HOME > レビュー > 史上最も悲しいどんでん返し!亡くなった息子の遺作を歌う父親の胸揺さぶる音楽映画

【第153回】ミヤザキタケルの気軽にホームシネマ

史上最も悲しいどんでん返し!亡くなった息子の遺作を歌う父親の胸揺さぶる音楽映画

公開日 2025/02/07 06:30 ミヤザキタケル
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
サブスクで映画を観ることが当たり前となりつつある昨今、その豊富な作品数故に、一体何を観たら良いのか分からない。そんな風に感じたことが、あなたにもありませんか。本コラムでは、映画アドバイザーとして活躍するミヤザキタケルが水先案内人となり、選りすぐりの一本をあなたにお届け。今回は2014年製作の『君が生きた証』をご紹介します!

『君が生きた証』(2014年・アメリカ)
(配信:Amazon Prime Video / U-NEXT / Hulu )

『君が生きた証』DVD発売中 DVD 4,290円(税込) 発売元:株式会社ハピネットファントム・スタジオ 販売元:ハピネット・メディアマーケティング

俳優として『ファーゴ』『ブギーナイツ』などに出演する名優ウィリアム・H・メイシーがメガホンを取り、2014年のサンダンス映画祭にてクロージング作品に選出された人間ドラマ。敏腕広告宣伝マンとして働いていたサム(ビリー・クラダップ)は、大学で起きた銃乱射事件により息子を失ってしまう。それから2年後、会社を辞めて荒んだ暮らしをしていた中、息子の遺品である自作曲の歌詞とデモCDを手にするサム。息子が何を考えていたのかを知るため、遺品のギターで息子の楽曲を演奏し始めライブバーで披露するのだが、その楽曲に感銘を受けた青年クエンティン(アントン・イェルチン)の情熱に押し切られ2人はバンドを組むことに……。

(C) 2014 Rudderless Productions LLC. All Rights Reserved.

人間ドラマ、音楽もの、家族ものなど、本作の特徴を表現する際に用いる要素や表現はさまざまあるのだが、その中の一つに「どんでん返し」がある。だが、数多くの作品で目にするそれとは大きく異なり、そこに喜びや恐怖などを源泉とした興奮は生じない。本作で起きるどんでん返しは、きっと目にする者の心をキツく締め付け、悲しい気持ちを抱かせる(ネタバレになるため細部には触れません)。そんな大きなギミックを宿しつつも、サムとクエンティンの友情とも擬似親子関係とも取れる絶妙な関係性が心地良く、魅力的な楽曲の数々が物語を彩り、息子の死に関して直視することを避けてきたサムの葛藤など、他にも見どころが盛りだくさん。

(C) 2014 Rudderless Productions LLC. All Rights Reserved.

そして、全てを把握した上でもう一度最初から作品を目にしたのなら、また異なる楽しみ方ができるに違いない。明確な答えを導き出すことが困難なテーマを扱っている本作は、さまざまな問いをあなたの心に投げかけてくれることでしょう。

(C) 2014 Rudderless Productions LLC. All Rights Reserved.
※本稿記載の配信サービスは執筆時点のものになります。

ミヤザキタケル
1986年生まれ、長野県出身。2015年より「映画アドバイザー」として活動を始める。WOWOW・宝島社sweet・DOKUSOマガジンでの連載のほか、ラジオ・配信番組・雑誌などで映画を紹介。イベント登壇、MC、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジュ」など幅広く活動中。

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE