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<山本敦のAV進化論 第200回>

ソニーの「360 RA」対応スピーカー速報インプレッション!初の邦楽作品も聴いた

公開日 2021/04/07 06:30 山本 敦
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RA5000は力強く粘っこい低音を土台にした安定感に富んだサウンドを特徴としている。音場の広がりも立体的であり、オブジェクトの定位も鮮やかだ。Doulの楽曲は足もとの方向から鋭く響いてくるリズムに身体を貫かれる。ボーカルや楽器のリアルな存在感がとても身近に感じられる。Greensleevesはオブジェクトの移動感に注目したいタイトルだ。RA5000は音場の見晴らしがとても良く、音のオブジェクトの移動を鮮明に描く。

360度全天球に広がる音場に継ぎ目がなくサウンドの一体感に富んでいる。粒だちのよいパーカッションの音が緊張感を高めてくれる。ハイレゾ級スピーカーならではの解像度の高さも貫禄を感じさせる。サキソフォンが演奏するメロディの旋律はとても滑らかだ。360度に広がる空間の中にゆっくりと溶けていく余韻にふんわりと包み込まれるような贅沢なリスニング体験を味わった。ピアノの旋律も繊細なタッチが蘇る。

RA5000はMusic Centerアプリのサウンド設定から「上向きスピーカーレベル」を高/中/低の3段階から好みに合わせてアレンジできる。スピーカーと正面から向かい合って音楽に集中して聴く時には、レベルを「低」にすると立体サウンドが真っ向からぶつかってくるような迫力が味わえる。反対に、広い部屋でパーティーサウンド的に360 RAサウンドを漂わせるのであれば「高」に設定してもいい。コンサートのライブ録音系の楽曲を聴く時にもレベル設定を好みに合わせてアレンジすると面白そうだ。

RA5000は上向きスピーカーのレベル設定が切り換えられる

低音の量感調整などにEQ機能を活用したい

音のつながりとまとまりに富んだRA5000の360 RAサウンドに対して、RA3000はよりシャープで刺激的な印象を受けた。高さ方向への音の広がり方も一段と開放的だ。バランスに過度な強調感はないものの、やはり360 RA独特の包囲感をより強く印象付けるチューニングに仕上がっているように思う。

RA3000は2基のビームトゥイーターにより高さ方向にも広がり感の豊かなサウンドを再現する

80mm口径の大型フルレンジユニットの音をオムニディフューザーを使って水平方向へ均等に拡散させる本機の構造が奏功して、とてもワイドで見晴らしの良いサウンドスケープが広がる。Doulの楽曲は緊張感が張り詰めるステージの様子が立体的に浮かび上がる。RA5000のように上向きスピーカーを搭載していないが、高さ方向に華やかな音の広がりを感じる。低音はRA5000ほど肉厚ではないがパンチ力が鋭い。

続けてGreensleevesを聴いてみても、やはり空間の見晴らしがとてもクリアで、クールなビートが炸裂する。描き出される音場は天井がとても高く、パーカッションの音色が縦横無尽に行き交う様子をリアルに描いてみせる。ピアノやバイオリンなど弦楽器の音色は少し固めな印象も受けるが、芯がしなやかで凜とした表情を垣間見せる。リズム楽器はハイハットやスネアによる高域の華やかな余韻に持ち味が感じられた。

今回2つの楽曲を聴いた限り、ソニーのスピーカーによる360 Reality Audio体験は「音の海を泳ぐ」というイメージではなく、地に足を付けながら「音の森林浴」により聴覚をさらに鋭く研ぎ澄まして、全身で音楽を味わうような斬新なエンターテインメントであるように感じられた。

どちらのスピーカーもそれぞれのキャパシティに合った部屋で再生すると、リスナーが音を聴く場所を変えてみても360度全方向から包み込まれるようなリスニング感が楽しめる。リビングルームのような広い部屋で音楽を再生しながら、複数のリスナーが上質なサウンドを共有できるスイートスポットの寛容さもまたソニーのスピーカーの魅力だと思う。

RA5000はハイレゾ再生、DSEE HXにも対応する

上位モデルのRA5000はAmazon Music HDのハイレゾ&ロスレス再生にも対応している。または本体のステレオミニ入力からハイレゾ音源を入力した場合もネイティブ再生が可能だ。SpotifyやApple Musicなどロスレス品質以上でのストリーミングに現在対応していないサービスも、RA5000はDSEE HXによりハイレゾ相当の音質にアップコンバートしながら再生できる。

Amazon Music HDで配信されているノラ・ジョーンズのライブ録音盤『'TIL WE MEET AGAIN』から「Don't know why」を聴くと、音の波がうねるようなコンサートホールのスケール感がリアルに伝わってくる。温かみあふれるボーカルと躍動するピアノ、骨太なベースとドラムスのリズムに身を委ねながら聴く。かなりどっしりとした低音が出せるスピーカーなので、材質のしっかりとしたラック、またはスピーカースタンドやスピーカーボードなどの制振アクセサリーを活用すると、ハイレゾ再生時にも高い効果が得られると思う。

RA5000とRA3000には通常のステレオ音源もソニー独自のアルゴリズムにより、立体的で広がりのあるサウンドに変換しながら聴ける「Immersive Audio Enhancement(IAE)」という機能がある。こちらの機能をオンにすると、360 RAのほかAmazon Music HDのハイレゾ、ドルビーアトモスの立体音源を除くコンテンツを再生した場合有効になる。

Immersive Audio Enhancementの切り替えはアプリからも選べる

RA5000にiPhoneをBluetoothでペアリングしてから、IAE機能のオン・オフを切り換えて聴き比べた。オンの状態では華やかな空間の広がり感がより強くなり、ボーカルやピアノなどセンターに配置された主旋律の定位はやや奥まるような感覚があった。BGMっぽく再生を楽しむなら機能をオンにして、反対に音源をじっくり聴き込みたい時にはオフにするといった使い分けも楽しめそうだ。

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