【第150回】ミヤザキタケルの気軽にホームシネマ
綾野剛が巡り合う、どん詰まりの閉塞感。池脇千鶴、菅田将暉の名演も光る「家族の物語」
サブスクで映画を観ることが当たり前となりつつある昨今、その豊富な作品数故に、一体何を観たら良いのか分からない。そんな風に感じたことが、あなたにもありませんか。本コラムでは、映画アドバイザーとして活躍するミヤザキタケルが水先案内人となり、選りすぐりの一本をあなたにお届け。今回は2014年公開の『そこのみにて光輝く』をご紹介します!
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『そこのみにて光輝く』(2014年・日本)
(配信: U-NEXT / hulu)
『オーバーフェンス』『きみの鳥はうたえる』『夜、鳥たちが啼く』など、数々の作品が映画化されている佐藤泰志原作の長編小説を、『きみはいい子』『ぼくが生きてる、ふたつの世界』などで知られる呉美保監督が映画化。ある出来事を機に仕事を辞め、当てもなく日々を過ごしていた達夫(綾野剛)。パチンコ屋で知り合った無邪気な青年・拓児(菅田将暉)に家へ招かれると、そこには寝たきりの父と、父の世話をする母と、姉の千夏(池脇千鶴)がいた。互いに心惹かれ、徐々に歩み寄っていく達夫と千夏であったが……。
何かしらのネガティブな出来事に直面し、心が苦しくて、身動きが取れなくなってしまった経験があなたにはあるだろうか。そして、そんなときに芽生えた他者とのつながりが救いになった経験があなたにはあるだろうか。達夫の疲弊した心に寄り添うことができたのなら、つるむ相手がいることで得られる一時の安らぎ、縋る相手がいることで得られる心の癒しなど、他者とのつながりがあるからこそ人は生きていけるのだと、拓児と千夏との出会いによって変化していく達夫の姿を通して強く実感させられる。同時に、拓児と千夏の家族や、千夏と関係を持つ中島(高橋和也)の存在を通して、他者とのつながりが枷になり得ることも本作は描いていく。
そこのみにて光り輝くということは、裏を返せば、そこ以外では光り輝けないということ。それをどう受け止めるかはあなた次第であるが、たとえ限られた光であったとしても、光を見出せていること自体に救いはある。あてのない暗闇ばかりが続く人生であっても、ある一点に光が存在していることを認識できていれば、人は生きていけるのではないだろうか。ラストシーン、あなたの心は一体何を感じることになるでしょう。
(C)2014 「そこのみにて光輝く」製作委員会
※本稿記載の配信サービスは執筆時点のものになります。
『そこのみにて光輝く』(2014年・日本)
(配信: U-NEXT / hulu)
『オーバーフェンス』『きみの鳥はうたえる』『夜、鳥たちが啼く』など、数々の作品が映画化されている佐藤泰志原作の長編小説を、『きみはいい子』『ぼくが生きてる、ふたつの世界』などで知られる呉美保監督が映画化。ある出来事を機に仕事を辞め、当てもなく日々を過ごしていた達夫(綾野剛)。パチンコ屋で知り合った無邪気な青年・拓児(菅田将暉)に家へ招かれると、そこには寝たきりの父と、父の世話をする母と、姉の千夏(池脇千鶴)がいた。互いに心惹かれ、徐々に歩み寄っていく達夫と千夏であったが……。
何かしらのネガティブな出来事に直面し、心が苦しくて、身動きが取れなくなってしまった経験があなたにはあるだろうか。そして、そんなときに芽生えた他者とのつながりが救いになった経験があなたにはあるだろうか。達夫の疲弊した心に寄り添うことができたのなら、つるむ相手がいることで得られる一時の安らぎ、縋る相手がいることで得られる心の癒しなど、他者とのつながりがあるからこそ人は生きていけるのだと、拓児と千夏との出会いによって変化していく達夫の姿を通して強く実感させられる。同時に、拓児と千夏の家族や、千夏と関係を持つ中島(高橋和也)の存在を通して、他者とのつながりが枷になり得ることも本作は描いていく。
そこのみにて光り輝くということは、裏を返せば、そこ以外では光り輝けないということ。それをどう受け止めるかはあなた次第であるが、たとえ限られた光であったとしても、光を見出せていること自体に救いはある。あてのない暗闇ばかりが続く人生であっても、ある一点に光が存在していることを認識できていれば、人は生きていけるのではないだろうか。ラストシーン、あなたの心は一体何を感じることになるでしょう。
(C)2014 「そこのみにて光輝く」製作委員会
※本稿記載の配信サービスは執筆時点のものになります。
ミヤザキタケル 1986年生まれ、長野県出身。2015年より「映画アドバイザー」として活動を始める。 WOWOW・宝島社sweet・DOKUSOマガジンでの連載のほか、ラジオ・配信番組・雑誌などで映画を紹介。イベント登壇、MC、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジュ」など幅広く活動中。 |