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トライムのデモカーでテスト

カーオーディオでも要注目!ハイエンドDAP3機種の“デジタル出力”を聴き比べ

2022/04/27 土方久明
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■ハイエンドDAPの “USBデジタル出力の品質” をチェック

車内空間に理想の高音質環境を作ることに挑む、「カーオーディオ」の世界。古くからそのファンは多く、その音質を競う「カーオーディオコンテスト」という競技が全国で行われているほどだ。

今回は、そんなカーオーディオコンテストに参加者向けの企画として、最新のハイエンドDAP3台の音質をテストした。特に一般的なDAP比較レビューとは異なり、“USB出力品質” を比較したことに注目していただきたい。

土方久明が最新の注目DAP3種類を徹底比較!

レビューに入る前に、まず現在のカーオーディオコンテストにおけるDAP使用状況や、そのポイントについて簡単に紹介しよう。現在、カーオーディオコンテストのミドルクラスからハイクラスに出場する車両は、ハイレゾ対応のヘッドユニットやDAPをプレーヤーに使用し、DSPで各スピーカーの帯域分割やT/A(タイムアライメント)等を行っている。DSPでは2WAYから5WAY(!)までの帯域分割やタイムアライメントを、デジタルドメインで実施した上でアンプに引き継ぐという構成だ。

全国各地で開催される「カーオーディオコンテスト」に向け、ディーラーもユーザーも音質チューニングの腕を競い合う

カーオーディオの音質を決める要素としては、スピーカーの取り付けやDSPの調整などを担うインストーラーの手腕が大きいが、それが担保できている場合、オーディオ機器の入り口であるDAPの出力品質が最終的なクオリティに大きく影響する。だから、DAPの能力が常に注目を浴びているのだ。

毎年開催されるヨーロピアンカーオーディオコンテストの様子。100台以上の車が全国から集結する

カーオーディオコンテストの審査の様子。審査員がひとつひとつの車を試聴して点数をつけていく

今回試聴した3台のDAPは、価格順にiBasso AudioのAV KANSAI特注モデル「DAP300APEX Ti」、Astell&Kern 「A&ultima SP2000T」、ソニー「NW-WM1ZM2」である。この3台を、フランスのカーオーディオブランド、BLAM(ブラム)等を輸入するトライム(株)のデモカーでテストした。

左からAstell&Kern 「A&ultima SP2000T」、SONY「NW-WM1ZM2」、AV KANSAIの「DAP300APEX Ti」

改めて注意したいのは、今回のレビューは、“USBデジタル出力の品質” となり、DAP内蔵のDAコンバーターやヘッドホンアンプ部はオミットされるということ。ここが一般的なDAP比較レビューとの違いとなる。

■今回取り上げる3種類のDAPの詳細を紹介

ということで、まずはDAP各種の特徴から見ていこう。

【DAP300APEX Ti】

「DAP300APEX Ti」

DAP300APEX Tiは、大阪のホームオーディオ/ビジュアル/カーオーディオショップのAV KANSAIが特注したカーオーディオ特化型のDAPだ(店頭在庫のみ)。数値的に並べれば今回の試聴で最も安価だが、それでも30万円するハイエンドモデルである。

スタンダードモデルの「DX300MAX」をベースに、USB回路周りにコンデンサーを追加するなどして、ノイズを低減させ、カーオーディオ向けにUSB出力の品質を上げている。本体サイズは今回試したモデルの中ではもっとも大きく、重量は700g。DACチップはESS社「ES9038」のシングル構成で、デジタル出力はUSB TypeC(OTG)とCoaxialが各1系統搭載される。

「Android OS」のほか、音の良さを追求したという専用OS「Mango OS」も採用したデュアルOS仕様も魅力。車載利用時のユーザビリティも考慮され、USB端子の他に充電用の端子を搭載し、USBからデジタル出力を行いながら同時充電を可能としている。また、車のエンジンのON/OFFに本体の電源が連動する「カーオーディオエンジン連動モード」や音楽の自動再生が可能な「カーオーディオ自動再生モード」が使用できる。

【A&ultima SP2000T】

「A&ultima SP2000T」

Astell&Kernの「A&ultima SP2000T」は、同ブランドのフラグシップモデル。筐体素材はアルミ、重量は309g。DACチップはESS社「ES9068AS」4基とAKシリーズ初のクワッド構成で、デジタル出力はUSB TypeC(OTG)と光(3.5mmヘッドホン出力端子と共用)を各1系統搭載する。

