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“総合音楽鑑賞ソフト”Roonの「いま」と「これから」を、創業者とのやりとりから紐解く

公開日 2020/03/02 06:40 逆木 一
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――Roonが目指す音楽体験とはどのようなものですか?

Dulai Roonがどのように始まったのか、いちばん根源的な話をしましょう。1996年頃、私はニューヨークに住んでいました。私とルームメイトは約200枚のCDを持っていました。私たちは確か21歳でした。私はパイオニアの6枚対応のCDチェンジャーを使っていました。一方で、ルームメイトはひとつのトレイに200枚のCDを収納できるソニーのCDチェンジャーを使っていました。この製品はブックレットも同時に収納・閲覧できる仕組みもあり、CDを便利に聴けると同時に表裏のアートワークも楽しめる、当時最高のユーザーインターフェースでした。

Roonがスタートするきっかけとなった出来事を話すDulai氏

その後、私はルームメイトと別れることになり、その際にCDのリッピングを行うことになりました。しかし、当時はコンピュータの性能が低く、容量4GBのHDDでさえ非常に高価という時代でした。さまざまな手を尽くしてどうにかCDのリッピングを(96kbpsのMP3で!)終えましたが、今度はデータを再生するためのソフトがなかったので、2 - 3ヶ月かけて、非常にシンプルな再生ソフトを自作しました。

私はモニターと、再生プログラムと、マウスをセットアップして、彼女に見せました。彼女は私を見て、こう言いました。

「冗談でしょ? リモコンはどこ? CDはどこ? 私は音楽を扱うのにコンピューターなんて使いたくないわ!」

1998年のことでした。21年経ったいまでも、私は「PCで音楽を扱うこと」を改善すべく努力しています。

年を経て音楽やアーティストについてさまざまな知識を得るにつれ、それらの情報にはより上質な音楽体験をもたらす力があると感じました。CDを再生する際に、ブックレットでアーティストをはじめとするさまざまな情報を「読む」ことや「繋がりを見出す」ことが、私にとって大切な音楽体験でした。10代の頃は、音楽雑誌を読むのが楽しみでした。

やがてPCやディスプレイの性能が向上し、ユーザーインターフェースが改善されたことで、私はそういった情報を再生ソフトに取り込み始めました。



優れたCDチェンジャーの記憶、「PCで音楽を扱うこと」に対する彼女の容赦ないひと言。Danny氏の語るRoonの(精神的)誕生秘話はなかなか刺激的だった。そこに、さまざまな情報がより良い音楽体験をもたらすというアイデアが加わり、「音楽データベースの情報を利用してローカル・クラウドを問わずライブラリの音源を統合し、音楽の繋がりを可視化する」Roonへと繋がったというわけだ。

現在でも、まさに1998年に放たれたひと言と同じ想いを抱いているオーディオファン/音楽ファンも相当な数がいるだろう。そしてそういった人にこそ、Roonを使ってみてもらいたい。

ちなみに、筆者はRoonの強力無比なライブラリ機能が実現する音楽体験を「音楽の海」と表現している。Roonは個々の音楽のより深い知見を与えると同時に、新たな音楽への出会いをもたらす、つまり「広さと深さ」の両方を持っているからだ。このことを二人に話すと、非常に受けが良かったので、これからも安心して「音楽の海」という表現を使おうと思う。

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