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<山本敦のAV進化論 第172回>

5Gの本格商用化が間近。オーディオビジュアルの世界にどんな新製品や新サービスが登場する?

公開日 2019/01/25 06:30 山本 敦
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例えば大容量のデータを一度に送れるスピードが速くなれば、4K/8Kのビデオストリーミングサービスがストレスなく楽しめるようになる。VR/ARの技術を活かしたエンターテインメントも同様だ。

それはコンシューマー向けサービスの領域に限らない。例えば映画館に配信できるコンテンツの多様化にも結びつくだろう。美術館や観光地など商業施設でのバーチャルガイドにVR/ARの技術が活きる場面も増えそうだ。スポーツや音楽ライブの臨場感豊かなバーチャル観戦・鑑賞など、新たなエンターテインメントが切り拓かれる期待もある。

無線通信の低遅延については、自動車の自動運転制御や高度運転アシストの技術にも深く関わってくる。自動車は「コネクテッドカー」という掛け声のもと、通信機能が今後大いにクローズアップされていく。3GPPでは車 - 車間、車と信号機などの交通インフラ、そして車と歩行者の間を、携帯電話の技術をベースにした通信でダイレクトにつなぎ、自動車の安全運転を支援する技術を「セルラーV2X(Vehicle to Everything)」として規格化した。CES 2019ではクアルコムがパナソニックとフォードと一緒に進める実証実験のデモンストレーションを紹介した。

パナソニックは米コロラド州デンバー市に展開するスマートシティ「CityNow」で、クアルコムとフォードとパートナーシップを組んでコネクテッドカーの実証実験をはじめている

クアルコムもCESのブースでセルラーV2Xの実証実験を公開。自動車と交通インフラ(信号機)の直接連携をユースケースとして示した

医療現場では、数ミリ秒単位の遅延改善が遠隔手術の技術向上に大きく貢献するかもしれない。さらに現在は有線ベースのネットワークによって自動化されている工場施設のロボットや計測機器も、5Gの高速通信・超低遅延を特徴とする無線環境が導入されたら生産効率を高められる。

5Gの商用化がスタートしても、例えばテレビやHiFiオーディオコンポーネントなど据え置き型のオーディオ・ビジュアル機器については、当面は現在と同じようにWi-Fiを使ったネットワーク接続が主流になるだろう。ただ、固定ネットワークをまるごと5Gに置き換え、家庭内の様々なスマート家電機器をつなぐことで、高速で安定した通信品質を確保するという提案も実際にあるようだ。

光回線やケーブルテレビのインターネットサービスのように開通工事の手間が要らず、5G/4Gネットワークに直結できる家庭用のアクセスポイントを宅内に設置するだけでよい。家庭に多くのスマート家電やIoTデバイスが増えてきたら、何かしらのシンプルでセキュアなスマートホーム用ハブが必要だ。

NetgearにInseegoが開発を進めている5G対応のモバイルホットスポット

5G時代の到来に同期して、今後ポータブルAV機器にまったく新しい製品が生まれるかもしれない。モバイル端末向けのリッチコンテンツとの両輪が進化することが条件だが、うまくそれぞれの歯車がかみ合えば、まずはモバイル向け4K/HDR動画配信に対応する4Kスマホにタブレット、ノートPCのバラエティが今よりもっと増えるはずだ。

音楽系ではハイレゾ対応のストリーミングや、CESでソニーが発表した「360 Reality Audio」のように、音質・音場のクオリティに着目した体験を提供するサービスが続きそうだ。ドコモは音楽ライブの生配信をマルチアングルビューの動画機能付きで楽しめる「新体感ライブ」を発表した。こちらも将来の広がりが楽しみなコンテンツだ。

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