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【特別企画】音質を徹底的に重視した設計

デノン初完全ワイヤレス「AH-C830NCW/C630W」の“独創的な音”はどう作られた? サウンドマスターが語る開発秘話

公開日 2021/10/19 06:30 山本 敦
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オーディオの音づくりにおいては百戦錬磨の達人である山内氏にとっても、完全ワイヤレスイヤホンの音質チューニングには「振動板にドライバー、アンプまで一体の音づくり」ができる新鮮な面白さがあり、自身も熱中して取り組んだという。

スピーカーやヘッドホンに負けない、立体的で広がり豊かな音場をイヤホンで実現するために、例えば「左右センターチャンネル、それぞれの間にある音像を明快に描き出し、有機的な音のつながりを生む音場に磨きをかける」ことを丁寧に貫いてきた。

筆者も830NCW、630Wのサウンドを初めて聴いた際に、自分がいま耳に着けているデバイスがイヤホンであることを確認してしまったほど、雄大な音の広がりに思わず息を呑んだ。まるでコンサートホールやライブ会場に出かけて、音楽を全身で浴びながら聴いているみたいに張り詰めた緊張感が肌を突く。目の前に迫り来るようなボーカルの臨場感、バンドの演奏はディティールに富んでいる。

830NCWは低音の肉付きも良く、音楽の足場が堂々と安定している。630Wの爽やかな中高域、切れ味鋭い低音のスピード感もまた他の完全ワイヤレスイヤホンではなかなか味わえないほどに魅力的だ。

音場が豊かに広がる様子は大編成のオーケストラやジャズバンドの演奏を聴くと明らかだが、小編成のアコースティックバンドによるポップス、プログラミングを多用したEDMを聴いてみてもやはり清々しく鮮明な躍動感が得られる。どんな音源を聴いてみても、デノンのイヤホンはユーザーを生の音楽が演奏される空間へ瞬時に誘ってくれる。

■吟味された特注ドライバーを搭載

ハウジング内部の有効面積を最大に活用しながら、鮮やかな中音域のプレゼンス、タイトで肉付きの良い低音再生を実現するため、上位の830NCWは11×10mmの楕円形振動板を搭載した。

AH-C830NCWのドライバーユニット。真円ではなく卵型に近い11×10mmの振動板サイズが特長だ

AH-C630Wのドライバーユニット。こちらは直径10mmの真円タイプを採用する

「卵型としたのは筐体内部の有効面積を目一杯使いたかったためです。大きさは情報量の多さにも繋がりますし、このサイズは本機の魅力のひとつである音場表現にも寄与しています」と、山内氏。振動板の素材は両機種とも同様でスーパーエンジニアプラスチックの一種「PEEK(Poly Ether Ether Ketone)」を採用。音質のために吟味を重ね、エッジ部も補強を行うなど、830NCWと630Wともにドライバーユニットを特注している。

また、830NCW、630Wともに大口径のダイナミック型ドライバーを小ぶりなハウジングに収めきり、心地よい装着感が長続きするデザインを追求した。スティック型のデザインとした背景には、ステムを外耳のくぼみでグリップして装着感を安定させる狙いもあった。山内氏は「イヤホンのデザインには24種類のサンプルを作り、試用した多くの方々の声を反映した」と説明している。

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