。素晴らしいBOXの完成度に、心から拍手を贈りたい。
さて、昭和・平成・ミレニアムシリーズの4Kリマスターはついに折り返し地点。残すところあと14作品だ。今夏のTOHOシネマズ「ゴジラシアター」では『ゴジラ・モスラ・エビラ 南海の大決闘』(1966年)と『ゴジラ対メガロ』(1973年)、本BOXにも収録の『ゴジラ』(1984年)の上映がすでに決定しており、今後も続々4Kリマスター版の公開が控えているという。ならば当然、UHD BD化にも期待せずにいられない。もちろん『空の大怪獣ラドン』(1956年)や『モスラ』(1961年)、『地球防衛軍』(1957年)『海底軍艦』(1963年)など、すでに4Kリマスター版が存在する東宝特撮作品のパッケージ化も心待ちにしたいところだ。
お楽しみは、まだまだ続くのだ…!

