HOME > レビュー > メディアサーバーの革命児aurender。デジタルノイズ対策の徹底がハイエンドDACの旨味をさらに引き出す

<連載>角田郁雄のオーディオSUPREME

メディアサーバーの革命児aurender。デジタルノイズ対策の徹底がハイエンドDACの旨味をさらに引き出す

公開日 2021/03/31 07:00 角田郁雄
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

■音の鮮度の高さが大きく変化。静寂感が増し、音楽に深みを感じさせてくれる

私は今回、dCS「Vivaldi DAC」と本機を前述のAES/EBUデュアル・ワイヤーモードで接続し、スフォルツァートの10MHzクロックジェネレーター「PMC-Pyxis」も接続しました。そして、「Vivaldi DAC」には「Vivaldi Clock」を接続しました(なお、今回は試せませんでしたが、dCS製品のオーナー向けに、aurenderがdCSと共同開発したワードクロック同期機能があります。オプション販売品となるアダプターを使い、すべてのdCSのシステムをワードクロックで同期させながらファイル再生を行うことができ、再生するファイルのサンプリング周波数の変化にも自動的に追従するため、dCS製品のオーナーから高い評価を得ているそうです)。プリアンプにはジェフ・ロゥランドの「Corus+PSU」、パワーアンプはブルメスター「911Mk3」で、B&W「802 D3」をドライブしました。

スフォルツァートのマスタークロック・ジェネレーター「PMC-Pyxis」から10MHzクロックを供給

ジェフ・ロゥランドのプリアンプ「Chorus」に強化電源「PSU」を追加

普段の再生では、広い音場にリアルな演奏が描写されることに心がけていて、音質的には高解像度かつ静寂感を引き立てる透明度の高い音質を追求し、刺激感のない聴き疲れのしない音にしています。

本機の使用により大きく変化したことは、音の鮮度の高さです。解像度は一気に高まり、演奏のリアリティが高まった印象を受けます。楽器や声の微細な響きもクローズアップされ、生々しい演奏を体験できます。さらに実感したことは、静寂感が今まで以上に増し、音楽に深みを感じさせてくれたことです。

もう一つは、収容されていたCDリッピング音源を再生した時の音です。CDの高解像度再生と言いたくなるほど、音が瑞々しく生々しい演奏を体験させてくれました。48kHz/24bitの楽曲を再生しても、サンプルレートの低さなど一切感じさせない高品位な再生を体験させてくれましたし、DSDのアナログ的な質感も今まで体験しなかったほどよく再現されました。

本機は、ジッターを極限まで低減することにより、ピュアなデジタルデータを伝送し、PCMとDSDフォーマットが本来持つ音質特徴を、dCSのDACを通じて今まで以上に引き出したのではないかと感じています。dCSに搭載されるRing DACの性能が、さらに高まった印象も受けました。

次に、再生アプリの設定で前述の「クリティカルリスニングモード」をONにしました。これによりディスプレイは消灯し、不要な回路はスリープします。その設定後明らかに変化したことは、一枚も二枚もベールを剥いだような音の透明度です。それは、はっきりと分かるほどの劇的な変化で、S/Nや解像度がさらに高まります。

クリティカルリスニングモードのON/OFFはアプリで操作

クリティカルリスニングモードをONにすると、画面表示が出た後にディスプレイ等も全て消灯する

こうした音質を実現した開発者は、おそらく、相当デジタル伝送の高精度測定を繰り返し、緻密な回路設計を行ったことが窺えます。これだけの回路とソフトウェアを搭載するので高額にはなりますが、ハイエンドDACを愛用し、ハイレゾ再生を極めたい熟練愛好家は、おそらくこの音質に感激することでしょう。

■高品位なCDリッピング機能を持つ小型サーバーもテスト

今回は、嬉しいことにもう1機種試聴することができました。同社のスモール・サイズのミュージックサーバー「ACS100」です。本機は、USB-DAC対応製品で、USB2.0A端子を装備し、DSD512(DoPは最大DSD256)およびPCM768kHz/32bitに対応します。

CDリッピング機能付きサーバー「ACS10」(左)とAyreのUSB-DAC「QB-9 Twenty」(右)

ストレージに関しては、ユーザーの好みによって、SSDかHDD(2.5インチ・厚み7mmの仕様)を購入し、リアのスロット方式のトレーに取り付け、本体に組み込む方式となっています。

「ACS10」の背面端子。2基のストレージスロットを搭載。USB出力で手持ちのUSB-DACと接続できる

フロントには、スロット・イン方式のCDリッピングドライブ(TEAC製)を装備し、独自のアルゴリズムにより、エラー検出と補正が行われ、ビットパーフェクトでCDリッピングされるそうです。アルバムアート、メタデータも自動取得されます。

「ACS10」の内部構造。フロントにTEAC製のディスクドライブを搭載

本機は小型ですが、W20SEと同様に、2重絶縁LANポートを装備し、停電時などではUPS電源機能が動作します。内部も観察しましたが、実に高品位な構成です。本機は、大型の外部AC電源(スイッチング電源)を使用していますが、内部にもオーディオグレードの大容量コンデンサー(おそらく4本)を使用したローカル電源を配置しています。これにより高品位な電源を回路に供給していると推察されます。

本機の試聴では、Ayreの「QB-9 Twenty」を組み合わせてみました。再生して感じたことは、空間が広がり、特に奥行きが深まったことです。奏者の実在感も、より鮮明になりました。明らかに聴感上のS/N、ダイナミックレンジ、解像度が向上し、音楽の臨場感が増した印象を受けます。さらに驚いたことは、中低域の厚みも増し、ワイドレンジ化したことでした。こんなところにも影響するのかと感心させられた次第です。

今回も、素晴らしい体験をすることができました。ぜひ一度、専門店で両モデルの操作感や音質を体験して頂きたいと思うところです。特に「ACS100」は、多くのハイレゾ愛好家に聴いて頂きたい注目のミュージックサーバーです。

前へ 1 2

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE