PRエンジニアの声を交えつつ徹底レビュー
驚くべき開放感と解像力。「ATH-R70xa」「ATH-R50x」に見るオーディオテクニカのこだわりを紐解く
オーディオテクニカから、プロフェッショナル向けの開放型モニターヘッドホン「ATH-R70xa」と「ATH-R50x」がリリースされた。
“Rシリーズ” は、その名の通りReferenceの頭文字「R」を冠するモニターシリーズで、ATH-R70xaは世界的にも高い評価を得る同社初の開放型モニター「ATH-R70x」の後継モデル。そして、ATH-R50xは、より幅広いユーザー層も視野に入れ新たにデザインされた弟分となるモデルだ。
両機は、いずれもオーディオテクニカならではの開放型に対するこだわりと高度な設計技術が詰まったニュープロダクトとなる。開発者インタビューで得られたエンジニアの熱い想いとともに、早速実機レビューをお届けしよう。
ヘッドホンにおける開放型というカテゴリは文字通り、ハウジングの後面がメッシュ構造などで開放されている物を指す。ただ、純然たる定義があるわけではないようで、実際に各社から発売されている様々な「開放型」ヘッドホンを見てみても、音を出すドライバーユニットの前後に置かれた構成によって、当然ながらその開放度は大きく異なっている。
その中でオーディオテクニカの開放型ヘッドホンは「如何にダイアフラムにストレスを与えず自由に動かせるか。空気の通りを綺麗にできるか」ということに注力した「トゥルーオープンエアー(真の開放型)オーディオ」設計思想を理想とされており、秀でたサウンドの開放感を生み出しているのである。
同社のヘッドホン開発の歴史は、ちょうど本年で50年を迎える。その中で、開放型は1987年頃に発売された「ATH-7」に端を発するというから、実に長い歴史を持つ。着実に地歩を固めていく中で、2012年リリースの「ATH-AD2000X」で、ついに「トゥルーオープンエアーオーディオ」思想を実現させた開放型ヘッドホンの原器に辿り着く。実際、ATH-AD2000Xは、ヘッドホンファンだけでなく、スピーカー再生を主とする批評家たちからも当時こぞって高い評価を獲得していたことを筆者の記憶にも深く刻まれている。
そんなATH-AD2000Xと同時期に開発が着手されたのが、2015年にリリースされた同社初の開放型モニターヘッドホンとなるATH-R70x、つまりATH-R70xaのオリジナルモデルである。このモデルを持ってして、ついに同社が理想とする開放型の動作原理を実現したのだという。
その後、2017年にリスニング用ラインナップとして現フラグシップとなる「ATH-ADX5000」、そして、2024年に「ATH-ADX3000」をリリースし高い評価を確立しているが、これらの成果は優に40年越しの結実といえ同社がひたむきに研究してきた賜物なのである。
音の「開放感」が凄まじい。ATH-R70xaとATH-R50xを一聴して誰もが実感する印象だと筆者は考える。そして、これこそが両機の真骨頂だろう。その心は、オーディオテクニカの開放型ヘッドホンに対する開発姿勢にある。エンジニアが開口一番に強く訴える「何を持ってして開放型と定義するのか」という答えからも明らかだった。
前身機ATH-R70xの企画背景に、音楽制作現場の変化がある。2000年代に入って音楽制作がコンピューターベースのレコーディング/ミキシング環境となり、さらに、2010年代に入ると、デスクトップオーディオを中心とした、ニアフィールドスピーカーによる音楽制作が主流となった。
そんな中、当時の欧州の事情に目を向けると既に開放型モニターヘッドホンの先駆者としてSennheiserとbeyerdynamicの製品が音楽制作の現場で頻繁に使用されていたと、企画を立案したマーケティング部の鈴木弘益氏は語る。この状況を踏まえたうえでオーディオテクニカが開放型モニターヘッドホン市場に参入する必要性を社内に強く訴えかけたという。
そうした時代の変化、特にコロナ禍による社会環境の変化が音楽制作の現場にも影響し、ベッドサイドスタジオでの制作が加速。そんな世界的な環境の変化も影響し企画されたATH-R70xは大ヒットに繋がり、ATH-R70xaとATH-R50xに至るというわけだ。
新登場の両機には、開発者陣の間では「40マル」と呼ばれる、公称径「45mm」のドライバーが用いられている。高磁力マグネットを使用したこのドライバーから放たれる音を、先述のように、滞ることなくそのまま耳に届けることに主眼を置き、ドライバーから生み出された空気の振動が、音響的なダクトや共振を利用すること無く、ダイレクトに届けることに注力されている。
一見すると、実にシンプルな発想に見えるが、これが大変に困難を極めるという。「隔てるものがないので構造的にはスカスカの状態でありながらも、限られたドライバーのサイズと容積の中で如何に低音再生を確保するのか。空気の流れをコントロールすることが大切になります」と鈴木氏。
開放型は密閉型と異なり遮るものがないため、密閉型であれば筐体内のダンパーや吸音材などで調整の幅を持たせられるが、オーディオテクニカが目指す「トゥルーオープンエアー」思想では、文字通り、ほぼドライバーのみで音をコントロールする必要があり、ドライバー自体の設計に腐心したのだという。よって、当然、搭載されるドライバーも、両機それぞれ専用設計のものとなっている。
