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PRオーディオ領域外にも展開は広がる

30周年を迎え新たなステージへ、進化を続けるDTSのテクノロジーから目が離せない

2022/12/26 山本 敦
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2本のスピーカーでも「DTS Virtual:X」でサラウンド再生



オーディオのポストプロセッシングは、DTSのもうひとつの技術領域。その看板テクノロジーが「DTS Virtual:X」だ。リスナーを前後左右、天井方向から包み込むようなサウンドを、ユーザーが実現できる環境に合わせて柔軟に再現する、独自のバーチャライゼーション技術となる。

独自のバーチャライゼーション技術「DTS Virtual:X」

田野倉氏は「2本のスピーカーによるステレオ再生環境でも自然な没入感を再現できるところがDTS Virtual:Xの特徴」であると語る。そしてDTS Virtual:Xの強みは「コンテンツがDTSの音声フォーマットでエンコード処理されている場合に限らず、2チャンネルのリニアPCMや他社のサラウンドフォーマットによるソースであっても対応できる」とも説いている。さらにオプションとして、低音域の深みを向上させる「BASS Enhancement」と、ダイアログ(人の声/セリフ)の明瞭度を高める「Clear Dialogue」も備えている(各製品により Virtual:Xがサポートする入力フォーマットは異なる場合がある)。

今回、筆者はDTS Virtual:Xに対応するソニーの3.1chサウンドバー「HT-A3000」を試聴した。本機は小柄ながらパワフルなサウンドと明瞭な定位感を特徴とするサウンドバーだが、アクション映画のワンシーンでDTS Virtual:Xの効果をオンにすると、試聴室の隅々にまで音のエネルギーが満ちていく手応えがある。

一般的な家庭のリビングルームに比べると広いサイズの試聴室だったが、DTS Virtual:Xによって、まるで大きな劇場でサウンドを浴びているような充実感を味わった。部屋の壁や天井による窮屈な “縛り” が取っ払われ、伸び伸びと映画の世界に飛び込める。バーチャル再生なのに一粒ずつ音の存在感が際立って感じられるところに、音質に注力するDTSならではと言える魅力がある。

ソニー「HT-A3000」はDTS Virtual:Xに対応するサウンドバーの一つ

DTS Virtual:Xは現在、マルチスピーカーを配置した本格的なシアタールームに加えて、薄型テレビとサウンドバーによる組み合わせで楽しむスタイルも一般に広く普及している。一方で塚田氏によると「テレビスピーカーによるDTS Virtual:X再生」という、新たなイマーシブオーディオ再生のスタイルが立ち上がりつつあるという。

DTS Virtual:Xはサウンドバーだけでなく、技術としてはテレビ単体でも利用可能

そこで、dts Japanの試聴室にあるテレビのスピーカーを使って、あらかじめPCでポストプロセッシングを済ませた音源を出力して、擬似的に「テレビのスピーカーによるDTS Virtual:X再生」を体験する機会を作ってもらった。

音の聴こえ方については、テレビのスピーカーでも先刻のサウンドバーによる試聴と同様のリアリティを感じられる。そして何より、インターネットに接続するスマートテレビで、音声をステレオ収録しているYouTubeの動画コンテンツなどがイマーシブな音で視聴できる手軽さが魅力的だ。今後、テレビメーカーによる積極的なDTS Virtual:X対応にも期待したい。

ヘッドホンでの没入感を高める「DTS Headphone:X」



次に紹介するDTSのデジタルサウンドテクノロジーは、一般のステレオヘッドホンにより臨場感豊かなイマーシブオーディオ体験を可能にする「DTS Headphone:X」だ。

DTS Headphone:Xもまた、マルチチャンネルのサラウンド音源にポストプロセッシングによるバーチャライズ処理をかけて、2chのステレオヘッドホン・イヤホンによるイマーシブオーディオ体験が提供できる。今回筆者が試聴した作品『メアリと魔女の花』のUHD BD/BDディスクのように、DTS Headphone:Xのトラックを収録するタイトルが続々と増えている。

Windows PCやゲームコンソールのXBOXシリーズでは、「DTS Sound Unbound」アプリケーションをダウンロードすることで、ソフトウェア処理によるイマーシブオーディオが楽しめる環境も整っている。ゲームやウェブ動画が、DTS Headphone:Xにより臨場感あふれるサウンドになるメリットは大きい。

「DTS Sound Unbound」アプリを入れることで、PCでもバーチャルサラウンドを楽しめる

DTSはコンテンツクリエイターやポストプロダクションのスタジオエンジニアに向けて、DTS:Xのコンテンツを制作・配信するためのソフトウェアとしてDTS Creator Suiteを提供している。田野倉氏は、DTS Creator Suiteが標準的なDAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション )用のソフトウェアである「Pro Tools」のプラグインとして手軽に使えるツールであることを強調している。

このツールでは、ひとつのソースを用意すれば劇場用、ホームシアター、ヘッドホンなど各用途に合わせてパラメータを調整するだけで最適なソースの書き出しもできる。今後もDTSのデジタルサウンドテクノロジーを採用する作品が勢いよく増えることを期待したい。

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