マランツ「CINEMA 70s SERIES 2」レビュー。評論家も「クラスの枠を超えた音質」と太鼓判
Polk Audio“Signature Eliteシリーズ”による5.1.2chシステムで視聴
試聴は音元出版オフィス内のブラックルームでソース機器にパナソニック「DMR-ZR1」、スピーカーシステムにはPolk Audio “Signature Eliteシリーズ” による5.1.2chシステムを使用した。HDMI ARCに対応するが、今回はディスプレイにJVC「DLA-V900R」を使用、DMR-ZR1のHDMI音声出力を本機にダイレクト入力した。
レイアウトはフロントイネーブルドを含む5.1.2構成。7ch一体型の本機の場合、背面スピーカー出力端子のSURROUND BACKがイマーシブ再生のトップ/ハイト/イネーブルドスピーカー出力と兼用になっており、ハイトモジュール(イネーブルドスピーカー)ES90をここに接続し、あとはOSDのスピーカーコンフィギュレーションで設定した。
外観こそ前世代とほとんど変わらないが、意匠や新機能で耳目を惹くのでなく、内容の地道な充実に注力したアンプである。再生音の向上に驚かされる。その鍵がリニアパワーアンプの採用で、S/Nが向上、バックグラウンドのノイズフロア、再生音にまとわりつく付帯音が大幅に低減、汚れ・にじみのない清澄で静粛な音質が得られている。
それに加えて新しい電流出力型DACの採用で解像力が躍進、情報量豊かで、きめ細やか、緻密な音場表現が生まれている。
ドルビーアトモス作品では、サラウンド音声の移動の滑らかさに驚かされる
4Kブルーレイ『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』(ドルビーアトモス)は、音響設計の密度の高さ、巧緻さで今期の新作中出色のソフトである。CINEMA 70s S 2は新たに掌中にした鋭利な表現力で、惑星パンドラの陸海空を舞台にした事象を現実の出来事と見紛うばかりの実在感で描き出す。
音場がきれいにほぐれ、SE、劇伴、セリフがきれいに分離し、重層的な音空間が生まれる。セリフが埋もれず前方にキリッと屹立している。サラウンドの移動の動線がスピーカー間で途切れたり薄くなったりせず、量感を伴ってなめらかにつながっていく。
次に音楽映画を視聴してみよう。若き日のボブ・ディランを描いた4Kブルーレイ『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』(ドルビーアトモス)の序盤、N.Y.フォークシティでディランとジョーン・バエズが出会うシーンは、S/Nに優れ静寂が描ける本機の長所が発揮され、試聴室の空気が聴衆で埋め尽くされたライブハウスの濃密なそれに変わる。
マランツのアンプらしく、楽音に無用な色付けがないため、ドラマを進展させる上で歌声が担う役割が明瞭に伝わってくる。具体的にはニューポートフォークフェスティバルのシーン、ステージ袖のスージーとディランの関係を嗅ぎ取ったバエズは、2曲目にディラン作の『It Ain’t Me Babe〜僕は君の求める男じゃない…』を持ち前のクリスタルボイスで決然と歌う。歌で恋のライバルに引導を渡したのである。
次のシーンでスージーが金網越しにディランに別れを告げるが、CINEMA 70s S 2で聴くここでのやりとりのセリフの肉感性、エル・ファニング演じるスージーの切ない息づかいが胸に迫る。テレビの内蔵音声や簡便なサウンドバー、いや情報量と解像力の足りないシステムではこのシーンの音が生み出す感動は半減するに違いない。
劇伴の意図が強く伝わる情感豊かなサウンド
今や、サブスク配信はホームシアターのメインソースである。次にNetflixオリジナルドラマを視聴してみよう。本機の美点に劇伴や劇中に挿入された音楽が美しいことがある。
細木数子モデルの『地獄に堕ちるわよ』エピソード5、細木と堀田が恋仲になるくだりはフランク・シナトラの名曲「オンリー・ザ・ロンリー」が重要な役割を果たすが、細木の経営するナイトクラブでふたりが急接近するシーンでは細木が身を置く虚飾の世界を反映した華美なアレンジ、次に孤独な渡世人の二人がそれぞれの部屋で恋に身をやつすシーンはシナトラのオリジナルで、次に恋が成就し二人が抱擁するシーンで端正で落ち着いたアレンジの「オンリー・ザ・ロンリー」が流れ、劇伴のエモーショナルな響きの変化が恋の進展を伝える。
元来、マランツのアンプは劇伴に忠実だが、最新のCINEMA 70s S 2はとりわけ歪みとカラレーションがなく音楽から引き出される情感が豊かで、映像と音楽が一体になった演出意図が鮮明に伝わるのだ。
本機の価格は187,000円(税込)と設定されている。AVサラウンドレシーバーとして普及価格帯だが、最新の技術成果を盛り込んで生まれた音質のパフォーマンスはベーシック機の枠をもはや超えている。エントリー層だけでなく、7chで必要かつ十分、と考える中級者、薄型設計に他にない価値を見いだすユーザーにとっても待望の製品に違いない。
(提供:ディーアンドエムホールディングス)

