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Appleとソニーの“立体音楽体験”を比較!「空間オーディオ」と「360 Reality Audio」はここが違う

公開日 2021/06/10 06:30 山本敦
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空間オーディオと360RAを聴き比べる

Apple Musicのドルビーアトモスによる空間オーディオと、360 by Deezerの360RAに対応する音楽コンテンツを聴き比べてみた。前者はAirPods Maxを、後者はソニーのWH-1000XM4をリファレンスのヘッドホンにしているが、それぞれをシャッフルしながら聴き比べてもいる。

AirPods MaxとiPhone 12 Pro Max。Apple Musicのドルビーアトモスによる空間オーディオをベストコンディションで楽しめる組み合わせだ

ソニーのWH-1000XM4とDeezerのコンテンツ。アプリによる最適化を済ませてから試聴した

両方のサービスに共通して存在するアーティスト・アルバム・楽曲の立体音楽作品が見つからなかったため、せめてアーティストをマービン・ゲイに揃えて、Apple Musicは『What's Going On』、Deezerは『Sexual Healing』を聴いた。

Deezerの360RAコンテンツは、むやみな強調を抑えた自然な立体感が持ち味。ボーカルやパーカッションの繊細なニュアンスをクリアに引き立たせる。比べて聴くと、Apple Musicのドルビーアトモスによる空間オーディオはよりドラマティックな印象を受けた。サラウンド効果が不自然に感じられることはないが、ボーカルや楽器の音像を描く輪郭線が太く、音色がよりビビッドだ。

そしてディティールの描き込みと立体感のバランスは、やはりベストなヘッドホンと音楽サービスの組み合わせどうしで一番収まりがよくなる。ただ、それぞれに「どんなヘッドホンとの組み合わせもOK」だし、十分にリアルな没入感が味わえることを確認できた。

それぞれのアプリに搭載されているイコライザー機能を使えばサウンドをより好みに合わせてカスタマイズができる

今後それぞれの対応コンテンツは増える見通し

360 by Deezerで楽しめる360RAコンテンツの数は1,000曲前後のようだが、ざっとアーティストを見渡した限りそれなりに楽しみ甲斐がありそうに思う。大滝詠一、鬼頭明里、Doul、高中正義に森高千里など少しずつ邦楽アーティストの作品も加わっている。Deezer HiFiの月額利用料金が1,470円とApple Musicより少し高めになるが、聴き比べを楽しむ価値は十分にある。

Deezerには邦楽アーティストやソニーミュージックのアーティストによる360RAコンテンツがある

Apple Musicのドルビーアトモスによる空間オーディオはまだスタートしたばかりなので、邦楽やクラシックのオーケストラ作品などはこれから段々と増えるはずだ。

アップルによると、空間オーディオに対応するコンテンツを制作するためのツールはmacOS対応のデジタルオーディオワークステーション「Logic Pro」に直接組み込まれるかたちで年内にアップデートのリリースが予定されているという。多くのミュージシャンや音楽クリエイターが、Apple Musicと互換性のある空間オーディオ作品を制作できる環境が整うことになる。

筆者が調べた限りでは、Apple Musicのドルビーアトモスによる空間オーディオが楽しめるタイトルの中に、現時点ではまだソニーミュージックに所属するアーティストが見当たらないようだった。

アップルではiPhone、iPadにMacなど同社のデバイスを使って再生しながら楽しめる没入型3Dサウンド体験の総称を「空間オーディオ」としており、ここにドルビーアトモス以外の立体音響技術を使って制作された作品が加わることを歓迎している。

今後「360 Reality Audioによる空間オーディオ」が登場した時に、ソニーミュージックのアーカイブ作品もApple Musicによる空間オーディオ体験に対応するのだろうか。期待しながら待ちたい。

何はともあれ、Apple Musicの新コンテンツは追加料金なしで楽しむことができる。ぜひ環境を整えて試してみることをおすすめしたい。

(山本 敦)

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