同社独自の「TERATON ALPHA(テラトン・アルファ)」モジュールの採用により、主要回路が一体化され、効率的な電源管理を実現し、パワーノイズや歪も抑えられている。

さらに、OP-AMP(オペアンプ)/TUBE-AMP(真空管アンプ)/HYBRID-AMP(ハイブリッドアンプ)モードという、3つのモードで音調を可変できるのが大きな特徴で、DSPとアナログ接続する場合では、この3つのモードが生きてくる。

【NW-WM1ZM2】

「NW-WM1ZM2」

3月25日に発売されたソニー待望の新型フラグシップDAP。2016年に発表され、カーオーディオ用途でも人気があった「NW-WM1Z」の後継モデルだ。筐体には純度約99.99%の無酸素銅を切削した上金メッキが施され、シャーシのインピーダンスを大幅に低減。中型筐体にもかかわらず、質量は490gもある。

OSは「AndroidOS 11」を採用し、切望されていた音楽ストリーミングサービスへの対応を果たしたほか、データ転送や充電用のポートが、WMポートからUSB TypeC(USB3.2 Gen1準拠)へ変更されたため、カーオーディオ用途での使いやすさも大幅に向上した。

大元の電源部には、急激な電圧低下を防ぐ大容量かつ低ESRの新開発固体高分子コンデンサーが搭載される。

■USBケーブルの品質も重要。デモカーのレファレンスシステムも紹介
 
続いて、DAPと組み合わせるUSBケーブルについても改めて解説したい。実は今回、ここにこだわっている。なぜならDAPからDSPまでの音質を決める大きな要素だから。

チョイスしたのは、サエクが発売するケーブルの最上級モデルにのみ与えられる称号「STRATOSPHERE(ストラトスフィア)」を冠したSUS-020だ。新導体の「PC-Triple C EX導体」を採用し、5Nの銀でくるんだ二層構造で、105%(IACS)もの伝導率を誇る。

シース素材は「難燃性PVC」、絶縁体には比誘電率特性が良いフッ素樹脂を採用し、信号伝送特性を左右する静電容量を抑制。ノイズ対策のための構造も凝っている。ツイストペアシールド/アルミ箔シールド/銅編組の3重シールドを採用するのだ。さらに、「スーパーコンピューター京」の配線処理技術を持つ企業でケーブル周りの加工が行われているという。

USBケーブルには取り回しもしやすいサエクの「STRATOSPHERE」を使用

実は本ケーブル、僕自身が昨年ファイルウェブでの取材後に音の良さに惚れ込み、USB A-Bタイプを僕の家のリファレンスケーブルの1本として使用しているほど気に入っている。また、SUS-020は大変柔軟性が高い。配線の取り回しに制約の多いカーオーディオ用途で、この柔軟性はひとつのアドバンテージとなっている。

試聴に使用したトライムのデモカー、フォルクスワーゲン「Golf Variant」のオーディオ構成についても軽く触れておこう。

トライム(株)のデモカー、フォルクスワーゲンのGolf Variantでテスト

本車両のオーディオシステムは、BLAMの新フラグシップライン「Signature Multix」に属する、 3ウェイ+2基のサブウーファーの合計4ウェイ8スピーカーを搭載する。

BLAMのフラグシップ「Signature Multix」シリーズのトゥイーター(左)とミッドレンジ(右)

ドアに取り付けられたミッドバス

DAPからの経路は、DAP → オーディオテクニカのデジタルトランスポート「AT-HRD5」をUSBケーブルで接続→ AT-HRD5でUSBデジタルから光デジタルにDD変換を行い、光デジタルケーブルでaudisonのDSP「bit one HD Virtuoso」と接続。さらにそこから有線LANケーブルで、audisonのDAコンバーター内蔵パワーアンプ「AV5.1K」 にデジタル入力するというフルデジタル構成である。

トランクルーム下に据え付けられたオーディオシステム。audiosonのDSP(中央)とアンプ(左右)で駆動される。奥は2基のサブウーファー

audiosonのフラグシップDSP「bit one HD Virtuoso」。96kHz/24bitの内部処理に対応する

そのほか、ホームオーディオでも人気のKOJOのバーチャルアース等、アクセサリー類もふんだんに使っている。

KOJO TECHNOLOGYの仮想アースも車載用途として大ヒットしている

■コンテストの課題曲も使って聴き比べ

それでは、いよいよ試聴に入ろう。今回は、筆者が女性ポップスのリファレンスとしているアデルのほか、4月2日から3日に大阪で開催された「春のプチ車音祭」や、5月15日(西日本)・6月19日(東日本)に開催される「ヨーロピアンサウンド・カーオーディオコンテスト」で使用される一部の課題曲を用いた。

