【レビュー】密閉型を再定義、オーディオテクニカの“ウッドヘッドホン”「ATH-AWX7000」を聴く。『TCbA』思想の実力とは?
誇張なく楽器のレイヤー感やダイナミクスを引き出す
試聴ではiFi audio「iDSD Phantom」とバランスケーブルで繋いで確認。分割振動も抑制し、空気に推し負けない強靭な振動板の正確なピストン振動によって、音源に含まれない意図しないピークや歪み感のない “入力100%を限りなく出力100%” という『TCbA』思想の理想形といえるサウンドは、これまで体感したことのない、穏やかで自然な音伸びの良さ、音場に広がる楽器のレイヤー感やダイナミクスをありのまま引き出してくれる、誇張のないものである。
ウッドハウジングらしいウォームな響きの豊かさも印象に残るが、オーケストラの管弦楽器は分離良く伸びやかに表現。アタックのナチュラルさ、木管パートのふくよかさも耳当たり良く聴かせ、高域にかけての荒々しさは微塵も感じさせない。
ハーモニーは潤いも良く芳醇。ティンパニや低域パートのコシの太さも程よくまとめ、ファゴットの芯の厚み、滑らかなディティール、巧みな息遣いも生々しく感じられた。
管弦楽器そのものの質感に色付けは感じられず、ハリ感の爽やかさ、太鼓系の皮の揺れ、アタック&リリースの正確なコントロールも実感。
ATH-AWX7000の本領はフォルティシモの大音量時、音が濁りなく再現される点にある。
ハーモニーの分離の良さ、各パートの旋律が明瞭に掴めることは、従来の密閉型ではなかなか味わえない領域のものだ。大きな音の楽器にマスクされてしまったり、ピーキーな倍音感による輪郭表現をいかに “当たり前” と思って聴いていたかがわかる。
秋山和慶:指揮/日本センチュリー交響楽団『チャイコフスキー:交響曲第4番』第4楽章は冒頭からダイナミックな展開が訪れるが、この楽曲の難しさは、ステレオワンポイント収録による高密度で誇張のないステージ表現にある。
システムによってはその情報量の多さを制御できず、中低域が団子状にまとまってしまい、全体的にマイルドでナローな音になってしまう。
しかしATH-AWX7000ではそうした心配は無用で、ティンパニや大太鼓のアタック、余韻の表現も管弦楽器のエネルギーに負けずクリアに聴こえてくる。しかもその定位も鮮明だ。
管弦楽器のハーモニーも緻密でとことんトレースしてくれ、指使い、息遣いまで丁寧に描き出す。ごまかしのない表現力に終始圧倒されたが、密閉型ではなかなか見えにくい奥行きある音場感にも驚かされた。
ジャズのホーンセクションの朗らかさ、タンギングの動きの生々しさも素直に拾い上げ、ピアノの響きも低重心で朗らかにハーモニクスが浸透してゆく。
シンバルの厚み良く柔らかな響きや、アコースティックギター、ハープといった弦楽器の潤いと弦そのものの厚みの再現性、胴鳴りのリアルさも申し分ない。
ボーカルは肉付きよく滑らかで、口元の動きもしっとりとして上質な艶を湛えている。リズム隊の伸びやかで押し出し良い低域のパワーも制動良くまとめ、躍動感良く描写。
TOTO『TAMBU』の大口径キックドラムのアタックは空気の動きの素早さと胴鳴りの厚みをバランス良く聴かせ、その場にいるかのような空間性も実感できた。

ATH-AWX7000はパッと聴いた瞬間、量感豊かな響きに圧倒されるかもしれない。しかしじっくりと聴き込むと、押し出しの力強さだけではない、緻密で抑揚の良い楽器やボーカルの動き、音場の大きさや残響、情感までも手に取るように見えてくる。
密閉型でここまでナチュラルな音表現は他で味わうことはできないのではないか。音楽そのものはもちろん、作り手がこだわった音のつくり込み、構成まで感じ取れるような情報量の多さ、マスクすることなくありのままを届ける素直さがATH-AWX7000の持つ魅力といえよう。
製品の詳細と「トゥルークローズドバックアコースティック」思想について公式解説。ATH-AWX7000スペシャルサイトはこちら
(提供:オーディオテクニカ)

