デノン&マランツのCDコンポでDALI/B&Wのプレミアムブックシェルフスピーカーを鳴らしきる!
今でも数えきれないCDが、各リスナーの手元に眠り、あるいは中古CDとして市場に溢れている。その中には、未だにストリーミング配信されていない、かつCDでしか流通していない楽曲もあるほど。例えばライブ会場限定販売のCDなどは、当時においても希少であっただろうし、今となっては「CDでしか聴けない幻の音源」になっているかもしれない。
そんなCDを再生できるオーディオ機器として頼りになるのが「CDコンポ」だ。プレーヤーとアンプが一体化しているため設置や接続が手軽であり、さらに組み合わせるスピーカーも好みで選べるなどHi-Fiオーディオの楽しみもしっかりと備えている。昔も今もCD再生における “王道システム” といえる。
本稿では、そんなCDコンポのなかでも、Hi-Fiオーディオブランドならではの高音質を堪能することができるモデルとして、マランツ「M-CR612」とデノン「RCD-N12」を紹介したい。CD黄金期にコンポを求めていたユーザーからも憧れが強いブランド群であり、M-CR612とRCD-N12は現代のロングヒットモデルだ。
今回、ロングヒットモデルならではのクオリティをチェックするべく、組み合わせるスピーカーには2025年度のヒットモデルであるプレミアムコンパクトスピーカーから、DALI「KUPID」、Bowers & Wilkins「707 Prestige Edition」を選択した。そして、リファレンスソフトには、某中古CDショップにて「平成ミリオン」の棚に並ぶ、大ヒット曲が収録されたベストアルバム群を聴きこんでみた。

DALI「KUPID」のレビュー記事はコチラ
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Bowers & Wilkins「707 Prestige Edition」のレビュー記事はコチラ
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着実な進化を遂げて愛され続けている売れ筋ロングセラー、マランツ「M-CR612」
マランツのM-CR612は、CDコンポとして時代に沿った進化を続けてきたモデルだ。“M-CRシリーズ” として大規模アップデートが施された2013年の「M-CR610」、2015年には「M-CR611」となって、「30か月連続で市場シェアNo.1」(GFKデータ)という凄まじい人気を誇った。そして、さらにアップデートされた現行モデルがM-CR612なのだ。
シンメトリーレイアウトを筆頭に、マランツの伝統的なデザインが継承された優美な外観。回路設計およびプロセッサーやコンデンサーの選定により、ローノイズを実現したフルバランス構成/最大出力60W+60Wのデジタルアンプは、バイアンプやパラレルBTLといった駆動方法にも対応している。
CD再生をはじめ、AM/FMラジオ、BluetoothやAirPlay2にも対応する。ネットワークシステムHEOSも搭載し、SpotifyやQobuzなどのストリーミング再生もカバーしている。2019年に登場したモデルだが、アップデートも実施されているため、最新コンポーネントに引けを取らない機能性を常時確保していることも特徴であり、売れ続けていることも納得のCDコンポだ。
DALI「KUPID」と組み合わせてレビュー、音楽に自然に浸れる穏やかな聴き心地が魅力
KUPIDと組み合わせてみると、ひとつひとつの音像を立て過ぎず、楽曲全体として適度に馴染んだ描写が印象的であり、音楽に自然に浸ることができる、穏やかな聴き心地を味わうことができる。
安室奈美恵「SWEET 19 BLUES」では、それまでアグレッシブな曲が多かった安室奈美恵によるナチュラルな歌声が魅力の楽曲だが、M-CR612とKUPIDのコンビでは歌声の感触を大らかに描き、適度にラフなタッチが合わさることで抜群の相性を示す。
次にDREAMS COME TRUE「サンキュ.」を聴いてみると、聴きどころのひとつである吉田美和のハーモニーを、分離させたそれぞれ声を立体的に織り重ねるのではなく、溶け合うような一体化を演出する方向で描写。空間の広がりも強調しすぎず、馴染みのよさが特に発揮された。
平井堅「POP STAR」では、アタックは緩やかな質感であり、打ち込み的なドラムやベースの音が落ち着きのある再生。スピード感のある再生よりも、広がりある空間を表現するサウンド傾向にあった。
福山雅治「桜坂」に変えてみると、バックトラックの雰囲気においては、柔らかく広がりあるサウンドで再現。福山のボーカルの肉声的な厚み、温かさの表現がバッチリで、歌物として満喫できるのが魅力的だ。
B&W「707 Prestige Edition」と組み合わせてレビュー、解像感や明瞭度が高い現代サウンドで新鮮に表現
スピーカーをB&W「707 Prestige Edition」に切り替えると、解像感や明瞭度が一気に高まり、グッとシャープな音調となった。当時の思い出に浸るとかではなく、当時の楽曲を現代のHi-Fiオーディオで改めて聴き込むことによる新鮮さ、驚き、喜びを味わえる。
安室奈美恵「SWEET 19 BLUES」は、バックトラックの音色や配置の立体感の高まりもあるが、何よりもボーカルの描写に注目。声の音像のクリアさやシャープな成分の出し方によって、歌声から楽曲全体の「切なさ」がより強く引き出される。
DREAMS COME TRUE「サンキュ.」を再生すると、ボーカルハーモニーの描写を、分離させて立体的に織り重ねるという描き方。改めて今の環境で聴きこむことで、ハーモニーの構造から新たな発見も得られる。
平井堅「POP STAR」に切り替えるとリズムのアタックや輪郭がくっきり。同じく空間中央に定位するボーカルと重なってお互いがぼやけることもなく、主役であるボーカルもより聴きやすくなる。
そして福山雅治「桜坂」では、MPC的なニュアンスもある打ち込みドラムに5弦の音域まで使うベースラインが特徴的だが、リズムトラックのエレクトロニカ的な要素を綺麗に再現しており、新鮮さに富む。
ARC対応HDMIも搭載する接続性も豊富なヒットモデル、デノン「RCD-N12」
デノン「RCD-N12」もまた、CDコンポとして系譜を長く築き上げてきた背景をもつ。2010年モデル「RCD-N7」がリリースされ、2018年モデル「RCD‑N10」ではネットワークシステム「HEOS」の搭載を含む刷新が行われ、そこからアップデートされて2023年に最新世代機として登場したのが、このRCD-N12である。マランツのM-CR612と同じく、CDコンポのジャンルを定番ヒットシリーズとして牽引している。
音質面では、最新型パワーモジュールを導入することでS/Nを大幅に改善した、定格出力65W+65Wの高効率クラスDアンプを搭載。専用設計OFCインダクターを用いたローパスフィルターを用いることで、歪率も大幅に改善している。機能面では、ARC対応のHDMI端子を搭載していることもトピックで、同じくARC対応のHDMI端子を備えるテレビなどと接続すれば、映像コンテンツもRCD-N12のサウンドで楽しめる。
AM/FMラジオ、Bluetooth、AirPlay2に対応し、HEOSによってSpotifyやQobuzなどのストリーミング再生もフォロー。また、MMカートリッジ対応のPhono入力を備えているため、アナログプレーヤーの接続も可能だ。本体天面にはタッチパネルを採用しており、再生/停止、音量調整、入力切替、カスタムボタンによる操作が行える。
