「ベータの40年」を振り返る

さようなら、ベータマックス。AVレビュー元編集長が見た誕生、敗北、そして終焉

大橋伸太郎

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2015年11月13日
ソニーは2015年11月10日、ベータビデオカセットとマイクロMVカセットの出荷終了をアナウンスした(関連ニュース)。『AVレビュー』誌の元編集長で、VHSとの激しいフォーマット競争に敗れたベータの姿を間近で見ていた大橋伸太郎氏が、“ベータの40年”を総括する。

ベータビデオカセット「K-60」(1975年発売)

「シュン」という音とともにベータが登場した

小振りなカセットがウィーンとメカニズムに吸い込まれ、シュンという澄んだ音を残しテープがドラムにスピーディーに巻き付いて記録が始まる。何と小気味よいフィーリング! AV黎明期、日本だけでなく世界中のあちこちでこのサウンドが響いた。

ベータマックス1号機「SL-6300」(1975年発売)

カセットもかっこよかった。半分ブラインドになった奥床しいハウジング。いい画と音が出そうな予感がする。文庫本サイズと同じ大きさ(奥行きが1cm強短い)を目指したというのもよかった。弁当箱のようにうすらデカイVHSに比べて凛とした存在感、凝縮感がある。

AV(オーディオビジュアル)なんていう言葉がなかった時代。家電の代表であるカラーテレビだけしかなかった家庭用映像機器が、この「シュン」の音と共に、感性領域に踏み込んだのだった。それから40年。

「ウチのベータが」という言い方はしたが「ウチのVHSが」という言い方は誰もしなかった。VHSの場合は「ウチのビデオ」だ。いまでもウチのDIGAがとか、OPPOがという言い方はするが、それらは愛称でありメーカー名だ。「技術規格」が人格性をそなえて浸透したのはベータだけでなかったか。

1,800万台が生産されたベータマックスは失敗ではない

そのベータが完全に終了することが決まった。録画機は2002年に生産終了しているが、記録用テープは細々と作られていた。ソニーによれば2016年3月までにテープの生産を終了するという。

JVCによるVHS用テープの生産は、実は2014年に一足早く終了している。しかし、VHSは膨大な量の記録済みテープ(プリレコーデッドソフト、個人ライブラリー)が世界中に現存し、再生専用機の需要があり、今もサードパーティの手でハード、テープが製造販売されている。終焉はまだずっと先なのではないか(※1)

(※1)故・松山凌一氏がかつて筆者に語ったのが、「VHSは50年フォーマットになる」。世界のどこかの工場で、最後のVHSテープと再生専用機が生産出荷されるのはずっとずっと先という予想だ。50年経ったら2025年だが、2020年の東京オリンピックが次第に迫っていることを考えるとあり得るかも。

ベータ方式はソニー製VCR(ベータマックス)だけで1,800万台が生産されたというから、失敗作ではない。VHSの桁違いの成功に比べ中規模の成功に止まったということだ。「VHS イコール ホームビデオ」がVHSの栄誉なら「ベータはあくまで…」がベータの栄誉なのだ。

改めて考える「VHSの勝因」「ベータの敗因」

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