“Rシリーズ” は、その名の通りReferenceの頭文字「R」を冠するモニターシリーズで、ATH-R70xaは世界的にも高い評価を得る同社初の開放型モニター「ATH-R70x」の後継モデル。そして、ATH-R50xは、より幅広いユーザー層も視野に入れ新たにデザインされた弟分となるモデルだ。
両機は、いずれもオーディオテクニカならではの開放型に対するこだわりと高度な設計技術が詰まったニュープロダクトとなる。開発者インタビューで得られたエンジニアの熱い想いとともに、早速実機レビューをお届けしよう。
■オーディオテクニカの掲げる「トゥルーオープンエアー」とは、その足跡を辿る
ヘッドホンにおける開放型というカテゴリは文字通り、ハウジングの後面がメッシュ構造などで開放されている物を指す。ただ、純然たる定義があるわけではないようで、実際に各社から発売されている様々な「開放型」ヘッドホンを見てみても、音を出すドライバーユニットの前後に置かれた構成によって、当然ながらその開放度は大きく異なっている。
その中でオーディオテクニカの開放型ヘッドホンは「如何にダイアフラムにストレスを与えず自由に動かせるか。空気の通りを綺麗にできるか」ということに注力した「トゥルーオープンエアー(真の開放型)オーディオ」設計思想を理想とされており、秀でたサウンドの開放感を生み出しているのである。
同社のヘッドホン開発の歴史は、ちょうど本年で50年を迎える。その中で、開放型は1987年頃に発売された「ATH-7」に端を発するというから、実に長い歴史を持つ。着実に地歩を固めていく中で、2012年リリースの「ATH-AD2000X」で、ついに「トゥルーオープンエアーオーディオ」思想を実現させた開放型ヘッドホンの原器に辿り着く。実際、ATH-AD2000Xは、ヘッドホンファンだけでなく、スピーカー再生を主とする批評家たちからも当時こぞって高い評価を獲得していたことを筆者の記憶にも深く刻まれている。
そんなATH-AD2000Xと同時期に開発が着手されたのが、2015年にリリースされた同社初の開放型モニターヘッドホンとなるATH-R70x、つまりATH-R70xaのオリジナルモデルである。このモデルを持ってして、ついに同社が理想とする開放型の動作原理を実現したのだという。
その後、2017年にリスニング用ラインナップとして現フラグシップとなる「ATH-ADX5000」、そして、2024年に「ATH-ADX3000」をリリースし高い評価を確立しているが、これらの成果は優に40年越しの結実といえ同社がひたむきに研究してきた賜物なのである。
■開放型リファレンス機の意義とは。オーディオテクニカのエンジニアに訊く
音の「開放感」が凄まじい。ATH-R70xaとATH-R50xを一聴して誰もが実感する印象だと筆者は考える。そして、これこそが両機の真骨頂だろう。その心は、オーディオテクニカの開放型ヘッドホンに対する開発姿勢にある。エンジニアが開口一番に強く訴える「何を持ってして開放型と定義するのか」という答えからも明らかだった。
前身機ATH-R70xの企画背景に、音楽制作現場の変化がある。2000年代に入って音楽制作がコンピューターベースのレコーディング/ミキシング環境となり、さらに、2010年代に入ると、デスクトップオーディオを中心とした、ニアフィールドスピーカーによる音楽制作が主流となった。
そんな中、当時の欧州の事情に目を向けると既に開放型モニターヘッドホンの先駆者としてSennheiserとbeyerdynamicの製品が音楽制作の現場で頻繁に使用されていたと、企画を立案したマーケティング部の鈴木弘益氏は語る。この状況を踏まえたうえでオーディオテクニカが開放型モニターヘッドホン市場に参入する必要性を社内に強く訴えかけたという。
そうした時代の変化、特にコロナ禍による社会環境の変化が音楽制作の現場にも影響し、ベッドサイドスタジオでの制作が加速。そんな世界的な環境の変化も影響し企画されたATH-R70xは大ヒットに繋がり、ATH-R70xaとATH-R50xに至るというわけだ。
新登場の両機には、開発者陣の間では「40マル」と呼ばれる、公称径「45mm」のドライバーが用いられている。高磁力マグネットを使用したこのドライバーから放たれる音を、先述のように、滞ることなくそのまま耳に届けることに主眼を置き、ドライバーから生み出された空気の振動が、音響的なダクトや共振を利用すること無く、ダイレクトに届けることに注力されている。
一見すると、実にシンプルな発想に見えるが、これが大変に困難を極めるという。「隔てるものがないので構造的にはスカスカの状態でありながらも、限られたドライバーのサイズと容積の中で如何に低音再生を確保するのか。空気の流れをコントロールすることが大切になります」と鈴木氏。
開放型は密閉型と異なり遮るものがないため、密閉型であれば筐体内のダンパーや吸音材などで調整の幅を持たせられるが、オーディオテクニカが目指す「トゥルーオープンエアー」思想では、文字通り、ほぼドライバーのみで音をコントロールする必要があり、ドライバー自体の設計に腐心したのだという。よって、当然、搭載されるドライバーも、両機それぞれ専用設計のものとなっている。
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