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【第156回】ミヤザキタケルの気軽にホームシネマ

『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督作!河から現れた怪物vs平凡なパク一家

公開日 2025/03/07 06:30 ミヤザキタケル
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サブスクで映画を観ることが当たり前となりつつある昨今、その豊富な作品数故に、一体何を観たら良いのか分からない。そんな風に感じたことが、あなたにもありませんか。本コラムでは、映画アドバイザーとして活躍するミヤザキタケルが水先案内人となり、選りすぐりの一本をあなたにお届け。今回は2006年公開の『グエムル 漢江の怪物』をご紹介します!

『グエムル 漢江の怪物』(2006年・韓国)
(配信:U-NEXT / Hulu / DMM TV)

『グエムル 漢江の怪物』 HDエディション発売中 6,380円(税込) 発売元:ピカンテサーカス 発売協力:ディメンション 販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング

『殺人の追憶』『母なる証明』『スノーピアサー』のほか、韓国映画初となるカンヌ国際映画祭パルムドールとアカデミー賞作品賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』など、世界中で注目を集める韓国の鬼才ポン・ジュノ監督作。ソウル中心部を流れる河・漢江から、突如巨大な怪物(グエムル)が現れた。河川敷にある売店を営むパク・カンドゥ(ソン・ガンホ)は、パニックに陥って逃げ惑う人々の中から娘のヒョンソ(コ・アソン)を救い出そうとするが、怪物に連れ去られてしまう。娘がさらわれたという話を信じてくれない政府にしびれを切らしたカンドゥは、父・妹・弟と力を合わせてヒョンソの救出に向かうのだが……。

(C) 2006 Chungeorahm Film. All rights reserved.

水爆実験で飛散した放射能を浴びて誕生したゴジラのように、不法投棄された劇薬が原因で誕生したグエムル。(ゴジラほど大きくはないが)巨大な怪物の登場によって逃げ惑う人々の姿は、さながら『ゴジラ』シリーズなどのいわゆる“怪獣もの”を彷彿とさせるが、そこから繰り広げられていくドラマは一味も二味も異なるもの。家族一丸となってヒョンソを探そうとするキム一家の姿や家族のつながりをはじめ、1人不安を抱えながら健気に脱出の術を模索するヒョンソ、未知のウイルスに感染した疑惑のあるカンドゥを捉えようとする政府の思惑など、多角的に物語が展開されていく。

(C) 2006 Chungeorahm Film. All rights reserved.

また、在韓米軍が多量の毒物を下水口を通じて漢江に無断放流した実在の事件が物語のモチーフとなっており、劇中にはさまざまな風刺表現がある点も押さえておきたいところ。怪物を倒すことや娘を救い出すことだけでは収まらない、あらゆる要素が詰まった本作。CG技術などの発展が目覚ましい今日であるが、公開から19年を経ても色褪せることのない映像と面白さがそこにはある……。

(C) 2006 Chungeorahm Film. All rights reserved.
※本稿記載の配信サービスは執筆時点のものになります。

ミヤザキタケル
1986年生まれ、長野県出身。2015年より「映画アドバイザー」として活動を始める。
宝島社sweetでの連載をはじめ、WEB、雑誌、ラジオなどで、心から推すことのできる映画を紹介。そのほか、イベント登壇、MC、映画祭審査員、BRUTUS「30 人のシネマコンシェルジュ」など、幅広く活動中。

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