ゴジラ初の4Kボックス開けてみた!120インチ大画面シアターで「秘蔵映像集」に大興奮
旧作ゴジラの4Kリマスターディスクが2023年10月にリリースを開始して、2年目となる2025年。新規マスターによる6作品を収録した初のボックスセット『ゴジラ生誕70周年記念 ゴジラ周年記念作品4KリマスターBOX』が、去る6月18日に発売された。
いつもの通りこれを購入した私、松永。せっかくの4K UHDパッケージ、開封するにしても、家の50型テレビよりも大きなスクリーンを備えたお宅で、もっというとこの手のジャンルに理解、いや、全ノリしてくれる方と一緒に盛り上がりたい……。
ということで、「ホームシアターCHANNEL」のソフト連載でおなじみの “シン・イオキネマ” を擁する、 伊尾喜大祐さんの邸宅にお邪魔させていただき、ファイルウェブ編集部の岡本も同席で、「3世代ゴジラファン」勢揃いで “開封の儀” を敢行。取材中、伊尾喜さんの口から飛び出す「ある収録作品での仕事」などなど、ソフト紹介に留まらない一部始終をご覧あれ。
“ゴジラ4KBOX”開封の儀:所有欲を満たすアツい特典に感謝……
ボックスに収められた映像ディスクだけでなく、封入特典を多数用意する本製品。開封前のボックスは記事内の写真にも表れる通り、成人男性が抱えても結構なサイズ感である。「まさか他所の御宅で開けることになるとは……」と思いながらテープにカッターの刃を沿わせ、蓋をオープンできる状態に。
まず顔を出したのはディスクではない。めちゃくちゃ“熱い”ブックレット「造形で見るゴジラの 70 年」だ。100ページ、A4横開き。このブックレットの同梱がボックス外箱を巨大化させたといったところだろうか。
記事内で中身をお見せすることは残念ながら叶わないが、1954年の初代ゴジラスーツを作るうえで制作された雛形から、2023年公開『ゴジラ−1.0』の精緻なCGモデルまで。今に至るまでの国内ゴジラ造形の変遷を見るというもの。単品売りでも製品として成り立ちそうなものが、特典として付属するのだから、製品としての気合の入り方も伝わってくる。
ちなみに伊尾喜さんが選ぶ、造形面で一番好きだというゴジラは『ゴジラvsビオランテ』に登場する通称 “ビオゴジ” 。「二列の歯牙と黒目が特徴的な、動物的でシャープなフォルムにシビれました」との談。記者も好きなゴジラではあるが、造形の進化をリアルタイムで目の当たりにしているとなると、発表時のインパクトは相当なものだろう。その感覚を味わえているというのが非常に羨ましい。
そして、ボックス最上面に収められたブックレットを取り出すと現れるのが「ゴジラ 70周年記念 メカゴジラU エンブレム複製品」である。ボックスの内容が明かされた瞬間、かなりの話題を呼んだアイテムがそのまま目に飛び込んでくるのだ。これには参加者一同も思わず笑顔に。
かなりネタっぽいアイテムではあるが、映像ディスクとして収録される『メカゴジラの逆襲』に登場したメカゴジラUのスーツの腕についているオリジナルから型をとって製作したれっきとしたレプリカ。今年で公開50周年を迎える同作を祝うには、これ以上に無いメモリアルアイテムだ。
「エンブレムのケースが映像ボックスと同サイズなのが偉いし、そのケースの装丁がディスクパッケージっぽいのはテンション上がるよね」と、伊尾喜さん。そして、数あるメカゴジラの中から、若手の岡本が一番に選ぶのは「3式機龍」とのこと。というのも「問答無用でかっこいいから」。わかるなあ……。
“ゴジラ 4K BOX”開封の儀:これまでの4Kディスクとの装丁の違いに注目
そしてボックスである。特典ディスクを含めた7枚のディスクを収納可能な三方背ケースには、本作に収録される『ゴジラの逆襲』(’55年)、『ゴジラ対メカゴジラ』(’74)、『メカゴジラの逆襲』(’75)、『ゴジラ』(’84)、『ゴジラ vs メカゴジラ』(’93)、『ゴジラ ファイナルウォーズ』(’04)に登場するゴジラの姿が全面にプリントされる。「横向きで掲載される逆コ゚ジ」に対して、「逆コ゚ジといったら怖い正面の顔なのにね!」と、変なところにテンションがあがる。
製品ラインナップとしてBlu-ray版と4K UHD BD版を用意するが、購入したのはもちろん4K UHD BD版。旧作ゴジラの4K盤といえば、銀のグロス加工が施されたジャケットと、その作品におけるキーパーソンをフィーチャーしたレーベル面というのが、デザインの文法となっている。しかし、本製品封入作品においては、ジャケットは通常印刷。レーベル面は怪獣の登場するスチルを使用するなどの違いが見られる。
