限界を超えた高みへ到達。オーディオテクニカの新旗艦完全ワイヤレス「ATH-TWX9MK2」速攻レビュー
ATH-TWX9MK2音質レビュー:表現力が新しい次元にまで突き抜ける
今回は本機をiPhone 16 ProにペアリングしてApple Musicが配信する音源をリファレンスにして聴いた。比較のため先代機・ATH-TWX9も揃えた。なお、本機はSnapdragon Soundに準拠する高音質なワイヤレスオーディオだ。クアルコムのaptX Adaptiveコーデックに対応するデバイスに接続すると最大96kHz/24bitのハイレゾワイヤレス再生も楽しめる。
サウンドは、抜群に豊かな情報量に基づく安定感と正確さに加えて、圧倒的な熱量を獲得していた。先代機・ATH-TWX9よりも一段と音楽のつながりが増している。リアリティに富んだ表現力が新しい次元にまで突き抜けた。
はじめに断っておきたいのは、本機はジャンルを問わず、どんなタイプの音楽にも幅広く対応できるワイヤレスイヤホンであるということだ。そのうえで筆者は、本機と現代のロックやポップス系サウンドが抜群に好相性な印象を受けた。
NOMELON NOLEMONの「きえない」はミドルテンポのバラード。重心の低いビートが足もとを固め、鮮やかなピアノとホーンセクションのハーモニーがキラキラとした情景を描き出す。ボーカルは透明感に満ちていて、声の芯がしっかりと響く。密度の高い音楽から熱気が立ちこめる。楽曲のクライマックスに向かって徐々にボルテージが高まり、ぶ厚く心地よいベースラインのグルーヴに思わず身体を動かしてしまった。
繊細なウィスパーボイスの抑揚も味わい深い。クレイロのアルバム『Charm』から「Juna」がこのイヤホンにぴたりとマッチした。クリーミーな歌声とコーラスのハーモニーがゆったりと空間を満たす。
たゆたうシンセサイザーの音色と溶け合う濃厚で色彩豊かな音楽を力強く表現できるところが本機の魅力だ。ディテールの描写力も高く、ボーカルとの距離感がとても近く、息づかいまでリアルに感じられる。
ライブ収録の音源との相性も良好だ。Official髭男dismのアルバム『ワンマンツアー 2021-2022 Editorial』から「Pretender」では、コンサートホールに漂う緊張感が伝わってくる。シャープな楽器の音色が空間の広がりをリアルに感じさせる。抜けのよいボーカルの爽やかな余韻に耳がうるおう。
アグレッシブな楽曲にも本機は力負けしない。上原ひろみとSonicwonderのアルバム『OUT THERE』から「XYZ」では見事な疾走感が楽しめる。1音ずつタイトに力強く響く演奏のリアリティーに一瞬で引き込まれた。
EQ設定/ノイキャン最適化など、機能充実「Connect」アプリをチェック
Connectアプリはイコライザー機能も備えている。4種類のプリセットや5つの音域ごとに調整した設定値をマイセッティングとして保存すれば繰り返し使える。楽曲やリスニングシーンに合わせて本機のサウンドを微調整してもいい。
本機には周囲のノイズ環境に応じてANCのレベルを自動で最適化する機能がある。最初にアプリから自動計測を行って「ノイズキャンセリングのパーソナライズ」も済ませておくと遮音効果はさらに高まる。ANCのモードは「Optimized」を選んでおけばイヤホンが常時ベストなANC効果を引き出してくれる。
筆者は本機を試している期間中、飛行機に乗る機会もあった。ANC効果はサウンドとのバランスが良いだけでなく、「強さ」の観点から見ても優秀だ。飛行機のエンジン音に気を取られることなく、音楽や動画コンテンツのサウンドに集中できた。
消音効果がとても強いため、屋外を歩きながらリスニングに使う際には必ずヒアスルーを活用したい。オーディオテクニカの他のラインナップと同様に、モードを切り替えた時も音質がまったく変わらないから安心だ。
ユーザーの生活に寄り添う音もの機能として「サウンドスケープ」機能が搭載されたことにも触れておきたい。潮騒に焚き火、小川のほとりや森に漂う環境音など、イヤホンを装着して再生すると集中力が高まる複数の音源を収録している。
筆者も原稿執筆の作業に集中したい時には、ATH-TWX7とサウンドスケープ機能が “必携の仕事道具” になっている。体験すればすぐにわかると思うが、このサウンドスケープに収録されている自然の音源はやたらと音質がよい。その理由は同社の高音質マイクで生音を録音したソースから音源化しているからだ。本機を手に入れたら、ぜひ美味しいコーヒーと一緒に楽しんでみてほしい。とてもリラックスできると思う。
本機のサウンドは時に人の感性に対して情熱的に訴えかけてきたり、日常生活にBGMとしてさりげなく寄り添ってくれる慎ましやかさも併せ持っている。すべてのユーザーが安心して長く楽しめるワイヤレスイヤホンの新しい基準になるだろう。

(提供:オーディオテクニカ)
