HOME > レビュー > TADスピーカー製造現場で見た「匠の技」。旗艦機「TAD-R1TX」から最新鋭機まで6モデルも一斉試聴!

PR山形県の東北パイオニアと天童木工を訪問

TADスピーカー製造現場で見た「匠の技」。旗艦機「TAD-R1TX」から最新鋭機まで6モデルも一斉試聴!

公開日 2023/05/01 06:30 山之内 正
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

天童木工でエンクロージャー製造現場を見学



翌日、東北パイオニアの本社工場から車で数分の距離に本社工場を構える天童木工を訪ねた。天童木工の創業は1940年。80年を超える歴史を重ねた日本を代表する家具メーカーである。良質な木材の産地が近く、優れた建具・指物職人が集まっていた天童で家具建具工業組合を母体に創業したという経緯もあって、技術力はいまも群を抜いている。複雑な形状の成形合板で組み立てた優美な形の家具はファンの支持が厚い。

1940年に創業された天童木工。大工や建具、指物の業者が集まり「天童木工家具建具工業組合」を結成したことが始まり。当時は弾薬箱や木製のおとり戦闘機なども製作を手がけ、戦後は家具を主力商品として発展してきた

その天童木工とTADがタッグを組んでエンクロージャーを生産することになったのは2019年に発売された「TAD-R1TX」がきっかけだ。その後ブックシェルフ型の「TAD-CR1TX」を加えたフラグシップの2機種を天童木工と共同で継続して生産している。

2019年に発売された「TAD-R1TX」から天童木工とTADのコラボレーションがスタートした。美しい塗装の仕上げも天童木工の技術

天童木工に白羽の矢が立った理由をあえて説明する必要はないだろう。「TAD-R1TX」と「TAD-CR1TX」のエンクロージャーは、隔壁で堅固に支える骨格体と優美な曲瀬を描く側板を組み合わせた独自の構造を採用しており、共振を極限まで排除した「SILENTエンクロージャー」のコンセプトは高級スピーカーの世界でも異彩を放っている。樺合板を中心にした良質な素材で堅固なエンクロージャーを組み上げるために、最高水準の成形・加工技術が要求されることは想像に難くない。

天童木工は「加工できない形はない」と自負するほど技術志向の強いメーカーで、どんな難しい課題にもチャレンジする意欲的な姿勢に定評がある。そんな天童木工だが、ハイエンドのスピーカーを手がけるのは初めての経験ということもあり、TADからの打診に最初は慎重な姿勢を見せていたらしい。

「TAD-R1TX」のエンクロージャー製造に先立ち作られた簡易模型。どのようなパーツを組み合わせれば実現できるかなど、知恵を出し合って実現にこぎ着けたという

その後、TAD側からの熱心なアプローチが功を奏して共同製作の話がまとまり、「TAD-R1TX」のプロジェクトが発進したのだ。天然木の美しさを極限まで追求した「ベリルレッド」と「エメラルドブラック」の仕上げも含め、唯一無二の魅力をたたえた外観の美しさは例えようがない。

「高周波加熱プレス成形」でさまざまな形状を実現



優美な曲面を描く側板の形状は、高周波加熱プレス成形と呼ばれる高度な技術を用いて成形したもので、天童木工の技術力を駆使することで実現している。生産ラインには数十機の巨大なプレスマシンが並んでおり、成形する形状はそれぞれのマシンで異なっている。

エンクロージャーの製造工程の一部。左の緑色のマシンがプレス機械で、高熱を加えて少しずつ木を曲げてパーツを構成

プレスマシンが大きくなるのは金型の形状が複雑なことに加えて、高熱と高圧を加えるための装備が大きいことに理由があるのだが、椅子などの家具に比べても「TAD-R1TX」の側板は絶対的なサイズが大きいため、天童木工のプレスマシンのなかでも最大級の装置を使う必要があるという。高周波加熱プレスの時間は数十分単位と意外に短いのだが、素材の種類や形状に合わせた微調整が不可欠で、熟練スタッフがつねに装置に張り付いて細かく制御していた光景が印象に残っている。

熟練の職人たちの手で、高級家具と同じように組み上げられていく

プレス工程を終えたエンクロージャーは、組立て、塗装、研磨などの重要な工程を経て完成に近づくことになる。取材当日、「TAD-R1TX」と「TAD-CR1TX」が各工程を通過していく光景を目にすることができたが、高級スピーカーのエンクロージャーが大型家具群と同様なプロセスでていねいに組み上げられていく様子に筆者は強い印象を受けた。海外メーカーも含めてこれまで十数社のスピーカー工場を見学してきたが、高級家具と同じプロセスでラインを動いていく光景に接したのは初めてのことで、天童での強い感動体験の一つとなった。

天童木工の本社工場2階には広大なギャラリーがあり、同社を代表する高級家具群が一堂に介している。細部までこだわり抜いたデザインと精緻な仕上げの美しさはハイエンドオーディオにつながる要素が感じられ、楽しい時間を過ごすことができた。

天童木工のショウルームにはソファや椅子、テーブルなどさまざまなアイテムが展示されている

木材に熱を加えてプレスする「高周波加熱プレス成形」という高度な技術を用いることで、さまざまなデザインを実現できることが天童木工の特徴

次ページ東北パイオニア社内の試聴室で、TADスピーカーのフルラインナップを聴く!

前へ 1 2 3 4 5 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

関連リンク