音楽を愛するすべての人へ。VGP「批評家大賞」受賞、ハイエンドスピーカーも鳴らし切る、ティアック小型アンプの実力
A4サイズの小型コンポーネントで、フルサイズのハイエンドモデル級のサウンドを実現したプリアンプ「HA-507」とパワーアンプ「AP-507」がピュアオーディオ部会の批評家大賞を受賞。大型のハイエンドスピーカーも朗々と鳴らすセパレートアンプの魅力を大橋伸太郎氏が解説します。
軽やかで生々しく、倍音が迸る鮮鋭な音色
「Reference 500」は実にティアックらしいシリーズです。フルサイズコンポーネントの威丈高な保守性を感じさせないA4サイズ。ヘッドホンアンプ、ネットワークプレーヤー、USB-DAC/プリアンプ、CDトランスポート、パワーアンプ、さらにはフォノアンプやマスタークロックジェネレーターで構成され、あえて機能を重複させ、システムアップはユーザーの志向に委ねられています。
2024年秋にヘッドホンアンプ搭載プリアンプ「HA-507」が、2025年初頭にステレオパワーアンプ「AP-507」が、それぞれ最新のデバイス、回路技術を搭載して登場。シリーズの音質を一段高いステージへ導きました。同社らしい継続性と音質面の達成が、審査員全員に感銘を与え、批評家大賞に輝きました。
HA-507は、6.7W/chの高出力を持つヘッドホン再生のエキスパート。いっぽうこだわりのプリアンプでもあります。アッテネーター(ボリューム)回路に「TEAC-QVCS Advanced」を搭載。クワッドボリュームコントロールシステムの略で、左右正負独立したフルバランスデュアルモノ構成。さらに固定抵抗の切り替え式アッテネーターを搭載しています。可変ゲインタイプより不要な接点が少なく、ピュアかつストレートに音量の調 整ができ、音質の伸びしろは大きいです。
AP-507は、ティアックで1番コンパクトなパワーアンプ。ステレオ、バイアンプ、BTLという3つのモードがあり、モノラルパワーアンプとしても使えます。心臓部のクラスD増幅素子にオランダHypex社のモジュールを使用。同社のフラグシップデバイス「NILAI」から生まれた最新の「NCOREx」をReference500専用にカスタマイズして搭載しています。さらにティアックオリジナルのディスクリートバッファアンプをNCORExの前段に置いて、2段構えで鮮度の高い音を達成しました。
メカニカルな部分も刷新しています。トッププレート半固定のセミフローティングで自然でほぐれた開放的な音を狙っています。フット(脚)も前のモデルはリジッドなスパイクタイプでしたが今回は可動性をもたせ、置いたときに床面にそってフィットするStress-Less Foot。振動をコントロールし、低域の伸びやかさ、奥行き感を出していく狙いです。
HA-507、AP-507中心にReference 500の現在地点を聴いてみましょう。CDトランスポートに「PD-505T」、USB-DACに「UD-507」を使用し、CD中心に試聴。クロックジェネレーター「CG-10M-X」を援用しました。
坂本龍一の遺作『Opus』は、録音会場音場の奥行き、デプス、高さが試聴室に浮かび上がり、演奏していない個所で奏者の息づかいや空気感まで再現されます。余韻の自然な減衰、ゆれのなさにクロックジェネレーターの存在の大きさを実感しました。
庄司紗矢香のモーツァルト・ヴァイオリンソナタ集は、伴奏者のフォルテピアノの軽やかな音色の生々しさ、バロック弓のバイオリンの倍音の迸る鮮鋭な音色に聴き惚れます。
圧巻は、ボブ・ジェームス・トリオ『フィール・ライク・メイキング・ライヴ!』。今回の試聴で使用したスピーカーはBowers & Wilkins「802 D4」。歴代800シリーズ中、低音の歪みが極小、レスポンスがハイスピード化され再現力が一段と大きくなりましたが、小さなReference 500システムがこの優れたモニタースピーカーを掌中にして鳴らし切ります。クロックジェネレーターの援用がトリオの定位のにじみのなさ、立ち上がり立ち下がりの俊敏さに現われていました。

「(オーディオは)人間の感性への最良の贈りものである。」VGPアワードを主催する音元出版がかつて提唱した美しいマニフェストです。音楽を、音を愛する全ての人へ開かれたユニークなオーディオ “Reference 500” にふさわしい言葉です。VGP 2025 SUMMERピュアオーディオ批評家大賞受賞も当然の結果でしょう。
(提供:ティアック)
