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音楽家の有機的なつながりをソフトウェア上で可視化

Roonの最新アップデートを徹底検証。独自AI「Valence」で音楽との出会いを強力にサポート

公開日 2021/02/17 06:30 佐々木喜洋
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■カバー作品や影響を与えたアーティストなど、音楽ファンの“知りたい”を強力サポート

Valenceは見えない進化だが、サイドバーを通して画面を開けてみると様々な機能的な追加がなされていることがわかる。アーティストのOverview画面を開けるとたくさんのおすすめ機能が見えるが、ここでも改良されたValenceが貢献している。

試聴しているアルバムから、ローカルはもちろん、TIDALやQOBUZのストリーミングサービスの音源まで、おすすめの作品をレコメンドしてくれる。このレコメンド機能にもValenceが活用されている

Roon 1.8ではより音楽ファンがやりたいことをサポートしてくれる新機能が満載されている。カバー曲を見つけたい時もより便利になった。有名アーティスト(例えばLeonard Cohen)ならばトップ画面のサイドバーからArtistを選んでそのOverview画面から“Performing the Music of(カバーやコピー)”を選択することで、例えば「Performing the Music of Leonard Cohen」ならLeonard Cohenのカバーをしているミュージシャンが一覧できるようになった。

“Performing the Music of”でカバーしているアーティストを容易に見つけられる

またミュージシャンの全盛時代の代表的なアルバムを見つけることもより簡単になった。“In their Prime(全盛期)”機能ではミュージシャンの全盛時代を一覧としてみることができる。実際の活動期間が長くても、いわゆるファンならわかる全盛期だけ抜き出しているようだ。

デヴィッド・ボウイのIn their Prime画面

さらにその曲をソートする際に発売年やアルファベット順だけではなく“Popularity(人気)”という項目でソートできるようになった。これもValenceの賜物だ。

アルバムを人気順でソートできる

またArtist画面の“Influence,followers,Associated with(影響やフォロワー・関連アーティスト)”画面ではそのアーティストがどのミュージシャンに影響を与えたか、関連しているかについてもわかるようになっている。これはロックファンに向いているだろう。もちろんValenceのお薦め内容に異論もあるかもしれないが、それを考えるのも楽しみのひとつだろう。

キング・クリムゾンに/が影響を与えたアーティストを一覧で確認できる。ここではマイルス・デイヴィスやピンク・フロイドなどが挙げられている

■Focusはツリーのような階層構造に。クラシックファンにも使いやすく改良

アーティストのOverview画面での“Discography”ではそのアーティストの曲を一覧することができるが、絞り込みに便利な機能としてFocusが刷新された。Focus機能は以前からある探したい音楽を絞り込む機能だが、新しい1.8ではそれがツリーのような階層構造となって選択がわかりやすくなった。曲を年代、楽器、演奏形態で絞り込んで、それをタイトル、人気、作曲日時でならべかえることができる。さらにこれをTIDALやQOBUZなどストリーミング上に拡張して検索できる。

絞り込み”Focus”機能を一新。ツリー構造で興味のある音源を絞り込むことができる

具体的に言うと以前だとショパンと検索してショパンの説明やローカルとTIDALなどにあるアルバムを表示することはできるが、それをさらにアルゲリッチの演奏でノクターンをTIDALから選ぶのが難しかった。

Chopinから絞り込んでいったところ。マルタ・アルゲリッチのアバドとの演奏といった具体的な絞り込みも可能になっている

画面変更はクラシックリスナーにとって特に大きな改良となる。トップ画面のサイドバーから新設のComposer(作曲者)画面、Composition(楽曲)画面が直接アクセスできるようになった。CompositionはTrackに似ているけれども、クラシックにより特化したもので、実際にクラシック曲のみを表示させるフィルターが設けられている。

特にクラシックでは、ソリスト、指揮者、オーケストラなどからそれぞれ絞り込みが可能

ここでは作曲者、指揮者、演奏を関連付けて、無名のものよりも、より名演奏として知られるものを探し出せるようになった。クラシックにおいてはValenceが関与して作曲家や演奏などを関連付けて推測できるようになった。例えばクラシックでは“Composition”画面からそのトップ指揮者なども出てくるようになった。例えばマーラーの交響曲であればレナード・バーンスタインが出てくるはずだ。

アルヴォ・ペルトのページから、彼の作品を多く指揮する指揮者(ここではトヌ・カリユステやパーヴォ・ヤルヴィなど)のページに飛ぶことができる

またさらに凝っているのはクラシックの場合にはレコーディングの表示において「完全録音」の選択ができるということで、抜粋版と完全録音(全曲録音)版を分けることができる。

右のソート画面の一番下にある「Only complete recordings」にチェックを入れると、全曲録音だけを抽出することができる

■膨大な音楽の海に埋もれた、真に出会いたい音楽を見つけられる

最近はRoonのアップデート間隔が長いが、これは表面的な機能よりも内部に焦点を当てた結果だと、来日時に開発者たちが語ってくれた。Valenceについてもマシンラーニングによる機能の進化が表から見えにくいのでValenceというキャッチーな名称をつけてわかりやすくしたのかもしれない。

Roon 1.8は全体的にEnno氏の言うように大幅な刷新で、「2.0」と呼んでもおかしくないほどだ。総じて言うと音楽を楽しむソフトウェアとして、内部的な進化と画面上の検索機能の改良が大きいと思う。特にクラシック愛好家には向いた改良がなされている。もちろん他のジャンルでもカバー曲が見つけやすくなるなどの音楽好きにこれがほしかったと思わせるような改良だと言える。“Influence,followers,Associated with”などはロックファンならばニヤリとしてしまう楽しみがある。

こうしてRoon1.8では膨大な音楽の世界に埋もれている真に見つけたかった音楽を見つけるのに適したソフトウェアになった。

フォーラムを見ていると音質的な進化を求める声もまた大きいのだが、それはRoonらしくないということなのかもしれない。Roon 1.8はまさにRoonが音楽愛好家のためにあるソフトウェアだということを改めて教えてくれたリリースだと言える。

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