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ネット環境変化で音楽配信も変わる

「ハイレゾダウンロード」と「定額ストリーミング」 − 音楽配信に“真逆”の二大潮流

2011/01/26 ファイル・ウェブ編集部:風間雄介
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■ソニーが展開する「Music Unlimited powered by Qriocity」

このサブスクリプション型の音楽配信へ、新たに乗り出したのがソニーだ。「Music Unlimited powered by Qriocity(“キュリオシティ”ミュージックアンリミテッド)」を昨年12月にイギリスなどで開始(関連ニュース)。今年には欧州や米国でサービスを拡大する予定だが、国内展開については現時点で明らかにされていない。

Napsterがダウンロードサービスも展開していたのに対し、Qriocityはストリーミングのみ。楽曲をダウンロードすることはできないので、購入したコンテンツを他の端末に転送するという概念もない。ソニーでは「クラウド型音楽配信サービス」と呼んでいるが、ずいぶん割り切った仕様と言えるだろう。

Qriocityの料金プランは月額3.99ユーロの「ベーシック」と、同9.99ユーロの「プレミアム」の2種類が用意されている。

ベーシックプランでは、楽曲ライブラリーから、ジャンル別、年代別、ムード別のカテゴリーごとに、同社独自の12音解析技術をベースにした「SensMe」機能、ユーザーの嗜好の学習機能によりカスタマイズされた音楽チャンネルを楽しめる。ただし任意の楽曲を選んでオンデマンドで聴くことはできない。

一方のプレミアムプランでは、好みの楽曲をオンデマンドですべて聴いたり、気に入った楽曲を集めたプレイリストを作成したりすることが可能。さらに多数の音楽ジャンルのトップ100を集めた、最新ヒットチャンネルへのアクセスも可能になる。

ちなみに、昨年12月に英国でサービスを開始した時点で用意された楽曲は約600万曲。ソニー・ミュージック、ユニバーサルミュージック、EMIミュージック、ワーナーミュージックなどのメジャーレーベルだけでなく、インディレーベルも多数参加しているようだ。

■Qriocityがストリーミング型を選択した理由とは

Qriocityはストリーミングのみのシンプルなサービスだが、これは最近のデジタルAV/IT機器の多くがネットワーク接続機能を備えていることを考えたら、合理的な選択と言えるだろう。

ストリーミング型のみを展開する利点はいくつかある。QriocityはPS3やVAIOだけでなく、BRAVIAやBDプレーヤーなどでも利用できるが、テレビのように大容量のストレージを備えていない機器でも、ネットワーク機能さえあればサービスが利用できるのは大きなメリットだ。

また、オンラインのサーバー上に様々なステータスを記録しておくことで、ネットワークにつながる環境であれば、いつでもどこでも、最新の状態からサービスの利用再開が可能になる。

ただし現状ではまだ、WANについてはいつでもどこでもネットワークに安定して接続できる環境にはほど遠い。だからクオリティはダウンロード型には到底及ばない。

一方のダウンロード型サービスは、データ量を理論的にはどこまでも高められるという大きなメリットがある一方、ダウンロードに要する時間が長い、大容量データを格納しておくためのストレージ管理やデータのバックアップが必要、機器間転送の煩わしさ、DRM管理など、いくつかのデメリットがある。

何より、ダウンロード型にはすでにアップルという圧倒的な存在がいる。日本国内ではウォークマンが善戦しているものの、世界市場を見渡せばiPod/iPhoneにほぼ市場を独占されていると言って良い。同じ土俵で再戦を挑むより、戦いのルールを変えた方が賢明という判断も当然あったことだろう。

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