ポップス
・アデル「Easy on me」(from 『30』)【44.1kHz/24bit】
・エド・シーラン「Bad Habits」(from 『=』)【48kHz/24bit】

クラシック
・Berliner Philharmoniker/ジョン・ウィリアムズ
「Throne Room & Finale[From "Star Wars: A New Hope"]」 (from『John Williams: The Berlin Concert』)【192kHz/24bit】
・Helsinki Philharmonic Orchestra
「Concerto for Orchestra, Sz. 116: V. Finale」 (from 『Bartók: Orchestral Works』)【96kHz/24bit】

なお3モデルとも、ホームオーディオのトランスポートテスト同様に、音調や音色の変化は予想以上だった。分解能、聴感上のS/Nによるノイズフロアの変化、音の固さ/柔らかさ、低域レンジの伸び、力感などが違ってくる。

DAP3機種の描き分けの違いをチェックする土方氏

「DAP300APEX Ti」は、カーオーディオに特化したモデルというだけあり、一聴してS/Nが高く、透明感のある音だ。ニュートラルな音調で、柔らかくもなく硬くもない中間の質感を持ち、3台の中で最も音に癖がない。アデルのボーカルの空間の浮かび上がり方やエド・シーランの楽器の立体感が良質で、リアリティも感じる。音色についてはそこまで付与せず、そのまま出してくる。ジョン・ウィリアムズなどクラシックのコントラバスなど低域楽器は張り出しや迫力こそ控えめなものの、ローエンドは忠実に伸びている。グラモフォンレーベルの少し柔らかい音色、音調がよく表現できていて、ノイズフロアが低いことでサウンドステージも広く奥行きもある。

「A&ultima SP2000T」は、若干ハード傾向の音で、スピード感があるのが印象的。本DAPは楽曲全体の解像感を高く表現してくれ、アデルのボーカルは張り上げた時に少しハスキーに聴こえるが、この声質を好む方もいるだろう。音のヌケなどのS/Nについても良い。なお、全帯域のディテールを解像感高く表現するタイプのため、ジョン・ウィリアムズでは、オーケストラの各楽器の中でヴァイオリンなどは若干硬さも感じる。一方で、エド・シーランなどのエレクトリックシンセサイザーなどはスピード感があって好印象。

「NW-WM1ZM2」は、音調や音色にしっかりとした個性があり、特に歪み感がなく柔らかくて音色が良い。聴感上の透明感もあるが、それ以上に全帯域に力と色艶があり、アデルのボーカルは血の通った表現で聴かせてくれる。ピアノはディテールが柔らかく、歪みがないウォームな音楽性を感じる。ジョン・ウィリアムズは弦楽器からトランペットなどの金管楽器に色彩感の魅力を感じる音で、クラシックとの音楽的な相性の良さを感じた。分解能は高いが、聴感上の解像度は主張せず、ヘルシンキオーケストラはアキュレートな音場表現で、奥行きに関しては幅広く聴かせる印象だ。



いかがだったろうか。本試聴は最新かつハイエンドの3台のDAPを、USB出力で比較できるまたとない機会となったが、音色、音調が予想以上に違った。DAPのデジタル出力の品質を決めるファクターとして、シャーシの剛性や内部のEMIなどの電磁波対策、電源やクロックなどのデジタル回路、そしてUSB出力回路周りの品質やノイズ対策、OSや内蔵プレーヤーの音質など様々な要素があるが、流石に今回の3台はハイエンドモデルだけあり、音質は一定以上の満足できるレベルに達していた。

また、今回使用したトライムのデモカーの調整が良質だった(正しい帯域バランスを持ちステージング、音像のフォーカスもよく調整できていた)ことと、DAPの個性を再現できる良質なサエクのUSBケーブルを使用できたことも大きい。

比較的ハードな音質のSP2000T、ウォームで全帯域の力感があるNW-WM1ZM2、ニュートラルな音でノイズフロアの低く、かつ分解能の高いDX300APEX Tiといった感じで、各DAPのしっかりとした個性を感じられたのが印象的だ。

ファイルウェブではこのような比較記事や入門からハイエンドまでのカーオーディオ関連の話題も今後特集していく所存だ。ぜひご期待いただきたい。

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