ゼンハイザー「MOMENTUM True Wireless 5」レビュー。さらに進化した音質&ノイキャンを徹底解剖!
最初に感じたのは音の密度を薄めることなく、それぞれの音像を包んでいた薄皮を1枚取り除いたような心地よい開放感だ。
田中裕梨のアルバム『CITY LIGHTS 4th Season』から「ただ泣きたくなるの」を聴いた。ボーカルはMTW4よりも押し出しがわずかに穏やかになっている。
そのぶん声の帯域がのびやかに開き、息づかいや声色の移ろいをきめ細かく捉える。ボーカルの存在感が弱くなっているわけではない。力を込めて前へ押し出す必要がないほど、表情を自然に浮かび上がらせられるようになったと表現するべきだろう。
ベースとドラムスも、低音の量感だけで迫るのではなく、厚みや奥行きを伴って立体的に姿を現す。
鍵盤が奏でるメロディとハーモニーには豊かな色彩が自然に溶け込んでいる。何より心地よいのが、ボーカルと各楽器の音像の間に生まれる適度な隙間だ。情報が密集して窮屈になることがなく、録音された演奏が生の音楽に近づいて感じられる。
音質レビュー(2):「MOMENTUMらしいサウンドがさらに熟成」
角野隼斗のアルバム『Chopin Orbit』から、「エチュード:白鍵」を再生すると、この進化はさらに鮮明になる。
ピアノの音色は明るく煌びやかだ。演奏者のすぐそばに迫るより、ステージから少し距離を取り、コンサートホールの全体を見渡すようなリスニング感だ。演奏のダイナミズムと空間の広がりが一体となって身体へ染み込んでくる。
細かな高音の旋律は粒立ちが立体的で、躍動感にあふれる。いったんBTD 700を外してから、MTW5と交互に聴くと、完成度の高いMTW4でさえも薄膜を通して聴いていたように感じられるほどだ。
低音域の抜けもよく、ピアノの打鍵の鋭さと揺るぎない安定感に引き込まれる。ピアニストが一音ごとに込めた感情まで、ありのまま受け止められる手応えがある。
マイケル・ジャクソンのアルバム『Off the Wall』から「Off the Wall」では、圧倒的な見通しのよさがライブ演奏と対峙するような緊張感を生む。切れ味鋭いボーカルとエレキギター、ドラムス、ベースが互いの輪郭を埋もれさせず、勢いよく耳もとを駆け抜ける。
情報量は豊富なのに重苦しくならず、曲の疾走感とともに爽快な余韻が残った。BTD 700の有無を切り換えながら聴くと、ハイレゾワイヤレス再生時にMTW5が再現する中高音域の圧倒的な艶っぽさが引き立ってくる。
本機をiPhoneに直結して聴くサウンドも十分に魅力的だが、aptX Adaptiveで聴ける環境もぜひ揃えたい。
全体のリスニング感として、低音の濃密さと存在感は歴代のMOMENTUMから変わらず受け継いだ印象を受ける。従来のモデルが特徴としてきた熱量をほんの少し整え、クールで解析的な描写力を高めた。
豊かな音楽性を損なわず、どんなタイプの音楽も演奏の構造を明瞭にする。MTW5は、MOMENTUMらしいサウンドをさらに熟成させることに成功したと思う。
ノイキャン性能レビュー:「音楽に意識を向けやすい環境を丁寧に整える」
サウンドの進化を支えるのが新しいハウジング形状だ。耳に触れる内側は、MTW4の正円形に近い形状から楕円形へ変わった。外耳のくぼみに沿って心地よく収まり、本体の角度を調整しながら耳へ挿入しても痛みや窮屈さを感じにくい。

