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【特別企画】スタイルや音質のトレンドを整理

いま注目の“ワイヤレスリスニング”をおさらい。オーディオテクニカのBluetoothイヤホン・ヘッドホンを知る

公開日 2017/07/04 10:00 山本 敦
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「完全ワイヤレスイヤホン」の登場

ひとつは「完全ワイヤレスイヤホン」の登場だ。おととしの年末頃に海外のベンチャー企業が商品を発売してから徐々にカテゴリーとして注目されるようになった。両耳のイヤホンが完全にワイヤレスであることからその名が付けられたようだ。海外では“True Wireless”と呼ばれることが多い。筆者もふだん完全ワイヤレスイヤホンを使っているが、ケーブルフリーから得られる開放感は一度味わうとやみつきになる。

いまのところ左右のイヤホンもBluetoothでつなぐ技術が一般的だが、接続の安定性をさらに高める技術としてオランダのNXPセミコンダクターズが開発したSoCに統合されている「近距離磁界誘導(Near Field Magnetic Inductance:NFMI)」を搭載するイヤホンも徐々に増えている。接続性に加えてバッテリーのパフォーマンスなども向上すれば、今年の後半はさらにブレイクしそうな予感が漂っている。残念ながら、オーディオテクニカにはこのタイプのラインナップはまだない。今後の登場を期待したいところだ。


ワイヤレスでもハイレゾ級の高音質再生
Bluetooth=音が悪い、は過去の話


もう一つのトレンドは「ワイヤレスで楽しむハイレゾ再生」だ。Bluetoothの最もベーシックなオーディオコーデックであるSBCの技術が成熟したことで、いま多くのワイヤレスイヤホン・ヘッドホンで満足度の高い音が楽しめる。一方ではBluetoothのオーディオプロファイルであるA2DPをベースにして、ハイレゾ相当の高音質再生を実現するふたつのコーデック技術が台頭してきた。

「LDAC」は2015年にソニーが発表した新しい技術だ。独自の演算処理により音声信号に圧縮をかけて、SBC比で約3倍、最大で96kHz/24bitまでのデータをLDACに対応する機器同士ワイヤレスで送受信ができる。

ソニーの「LDAC」は対応機器間で最大96kHz/24bitまでのデータをワイヤレス送受信可能

そして米クアルコムが開発する「aptX HD」は、従来からオーディオ機器を中心に広く普及しつつあるワイヤレスオーディオの高音質コーデックである「aptX」の上位バージョンだ。最大で48kHz/24bit相当の音楽データをワイヤレスで伝送できる。マスキング効果など心理聴覚的な手法を使わずに、オーディオの全周波数を原音に対して1/4のサイズまで圧縮してから信号を送受信するため、より自然なリスニング感が得られることを特徴としている。またベースとなるaptXと同様にデータ処理の負荷が軽く、伝送遅延も発生しにくいというメリットがある

クアルコムのは「aptX HD」は最大48kHz/24bit相当のデータ伝送に対応。自然なリスニング感と遅延の少なさがメリット

aptX HD対応のヘッドホン・イヤホンはまだ数少ないが、国内メーカーではオーディオテクニカが一番乗りに商品を発売。Bluetoothワイヤレスヘッドホンのハイエンドモデルである「ATH-DSR9BT」と「ATH-DSR7BT」にaptX HDの機能を載せている。オーディオテクニカが発売したふたつのヘッドホンは、本格派ポータブルオーディオファンのaptX HDに対する関心に火を付けたようだ。

aptX HDに対応し、ワイヤレスのデジタル音声信号をドライバーまでフルデジタル伝送する最高峰モデル「ATH-DSR9BT」

こちらもaptX HD対応&フルデジタル伝送対応の「ATH-DSR7BT」。人気モデル「ATH-MSR7」の音質をワイヤレスで実現することを目指して開発された製品で、DSR9BTより価格も抑えられている

そして頃合いを同じくして、aptX HD対応のオーディオ製品が徐々に発表されはじめた。スマートフォンではLGの「isai Beat/LGV34」や「V20 PRO/L-01J」、オンキヨーの“GRANBEAT”「DP-CMX1」がいち早くサポートする。またハイレゾプレーヤーではAstell&KernのAK70や、その上位モデルであるAK380などがソフトウェアのアップデートによりaptX HD対応となったこともユーザーには朗報だった。

なおオーディオテクニカの「ATH-DSR9BT」と「ATH-DSR7BT」は、aptX HDによる上質な音楽再生がたのしめるというだけでなく、世界初のフルデジタル伝送に対応したワイヤレスヘッドホンであるところにも要注目だ。

先進技術により、入力されたデジタル音声信号を、専用設計のドライバーまでデジタルのまま伝送することを可能にした

オーディオテクニカが独自に「ピュア・デジタル・ドライブ」と名付けた技術は、ワイヤレスで伝送されたデジタルの音声信号をクアルコムのSoCに内包されるBluetoothレシーバーで受け取り、後段で取り出した音声信号をD/A変換せずにデジタル信号処理技術「Dnote」のプロセッサーへ直接送り込むことにより、デジタル信号でダイレクトにドライブできるように専用設計されたドライバーが力強く、純度の高い音楽を鳴らす。2009年以来、ひたむきに練り上げてきたオーディオテクニカの高音質化技術が花を咲かせたというわけだ。




iPhone 7がイヤホン端子を廃止して、Lightning直結タイプの「EarPods」を本体に同梱したことによって、いま音楽ファンはデジタル接続のイヤホンにも関心を寄せている。Androidスマホの中にも、先日HTCが発表した「HTC U11」のようにイヤホン出力をUSB Type-C端子に変更するモデルが現れた。

デジタル技術の進化により、音楽をいい音で楽しむスタイルはますます多様化している。ワイヤレスオーディオの多彩なアイデアと高音質化のための豊富な技術資産を持つオーディオテクニカは、2017年後半もその動向から目を離せないブランドだ。

自分に最もフィットするリスニングスタイルを探求しながら、その中でいま最も多くの音楽ファンが期待を寄せるBluetoothイヤホン・ヘッドホンにもぜひ注目してほしいと思う。




[企画協力]株式会社オーディオテクニカ

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