レコードの“素材違い”は音にどう出る?井筒香奈江の「黒&クリアEP盤」の音質を小原由夫氏が徹底チェック!
“オーディオクイーン” 井筒香奈江がまたやってくれた!最新の7インチシングルは、なんとレコードの “色違い” を2種類同梱したスペシャルセット。通常の黒盤に加えて、「スーパークリア盤」との2枚組という前代未聞の企画である。
オーディオファンに聴き比べを楽しんでほしい、という願いを込めて作られた貴重なEP盤。プレスはこだわりのメモリーテック社。盤の “素材” によって音はどのように変化するのだろうか?オーディオ評論家・小原由夫氏が体験する!
同一の音源を黒とクリア盤にてプレス
マスタリングの違いや発売の時期など、レコードの音の変異要素は多々あるが、材料の違いもその大きなファクタのひとつだ。音楽の高音質ぶりがオーディオファイルに人気の井筒香奈江が今回リリースした400セット限定の2枚組EP盤は、材料による音の違いを同一音源で楽しんでもらいたいというユニークな企画。
去る10月中旬に東京・有楽町で開催された「東京インターナショナルオーディオショウ」でも、いくつかの出展ブースにて井筒自身がデモ公演を行ない、大いに話題を博したという。
レコードに使われる材料で黒色の元となっているのは、主に「カーボンブラック」である。これは廃棄されたレコードを溶かして再利用する際に不純物が目立たないようにするための混ぜ物で、盤の強度や耐久性を維持する働きもあるが、必ずしも必要という材料ではない。
また、カーボンブラックと一括りにしても、物性値の違いでさまざまな種類がある。今回の井筒のEPに使用された材料の詳細は公表されていないが、製造に当たったメモリーテック社のペレット(原材料)は厳選されたもののようで、以前に聴いた印象では他社の盤よりもサーフェイスノイズが低く、高S/Nに感じた。
一方「スーパークリア盤」と 称された透明盤は、特別な塩化ヴィニールが主原料に採用されていると思われ、独自の特別な材料配合がありそうだ。
今回の限定盤リリースの端緒には、アルバム『Another Answer』の制作時にメモリーテック社の商品開発用に提供した楽曲にてテストカットされた7インチシングル盤の存在がある。そのカッティングを担当したエンジニアの北村勝敏氏より、件の7インチシングル盤が「通常よりも攻めたギリギリのカッティング」との話を聞きおよび、いつかはシングル盤のリリースをと、その時のラッカー盤から作られたスタンパーを温存していたという。
そこへ2025年8月末、メモリーテック社御殿場工場見学の際、井筒は工場内のクリア盤のサンプルの音に触れ感激。その場でサンプルプレスを依頼し、できあがったそれを東京・青山の「ミキサーズ・ラボ」の北村のカッティングルームで関係者一同で試聴。黒盤、スーパークリアの盤甲乙つけがたい音に嬉しい悲鳴となり、2枚セットでの商品化が決定した。
スーパークリア盤は声が瑞々しく艶やか
同じ条件の元。材料違いだけで製作された2種のEPは、品質が担保できる400枚ずつの限定セット。収録楽曲は、A面「Sing Sing Sing」、B面「竹田の子守歌」である。
まずは黒盤の「Sing Sing Sing」から。冒頭のベースの和音のピッチがクリアに聴こえ、リムショットのトランジェントも良好。間奏部のギターもウォームに響き、リズムセクションのタイトさが黒盤の特質と感じた。肝心の声は、ややダークな声質がくっきり浮かび上がるが、どちらかというとリズムセクションにスポットライトが当たる印象である。
一方スーパークリア盤の音は、声が瑞々しく艶やかで、ヴォーカルの生き生きとした表情が伝わってくる。冒頭のリムショットやベースは黒盤に比べて幾分まろやかでアタックが柔らかい。こちらは明らかに声が主役のトーンバランスに感じる。
「竹田の子守歌」も概ね同様の印象で、スーパークリア盤はピアノやギターの冒頭の音色がフワッと広がり、ヴォーカルがスーッと中央に浮かんでくるのに対し、黒盤は声もリズムも全体に引き締まっていてタイトだ。
なんとも興味深い音の違いを楽しめるマニアックなEPセット。高音質にこだわるアナログ・フリークならば、販売終了となる前に是非!
今週末のイベントにて先行発売!
今週末11月22日(土)と23日(日)に浅草橋にて開催される「ハイエンドオーディオ&アクセサリーショウ」にて、井筒香奈江の『SUPER CLEAR AND BLACK VINYL 2-EP SET』が先行発売されます。
また、小原由夫氏と井筒さんの特別トークショウは、22日(土)の15時半から開催。本盤の聴き比べをいち早く体験できます。
下記フォームからお申し込みいただきますと、豪華プレゼントが当たる抽選会にも参加可能。ぜひ奮ってご参加ください!
「ハイエンドオーディオ&アクセサリーショウ2025」開催概要
■開催日時
11月22日(土)13:00 - 19:00
11月23日(日・祝)10:00 - 18:00
※入場無料
■場所
浅草橋ヒューリックホール&カンファレンス
〒111-0053 東京都台東区浅草橋1-22-16ヒューリック浅草橋ビル
・JR総武線「浅草橋」駅(西口)より徒歩1分
・都営浅草線「浅草橋」駅(A3出口)より徒歩2分
