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クラスDアンプはフルアナログで実現可能

スイッチングアンプ採用の「PM-10」を、マランツが“アナログアンプ”と呼ぶ理由

公開日 2017/03/10 11:37 編集部:小澤貴信
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「デジタルアンプ」と「アナログアンプ」のちがい

まず、クラスDアンプの「D」は、「DigitalのD」ではない。先行して登場していた「クラスA/B/C」という各アンプ方式の後に、4番目の方式として登場したために「クラスD」と名付けられた。

この点を確認した上で、高山氏はデジタルアンプとアナログアンプの違いについて、マランツの見解を説明してくれた。

アナログアンプとは、「入力されたアナログ信号をアナログのまま増幅するアンプ」である。CDプレーヤー(トランスポート+DAC)から入力されたアナログ信号を受ける、プリメインアンプ、プリアンプ+パワーアンプがこれに相当する。

アナログアンプとデジタルアンプのちがいの概念図

一方でデジタルアンプとは、「入力されたデジタル信号を、基本的にはアナログ変換することなく、最終段のローパスフィルター手前までデジタル処理を行うアンプ」である(アンプ内の処理過程において一次的にアナログ変換が行われる場合もある)。トランスポート+DAC+アンプという流れでいえば、アンプが「DAC+アンプ」の機能を持つことになる(D/A変換はしないが、デジタル入力を備えることを説明するため便宜的にDACという言葉を使う)。

こうしたデジタルアンプの具体例として、クアルコム社「DDFA」や、マランツ M-CR611が搭載したTI社製デジタルアンプが挙げられる。

ここで重要なのは、アンプがクラスA〜Dのいずれかということと、アナログアンプかデジタルアンプかということは、基本的に別次元の話ということである。

「クラスDアンプ」=「スイッチングアンプ」

それでは、クラスDアンプ=スイッチングアンプとは、どのようなものなのか。まずはマランツが作成した下の表を見て欲しい。オーディオ用途に主に用いられるアンプ方式には、下記のように4つの方式がある。なお、今回の記事の趣旨は、アンプの原理を解説することではないので、ごく単純化して話を進めたい。

クラスA、クラスAB、クラスC、クラスDの各方式の特徴をまとめた表

クラスA方式は信号の歪が少ないことが特徴。一方で効率は悪く、出力を確保するのが難しい。よってA級アンプを採用しているのは一部の高級モデルだ。

クラスAB方式は、A級とB級の要素を合わせ持った方式だ。A級ほどではないが歪は少なく、効率はA級より優れている。効率と音質のバランスが取れた方式で、オーディオ用アンプにおいては最も広く用いられている。

クラスC方式は効率は高いが歪が大きく、オーディオには不向きでまず用いられない。主に通信などの分野で用いられている。

そしてクラスD方式は、その効率の高さが最大の特徴だ。歪については「多い」というイメージを持つ方もいるだろうが、A級やAB級に対して多く発生するもののローパスフィルターでカットできるため、音質に与える影響は少ない。

ただし、スピーカーのインピーダンスによって周波数特性が変化する点、クラスDアンプにおいて多用されるスイッチング電源が高周波ノイズを発する点では音質面で課題を抱えている。

クラスDアンプは4番目に登場したこともあって、他方式に比べると歴史は比較的浅く、その伸びしろは大きいと言える。高効率でスペースファクターにも優れることから、オーディオ用途以外での採用例も多く、それに伴ってその研究と進化も急速に進んでいる。

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