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レコード針先で知られるアダマンド並木精密宝石のブランド

高精度な“サファイア”加工技術でオーディオアクセサリーに参入! オルソニックの珠玉アイテムを徹底レビュー

2021/11/25 福田雅光/鈴木 裕/炭山アキラ
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世界の名だたるカートリッジのレコードの針先を供給する、アダマンド並木精密宝石(以下アダマンド並木)が立ち上げたアクセサリーブランド「ORSONIC(オルソニック)」。このブランドから、高硬度の“サファイア”を用いたオーディオアクセサリーが登場した。

フィロソフィーに、“21世紀の最先端技術を駆使して新たなアナログサウンドに創り変える”を掲げ、アダマンド並木が得意とする「単結晶素材」「超平坦研磨技術」「先端加工」といった最新技術を結集。今回は3名の評論家が、オーディオアクセサリー銘機賞2021を受賞した3アイテム、インシュレーター、スタビライザー、カートリッジスペーサーを徹底解説する。


写真左から、スタビライザー「OS-101」(39,600円/税込)、カートリッジスペーサー「OS-201」(16,500円/税込)、インシュレーター「OS-301」(4個セット、110,000円/税込)※3個セットの「OS-302」88,000円/税込も用意

■結晶サファイアを採用しアクセサリー分野に再進出(福田)

アダマンド並木をご存知だろうか? “レコード針のメーカー”として知っているオーディオマニアも多いだろう。間違いではないが、実は製品の一部は毎日持ち歩いて使っているくらい、慣れ親しんだメーカーなのである。

例えば、スマートフォンの着信振動。これに使われる超小型振動モーターは、アダマンド並木が世界で初めて開発に成功し、現在では世界中で使われている。コアレスモーターは、回転子に鉄心のないDCモーターの一種。小型で高効率。精密、小型軽量部品は、宇宙産業やロボットの指の動作などにも欠かせない。また、医療現場でも生命維持を担う点滴装置の高精度ポンプなど、一般に目にすることのない分野でも大きな仕事をしているのだ。もちろん、レコードの再生針、カッティングマシンの針も作り、その活動範囲は多岐にわたる。

オルソニックとは、アダマンド並木が立ち上げたアクセサリーブランド。1978年のアナログ全盛時代に誕生し、全ての音を忠実に再現することを目指して立ち上げられた。2020年に、世界最高レベルの単結晶サファイア品質を採用し、オーディオアクセサリー分野に再進出。

ダイヤモンドの精密加工技術から派生した伝統技術により、インシュレーター、レコードスタビライザー、カートリッジ用スペーサーの製品化を実現した。サファイアは、スマホのレンズカバーにも使われるほど、限りなく不純物のない超高純度で無色透明。しかもダイヤモンドに次ぐ硬度の高さが魅力的だ。

レコード再生針や録音針で、国内外のレコード市場を一世風靡していたアダマンド並木が1978年に立ち上げたブランド「ORSONIC(オルソニック)」。1970年代のレコード全盛期に、“究極の音”を目指したレコード愛好家を唸らせるべく、オーディオのエキスパートとして、ターンテーブルやトーンアーム、同軸ケーブルなどのオーディオアクセサリーを次々に商品化。しかし、1980年代後半に惜しまれつつもORSONICは休止に入る。そして2020年、満を持して再始動を発表した。

■ダイヤモンドに次ぐ硬度でヤング率が高く音速が速い
 
そもそも人工サファイアは、どのようにして作られるのだろうか。同社はEFG法による製品サイズに適した、形状制御結晶連続製造法を導入し、独自に発展させた。「板状」「円柱状」「パイプ」など、2000度の融点温度で溶かした原料から連続的に引き上げ、均質性に優れた単結晶サファイアを生産している。

組成均質性が高い結晶が得られるEFG法により、長尺・大口径のサファイア製造が可能。ナノオーダーで研磨する技術を用いて、素材の良さと超精密加工技術を高次元に融合した

