Kinera Imperial「NOTT PHANTOM」レビュー! 北欧神話の女神がハイブリッドイヤホンで奏でるサウンドとは!?
シルキーなボーカルを主役に置き、低域や高域はボーカルに対して目立ちすぎず不足もしない絶妙な存在感。楽曲の静かな場面では優れたS/N感による漆黒の背景がボーカルをより浮き上がらせるといった具合だ。

となればジャズやR&B、ソウルのボーカルソングあたりはド直球で相性抜群?と想像できるだろう。その通り。たとえばコンテンポラリーなそのジャンルを代表するシンガー、ホセ・ジェイムズの楽曲全般とこのイヤホンはまさに相性抜群だ。
これぞシルキーといった感触のボーカル描写は絶品。そもそもが優しい声なので、それを単にさらに柔らかく描くだけではボーカルがぼやけてしまう。しかしこのイヤホンで聴くその声は柔らかくも明瞭。彼の声の魅力が素晴らしく引き出されている。
ピアノやシンバルの高域が、控えめのソフトフィルターを通した夜景のように、こちらも柔らかに煌めくのもよい。
そのあたりの魅力は『Merry Christmas from Jose James』『1978』といったアナログテープ録音アルバムでさらに特に際立つので、ぜひこのイヤホンでそれらを聴いてみてほしい。
さてでは星街すいせい「もうどうなってもいいや」のような最新ポップスとの相性はどうかというと、そちらはリスナーの聴き方次第。
ベースのボリューム感や効果音的なサブベースが音場を強烈に揺らす様子など、現代ポップスらしいサウンドもボーカル以上に楽しみたいとなると、このモデルは低域の量感や沈み込みの点で物足りないかもしれない。
しかしボーカルに耳を傾けるのであれば、ホセ・ジェイムズと同じく絶品。ボリュームやエッジが押し出されないので、聴き疲れもしにくそうだ。
音のクオリティがハイエンドクラスなのは当然の前提として、加えて音のキャラクターが明確なことは、ハイエンドラインのエントリークラスというポジションにおける本機の魅力のひとつと言えるだろう。
このモデルを入口に様々なハイエンド機を集めまくることになったとしても、ボーカルを堪能したい気分な日には結局これに手が伸びる。そんな存在として長く愛用できそうだ。
またすでに刺激的なハイエンド沼に浸っているマニアも、その刺激からたまには離れたいなら、この穏やかな夜の女神に縋るのはありかもしれない。

Kinera Imperial「NOTT PHANTOM」製品仕様
SPEC ●型式:ハイブリッド型 ●ドライバー構成:3ウェイ5ドライバー(8mmダイナミック型×1、Sonion BA×2、Knowles BA×2)●再生周波数帯域:20 - 20,000Hz ●インピーダンス:54Ω ●感度:105dB ●ケーブルの長さ:1.2m ●付属品:イヤーピース3種9ペア、着脱式プラグ(3.5mm/4.4mm)、クリーニングツール、イヤホン収納ケース
(提供:サウンドアース)