「いつか単品版が発売される時に、ジャケットやレーベルデザインを揃えるんじゃないかな。再発売の際には品番を変更して刷り直すことになるからね」と伊尾喜さん。いちファンの予想以上に説得力があるディスクメディアプロデューサーという立場ならではの物の見方に、編集部一同めちゃくちゃ関心しました。
“シン・イオキネマ”で観る4Kゴジラ。「買ってよかったこのボックス…」
さて、せっかく120インチものスクリーンを擁するホームシアターに来たのだからボックス収録作品を大画面で楽しみたい。でも、それぞれのお気に入りを全編流すとなると、取材ではなく「上映会」になってしまう……。そもそも御宅にお邪魔している手前、そんな長居もできない。そこで、各人が選ぶ「4Kで見たい!」というタイトルから、気になるシーンをチェックしてみることに。
■伊尾喜さんチョイス『ゴジラの逆襲』
6作の中から本作を選んだ理由として「今までのソフトが暗くて暗くて、何が映っているかわからないレベルだったから 笑」と、往年のファンが皆揃えて口にする決まり文句を披露。実際に、ご自身で購入したボックスも真っ先にこの作品からチェックしたとのことだ。
DVDとの比較試聴をしてみると、まずタイトルからフレーム揺れも無く、レンジが広くなって音楽の情報量も上がっているし、怪獣たちの鳴き声の聴こえも鋭くなっていることに一同興奮。ゴジラが初登場する海岸では、従来のメディアでは潰れてしまっていた岩肌や、スーツの質感がハッキリと出ている。
そして夜間の大阪で対峙するゴジラとアンギラスの戦闘シーンは、4Kリマスターの効果が非常に顕著。伊尾喜さんも「暗くて何も見えないと言われ続けてきた『ゴジラの逆襲』が真価を発揮するときがきた!って感じですね。映像ディテールが徹底的に掘り起こされて、見たかったものが見えている……!」と、大興奮。これぞ4Kリマスターという仕上がりに参加者全員が満足した。
■岡本チョイス『ゴジラ』('84)
つづく岡本のチョイスは、1984年公開の『ゴジラ』。「夜の新宿を始めとする襲撃シーンの明暗階調、レーザーやスーパーXが放つ光がどう調整されたのかを確認したい」とのこと。A/Vメディアの編集部員らしい選考事由、非常に立派な後輩を持ったものだ。
ディスクを再生してみると4Kリマスターにおける丁寧なレストアぶりはオープニングから顕著。DVDではエッジ部分が揺らめいていたオープニングクレジットも「打ち直したか?」ってくらい、ビシッと収まりが良い。
スーパーXがビルの影から登場するシーンも、DVDではフロントライトの照射で極端なことをいうと「何が来ているのかわからない」という感じだったが、4Kだとしっかり光の中に居るスーパーXの輪郭が確認できる。そんなスーパーXと対峙する “サイボットゴジラ” の表面ディテールも、4Kだと非常に克明。肉感的な歯茎や、カドミウム弾を打ち込まれたあと、口元からこぼれる体液のぬるぬる感、その艶めきに、編集部岡本は満面の笑み。まさにこのメディアで辿り着いた境地だろう。
ちなみに本作、伊尾喜さんにとって初めてのスクリーンで観たゴジラ最新作。「公開初日の初回を、劇中でゴジラに壊される有楽町マリオンの日劇東宝で観たもんだから、劇場内は大盛りあがりでした 笑」と、当時購入したパンフ片手にこぼれ話を披露してくれた。
■松永チョイス『ゴジラ vs メカゴジラ』
そして、松永が選ぶのは『ゴジラ vs メカゴジラ』。若手の岡本が素晴らしい理由で作品を選定していたが、こちらは純粋に「90年代産まれのキッズなので、ただ見たい……」というもの。家にゲームセンター景品の「メカゴジラ嘘発見器」が置かれていた家の産まれなのだ。そりゃシンプルに大画面で楽しみたい。
好きなタイトルゆえに、比較用のDVDの時点でまあまあ盛り上がってしまったが、4Kだとオープニングで登場するガルーダのパネルラインが、模型で言うなら「スジボリし直した」ようにくっきりである。
そして、幕張でのスーパーメカゴジラ戦、全兵装一斉射の合成カットはビーム表現の光の中に、ハッキリと作画が見える仕上がりにテンションが上がる。腹部から発射するプラズマグレネードもDVDでは「真っ白」といった感じだったが、こちらもちゃんと作画ディテールがハッキリと。従来ディスクとは見違える画作りに「高いボックスを買ってよかった……」と、一人浸りの瞬間でした。
伊尾喜さん、思わず感謝!本気が過ぎる怒涛の映像特典も要チェック!
