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PR圧倒的S/Nと表現力

10周年で達した新領域。Astell&Kern新旗艦DAP「A&ultima SP3000」が鳴らす“衝撃”サウンド

2022/10/31 岩井 喬
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まず、アンバランス出力から試す。駆動力も高く、高域のエッジ感もきつさがなく、低域方向の伸びや傘も階調の細やかさを伴った上質な表現である。SP2000と比較すると、圧倒的にS/Nが高く、音が立ち上がる瞬間の空気の動きも鮮明であり、静寂感と余韻の階調性の美しさが数段上を行く感触だ。SP2000も、SP1000との比較では十分S/Nが高く音場表現力も優れていたが、その比ではない音場のリアリティ、臨場感の高さを味わえる。この辺りはセパレート方式DACならではのメリットといえるだろう。

Campfire AudioとAstell&KernのコラボIEM「PATHFINDER」と組み合わせて試聴

SP2000は押し出しよく音像を前に出してくる印象で、力強さと華やかさが同居したゴージャスなサウンドだ。質感表現も緻密で滑らかだが、SP3000と比較してしまうと輪郭の自然さ、その周囲に漂うエアー感の表現力ではかなわない。SP3000の持つアタック&リリースの正確なトレース能力は、これまでのDAPで聴いてきたものとは次元の違うものであり、新たな領域に到達しているように感じた。

クラシック音源では、オーケストラの旋律を潤い良く響かせ、個々のパートの輪郭の鮮やかさ、余韻の澄み切った音色を丁寧に引き出す。ローエンドはハリ良く伸びやかだ。ジャズ音源のホーンセクションは細くシャープに澄みわたり、演奏前のカウントもヌケ良く爽やかで臨場感に溢れている。シンバルの響きは柔らかさがあり、ピアノのアタックも引き締め良く輝く。スタジオの残響など、アンビエント成分も素直に聴こえ、空間性の正確さが際立つ。

ロック音源のディストーションギターは、リフの細やかなニュアンスを丁寧に拾い上げ、リズム隊も沈み込み良くクリアに表現する。シンバルの響きは芯を捉えたクリアなタッチで、ボーカルのハスキーさも鮮度良く描き切る。

11.2MHz音源では艶良くスムーズな女性ボーカルの口元をフォーカス良くソリッドに描写。ピアノの響きもブライトでパリッとした滲みのない輝きを見せる。アコースティックギターの弦は倍音の煌きが引き立ち、ヌケ良くカラッと響く。

SP2000との比較試聴も考慮し、バランス駆動は2.5mm端子を選択した。一聴して、さらに分離の良いキレ良くクリアなサウンドとなったことがわかる。低域方向も制動良く唸るベースも階調性良くまとまっている。

音場のS/Nも高く、ジャズ音源のカウントや、オーケストラの演者がスッと動き出すその瞬間の空気感も克明に引き出す。11.2MHz音源のピアノは、弦の一つ一つが粒立ち良く浮かび、ボーカルの息遣いまで生々しくクールに表現される。リヴァーブ成分のキメの細やかさ、奥行きまで緻密に描き、休符の静寂さもよりダイレクトに実感できた。

SP2000でも描写の緻密さや、音像のどっしりとした存在感を正確に表現してくれるが、SP3000との比較では、ディティールの粗さやリヴァーブ表現の曖昧さ、倍音表現の甘さが気になってくる。パワーがあり、ベースの太くどっしりとした安定感もまた魅力であるが、SP3000のような息をのむリアルな空気感の再現性までは及ばない。

最後に、4.4mmのリケーブルでSP3000のバランス駆動を試してみた。すると2.5mmよりも重心が低く、音像の質感もよりしっとりとした自然で厚みのある描写となった。プラグ部における接触面積の違いに加え、2.5mmではプラグ内部の端子までの結線の細さがボトルネックとなり、サウンドも幾分ピーキーなものとなる印象がある。もう+αで音にこだわるのであれば、バランス駆動では4.4mmを選択した方が良いだろう。

また、わずかな時間であるがライン出力設定を有効にし、バランス出力を据え置き型ヘッドホンアンプに繋いで聴いてみたが、空間表現の正確さに加え、ダイナミックで抑揚良く躍動的なサウンドを味わうことができた。AK4191+AK4499EXの持つ圧倒的なS/Nの良さは据え置き型の環境でも力を発揮してくれそうだ。



HEXAオーディオ回路構造がもたらす衝撃のサウンドは、イヤホン/ヘッドホンのように耳元の近い環境で聴くからこそ、より強く実感できるものだ。これまでと明らかに違う次元に到達した表現であることを確信し、喜びとして捉えることができるであろう。

他に先駆けて味わうことができる、AK4191+AK4499EXによるセパレート方式DACの優位性、サウンドの凄味を、ぜひSP3000で存分に堪能いただきたい。



■試聴音源
〇飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ コンサート2013『プロコフィエフ:古典交響曲』〜第一楽章(96kHz/24bit)
〇『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』〜届かない恋(2.8MHz・DSD)
〇Suara「キミガタメ」11.2MHzレコーディング音源
〇デイブ・メニケッティ『MENIKETTI』〜メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ(CDリッピング:44.1kHz/16bit)
〇Christopher Cross『Another Page』〜「Nature Of The Game」(192kHz/24bit)
〇井口裕香『HELLO to DREAM』〜We are together!!(96kHz/24bit)




(協力:アユート)

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