そのスピードは一時間に10〜20o程度。そして完成した素材を超精密加工技術で高度なオーディオ用製品に仕上げている。インシュレーターは、超平坦研磨加工することで、接触歪みを完全に遮断し、共振を抑えた高速伝搬性能を実現。その精度の高さに驚くばかりだ。

それでは、サファイアの物性はどのようなものか。ダイヤモンドに次ぐモース硬度9の酸化アルミニウム結晶で、天然では美しいブルーや不純物の種類によりルビーのような色が生まれる。化学的安定性にも優れ、「ヤング率」が高く音速が速い特性がある。ヤング率とは、材料の物性を語る重要な値で、硬さを示す定数。高い方が硬く応力による歪みが少なく、変形しにくい材料になる。その数値はダイヤモンド1000、炭化珪素440、ホウケイ酸ガラス60などに対して、サファイアは470と高い数値を誇る。

ダイヤモンドに次ぐ硬度のサファイア単結晶材料を超平坦研磨加工する。サファイアは、化学的安定性や熱伝導性に優れ、ヤング率が高いため、音速が速い特性をもつ

■オーディオファンが夢みた革新的なアクセサリー
 
今回のサファイアアクセサリーは、人造ダイヤモンドも生産する秋田県のアダマンド並木湯沢工場で製造されている。レーザーなどの先端超精密加工技術を活用する純国産品だ。

レコード針も生産するアダマンド並木の秋田湯沢工場にて、サファイア結晶育成や研削、 研磨、加工までの工程を行う。常に品質をチェックし、純日本製の品質保証を行っている

試聴テストには、自宅試聴室で常用しているレファレンスを使用した。インシュレーターは、直径60φ厚さ5o。SACDプレーヤー(マランツのSA-11S3)の脚の下にセット、オーディオボードとの間でテストした。

ここには別のインシュレーター(タングステン)を併用していたが、サファイアに交換すると音質、表現力は大きな変化が現れる。帯域特性を改善しながら透明度を高め、レスポンスは格段に改善される。中域高域特性の精度が向上し、全体の解像度が高くなる。また、この帯域での混濁が減少し、SN比に加え歪み感の発生が少なくなっている。低域から中域にかけては、緩み膨らむ傾向もない。引き締まり、ダンピングを強化する効果を見せる。したがって、全体にコントラストがはっきりした表現である。この効果の傾向はむろん活用したくなるものだ。

スタビライザーは直径38φ、厚さ20o、重量87g。小型で軽量であるが、レコードスタビライザーは重さで抑える常識から脱皮する必要がある。安心感とは裏腹に副作用もあるからだ。針トレース時に発生し、盤面を伝わってくる歪み成分を対策することで効果をもたらすことは、これまでの実験でも検証してきた。

さて、サファイアはどうだろう。微妙なノイズ感が減少してSN比を高める。音質は澄んでくる。そして音の立ち上がりを改善、冴えた高音情報を表現。中高音の解像度、トランジェントを良くすることで切れ味のいい音になる。従来の高重量スタビライザーとは異なる魅力を出してくるところが、サファイアの特徴である。

スタビライザーを試す福田氏。従来の高重量スタビライザーとは異なる魅力を引き出していた

カートリッジとヘッドシェルの間に併用する、スペーサーも試した。ここも影響力の大きな部分である。現用のヘッドシェルは、ビクターが1986年頃に開発した高剛性炭化珪素ファインセラミックを採用したPH-L1000である。これはサファイアに近いヤング率があるため、サファイアのスペーサーとの相性はベストではなかった。一般的なアルミシェルを用いれば、L1000のような性能に近くなることが期待できる。

スタビライザーやインシュレーターの効果は、サファイアならではの作用を確認することができた。また高純度でヤング率の高い物性は、極めて固有なクセを発生しないことも魅力的であった。オーディオファンが夢にまでみた高硬度のサファイアを用いた、革新的なアクセサリーの登場に祝杯をあげたい。

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