最後に『ゴジラの逆襲』をチェックした伊尾喜さんから “おかわり” として『ゴジラ ファイナルウォーズ』をトレーにイン。 その理由については、本作が「はじめて仕事として参加したゴジラだから」とのことで、なんと、その仕事ぶりがディスクに収められているという。
『ゴジラ ファイナルウォーズ』の公開された2004年、今から21年前に伊尾喜さんが手掛けた初のゴジラ仕事とは、各劇場で頒布されていた宣伝用フリーペーパー「GODZILLA FINAL NEWS」。当時作った物は今は手元に無いとのことで、静止画特典として収められたのを見て “感激の再会” を果たしたというわけだ。「めちゃくちゃ嬉しい……!」と紹介してくれた姿が非常に印象的だった。
伊尾喜さんは、同誌内で全10問のクイズや、初代からファイナルウォーズまでの50年を振り返るコラムなどの執筆を担当。「『俺より伊尾喜さんの方が詳しいでしょう?』と、当時の宣伝プロデューサーから全幅の信頼を寄せられていたおかげで楽しく作れました!」という。
そのコラム内では “お遊び” で『妖星ゴラス』など、そのほかの東宝特撮映画も「ゴジラと同じ歴史の中で起きたこと」として紹介されており、その後のキャリアでディスク制作に携わられた「アニメ版『GODZILLA』三部作」の世界観設定のようなことを、先んじてやっていたことにシンプルに驚く。お手元にディスクがある方はぜひ熟読してほしい。
各作品の映像特典もさることながら、製品の目玉でもある特典ディスク「秘蔵映像集」だ。DVDに収録されているものの以降のメディアに収録されていない映像や、倉庫から出てきたフィルムなどを185分収録! シリーズファンの中ではまだまだ若輩に当たる記者だが、伊尾喜さんは「これ観に行ったよ!」と、「ゴジラ映画大全集 ゴジラ誕生25周年」上映の予告にエキサイト。目にするのも当時ぶりとのことで、噛みしめるように見入る姿が印象的だった。
流石に185分もあるため、そのすべてを “シン・イオキネマ” で観ることは叶わなかったが、当時を生きていなければ目にしようも無いテーマパーク映像や、本来であるなら当時のスタッフや、アーカイブ担当の方しかお目にかかれない映像がてんこ盛り。それを「面白い」と思えるか、「面白がれる」かは、もはや個人の度量・裁量によるところではあるが、こういった映像をファンが手元に残しておけるという点では非常に意義あるディスク化だと思える。
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本稿で紹介させて頂いた『ゴジラ生誕70周年記念 ゴジラ周年記念作品4KリマスターBOX』は、完全予約限定版としてリリース。実際にゴジラ・ストアや、ヨドバシカメラ、ビックカメラでは、予約締切日をもって取り扱いを終了しているが、記事執筆時点ではAmazonなど、一部ECサイトでは若干数であるが販売を実施している。家の50インチのテレビで見ても、「今までにないクオリティ」を実感できたため、購入を迷われている方はこの機を逃さないようにしていただきたい。
またファイルウェブでは後日、今回取材に協力して頂いた伊尾喜大祐さんによる収録作品一挙レビューも掲載予定。こちらも楽しみにして貰えれば幸いだ。
